【社説】進歩政党はイ・ジャスミン氏への中傷を傍観するのか

 11日の国会議員総選挙で与党セヌリ党の比例代表で当選したイ・ジャスミン氏に対する誹謗(ひぼう)中傷が、インターネット上で続いている。イ氏はフィリピン出身で、韓国人男性と結婚して韓国国籍を取得したが、ツイッター(簡易投稿サイト)などでは「不法滞在者が幅を利かせている」「売買婚家庭のために私たちの血税が食いつぶされる」といった低質な悪口に加え、「イ氏が移住者に大きな恩恵を約束した」とのデマまでもが飛び交っている。ネットユーザーたちが匿名の陰に隠れて吐き出す汚い言葉が、韓国社会の空気をよどませている。

 イ・ジャスミン氏は14年前、結婚と同時に韓国に移住し、2人の子どもを産んだ。夫と死別した後も、移住女性のための団体で事務総長を務めるなど、たくましく生きてきた模範的な市民だ。韓国では、イ氏のような結婚による移住者が20万人を超える。移住者の家庭で生まれた子どもも15万人に達する。そのうち数千人が、今この瞬間も軍に服務して休戦ライン(軍事境界線)を守っているのだ。こうした立派な市民たちの背後から呪いのナイフを突き立てる卑劣なネットユーザーのうち、兵役の義務を果たした人はどれだけいるだろうか。

 韓国人は、米国に移住したジェイ・キム(韓国名キム・チャンジュン)氏が米下院議員になり、ジム・ヨン・キム(韓国名キム・ヨン)氏が世界銀行総裁に選ばれたことに胸を張る。だが、そんな韓国人の中でも愚かな人は、韓国での成功を夢見てこの国に渡り、韓国の国民になった移住者たちを非難する。

 世界のどの国でも、進歩を掲げる人々は移住者の権利保護の先頭に立つ。それが進歩の倫理だからだ。だが、韓国政界の進歩系政治家は、そんな世界標準とは懸け離れている。イ・ジャスミン氏が汚い言葉でののしられているにもかかわらず、進歩系の政治家が体を張って守る姿はほとんど見えない。進歩系の民主統合党(民主党)と統合進歩党の一部政治家が、ツイッターにイ氏への非難を控えるよう求めるツイートを投稿しただけで、党としてはいまだに論評さえ出していない。一部の野党支持者たちが愚かな人々の愚かな振る舞いに加勢しているような状況に、野党寄りの評論家の陳重権(チン・ジュングォン)氏は「イ・ジャスミン氏を悪く言う愚かな人たちをやめさせなければ、大統領選挙も希望を持てない」と懸念を示している。

 民主党の綱領には「移住女性など少数者に対する支援を拡大する」とあり、統合進歩党の綱領は「移住・多文化社会に向けた転換と国籍及び文化に対する選択権を尊重し、全ての移住者の権利を保障する」と定めている。両党は、イ氏がセヌリ党所属のため例外だと感じているのだろうか。

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