代替商品に取り組むJR各社
あなたが営業部門の責任者だとして、部下が「年商60億円の高利益率の商品をやめたい」と言い出したら、どんな決断を下すだろうか。「それで失う60億円をどうするつもりか?」と問いただすだろう。仮に商品に問題があるとしても「他に60億円の売り上げを確保する方策を考えよ」と代案を求めるはずだ。営業部門どころではなく、上場会社の経営者なら、60億円もの優良商品をやめるとなれば、株主に理由を説明する必要があろう。
故に青春18きっぷは安泰、と私は考える。営業成績が優秀な青春18きっぷにも、少なからず問題点はあるようだ。その話は次回に述べるとして、実は、青春18きっぷを代替するきっぷの取り組みは始まっている。
例えば、JR北海道とJR東日本は共同で「北海道&東日本パス」を販売している。ほぼ青春18きっぷと同時期に、7日間有効。JR北海道とJR東日本、青い森鉄道、IGRいわて銀河鉄道、北越急行、富士急行の普通列車に乗り放題。価格は1万円で、別途料金で急行列車も乗車可能。子供料金(5000円)の設定もある。
JR九州は3月31日まで「旅名人の九州満喫きっぷ」を販売中だ。価格1万500円で、3回分が付いている。JR九州と九州地域内の私鉄の普通列車に乗り放題だが、2012年度の発売については発表されていない。また、JR四国は通年販売で「四国フリーきっぷ」を販売している。1万5700円で3日間有効。JR四国の普通列車に乗り放題だ。
このほか、さらにエリアを限定して低価格としたり、特急にも乗れたりなど、魅力的なきっぷはたくさんある。青春18きっぷがなくなるとすれば、こうした新しいきっぷに利用客が移行して、青春18きっぷの利用者が減った時だろう。しかし、今のところ青春18きっぷの圧倒的なネームバリューを超える商品はない。ただし、青春18きっぷ自体の制度の見直しはあるかもしれない。期間か、価格か、回数か……。この夏、私たちは「青春」のはかなさを知ることになるかもしれない。
もしあなたが青春18きっぷを愛しつつ、廃止されるかもしれないと不安に思うなら、なすべきことはひとつ。この春も青春18きっぷを購入し、付属のアンケートに回答して、継続的な利用をアピールすることだ。私もそうする。
[杉山淳一,Business Media 誠]