前向き、でも安全第一 「復興のため」「やはり不安」
東日本大震災で発生したがれきの広域処理で、愛知県の大村秀章知事は18日、「被災地の現状をみると、これ以上今の状態を放置できない。県として主体的にがれき処理を引き受ける決意を固めた」と県主導によるがれき受け入れを表明した。
県は、中部電力碧南火力発電所(愛知県碧南市)敷地の一部を借り、がれきの焼却炉と最終処分場の整備を検討している。中電は18日、「県が検討している案の1つとして、当社に相談があったと認識している」と県からの打診を認めた。
地元では、放射能汚染への不安を口にする人もいるが、基本的には受け入れに前向きな姿勢がみられる。
碧南火力の東に隣接する川口町の町内会長角谷元司さん(62)は「住民の本音は反対が多いと思うが、安全確認できれば、ある程度は賛成を得られると思う」と話しつつ、「納得できる説明と情報公開を国や県にお願いしたい」と注文を付けた。
発電所北側の権現町で町内会長を務める角谷道則さん(66)は「放射能問題が解決すれば心配はない。十分な説明があれば、復興を進めるためにも賛成の人は多いと思う」と、より前向きな姿勢だ。
市民団体「へきなん市民環境会議」の山中功博副会長(69)も「住民を説得する材料がそろえば反対の理由はない」との立場。「碧南以外にある既存の焼却施設でも受け入れるべきだ」とも訴える。
ただ、子どもを持つ親からは不安の声も漏れる。碧南市志貴崎町の自営業三島靖史さん(47)は、小学4年の次男が参加する野球チームのコーチで、発電所近くで練習をしている。「原発事故の経緯などを考えると現時点では賛成できない。被災地を助けたい気持ちは理解しているが、やはり不安だ」と話す。
禰宜田(ねぎた)政信・碧南市長は「がれき処理が不可欠なのは十分理解しているが、碧南市は漁業、農業が盛んなので安全面の確保が最低条件。市民理解のハードルは高い。なぜ碧南市なのかを含めて県などに説明を求めたい」との姿勢を示した。
(2012年3月19日)