今月11日に行われた韓国の国会議員総選挙で与党セヌリ党から比例区で当選を果たしたフィリピン出身の移住女性、イ・ジャスミン氏(35・ソウル市職員)に対し、インターネット上で「不法滞在がはびこり、花嫁売買が増える」といった攻撃が相次ぎ、韓国に結婚のため移住した女性たちが怒りと不安を覚えている。
移住女性たちは、イ氏の当選をきっかけとして、韓国社会で外国人に対する嫌悪感が高まれば、自分たちが攻撃の対象になりかねないと恐れている。本紙の取材に対し、移住女性の大半は実名を公表することをためらった。イ氏がネット上で攻撃されたように、自分たちも攻撃の対象になるのではないかと不安を募らせている。今回の「イ・ジャスミン事件」は、20万人に達する結婚移住女性を追い詰める社会問題へと発展した。
ソウルの結婚移民女性センターで相談員を務めるベトナム出身の女性Aさんは「セヌリ党もイ氏が移住女性を代表して活動してくれると信じ、比例区に出馬させたはずだが、(韓国の一部ネットユーザーは)なぜ議員活動を始める前から悪口を言うのか」と嘆いた。そして、Aさんは「韓国人も米国で重要なポストを担い、米国ではその人物の能力が認められていることを知っている。それなのに、なぜ韓国人は(イ氏に)ただ反対するばかりなのか。こんな記事が出れば、私も攻撃されそうだ」と続けた。
韓国に移住して今年で9年目を迎えるモンゴル出身のBさん(35)は「イ氏に対する中傷的なコメントを読んで、心が痛んだ。韓国人はいけない。(イ氏のことを)よく知らないのになぜ暴言を吐くのか」と話した上で「なぜイ氏が国会議員に出馬したのか」「イ氏がどれだけ苦労しているか」にまず関心を向けるべきだと主張した。
国際結婚家庭の交流団体「アルムダウ」で会長を務める台湾出身のファン・ウィスンさん(36)は「イ氏がどれだけ悲しんでいるかは、移住女性の皆が感じているはずだ」と残念がった。2002年に韓国人男性と結婚し、3人の子どもを持つファンさんは、アルムダウの会長として活発に活動し、テレビにもしばしば出演するようになった。すると、ファンさんに対して「旦那は弁護士らしい」「体を売りに来た」「血税を食う国際結婚家庭」といった攻撃が相次いだ。ファンさんは「韓国社会が多文化社会に向かうことに反対するサイトにそのような書き込みがあった。このところ『多文化』という言葉はよく使われるが、文化は成熟していないようだ」と話した。
慶尚南道のある中小都市に住むベトナム出身のCさんは「イ氏が移住女性を代表する国会議員となり、とてもうれしかったが、韓国人の反応にとても驚き、戸惑った。最近はどこへ行っても『多文化』という言葉を耳にするが、移民女性が国会議員になったことをそんなにも嫌い、中傷するとは思わなかった」と話した。
結婚12年目のモンゴル出身の女性、Jさんは「イ氏に対する攻撃が強まっているが、同じ移民女性であるわれわれが守ってあげられる方法もなく、残念だ。今回の事態を見て、われわれは社会的にもっと熱心に活動し、多くのポストを担うべきだと感じた」と語った。