青春18きっぷが存続する理由
青春18きっぷは1982年の春から「青春18のびのびきっぷ」として発売され、翌年から現在の「青春18きっぷ」という名になった。今年で発売から30周年の節目を迎えるロングセラーだ。希望的観測で言うと、2012年夏版・冬版の「何らかの変更」は、この30周年を記念した価格や特典かな、という希望的観測もある。
青春18きっぷは、当時、赤字に悩んでいた国鉄の増収策として誕生した。1982年といえば、国鉄再建法が成立し、臨時行政調査会が分割民営化へ向けて検討していた。マスコミは赤字国鉄の経営から現場まで、あらゆる分野を叩いた。当時、鉄道少年だった私は、こうした報道をとても残念に思っていた。そんなときに登場した青春18きっぷは、とても明るい話題だった。
なにしろ青春18きっぷは、増収のための設備投資がいらない。新線や新駅も必要なく、列車の増発や車両の新製も不要。普通列車限定で、学生の長期休み期間に有効とすれば、ガラ空きの列車にお客さんが来てくれる。現場の手間もかからないので、組合だって反対する理由はない。学生定期代の減収さえ補えたら御の字。それどころか、コストは多少の宣伝費ときっぷを印刷する紙代だけで、トレーディングカード並にボロもうけできるきっぷである。
現在の青春18きっぷの売り上げはいかほどだろうか。国内外の旅行情勢に詳しい『旅行総合研究所・タビリス』が独自に入手したデータによると、JR東日本の2010年度の販売枚数は23万8954枚とのこと。これに単価1万1500円をかけると 27億4797万1000円。約27億円もの売り上げになる。タビリスによれば、JR各社の旅客運賃収入のシェアのうち、JR東日本の売り上げは45%で、かなり乱暴だが、この比率で推計するとJR全体では約60億円になる。
JR各社にどう配分されているかは分からないが、トータル60億円の「印刷紙販売ビジネス」を、そう簡単にはやめられないはずだ。連結売上高2兆5000億円もあるJR東日本にとって、60億円は小さな数字かもしれない。しかし、JR四国の連結売上高485億円から見れば見逃せない数字である。いや、JR東日本にしたって、自社売上の27億円はないがしろにして良い数字ではない。総額2兆円以上の売り上げは、駅では最低区間130円からの切符を売り、キヨスクでは1個100円のアメを売り……という小さな商いをかき集めての商売である。