1912年4月14日、初航海中に海難事故を起こして沈没したタイタニック(Titanic)号のイメージ画(製作・撮影日不明)。(c)AFP
【4月17日 AFP】大海原にゆっくりと沈む巨大な船の上で、女性と子供を優先して救命ボートに乗せ、海の中へと飲まれていく運命を受け入れる男たち――しかしこの「海上の騎士道」、実はまったくの「幻想」だったという研究結果をスウェーデンの学者2人が発表した。
同国ウプサラ大学(Uppsala University)の経済学者、ミーケル・エリンデル(Mikeal Elinder)氏とオスカル・エリクソン(Oscar Erixon)氏は、1852年以降に世界で起こった有名な海難事故18件について調査した。
結果、男女間の生存率では、男性が女性の約2倍の確率で生き残っていたことを突き止め、82ページの報告書『誰もがわれ先に――海難事故におけるジェンダー、規範、生存』にまとめた。
エリクソン氏は12日、AFPの取材に対し「映画『タイタニック(Titanic)』などで広まった、女性と子供を先に逃がして男性は後に残るという大衆幻想がある。しかし実際の海難事故では、女性にとってそう都合良くはない」と語った。
調査対象となったのは、海難時を起こした8か国、18隻の船に乗っていた計1万5142人。生存率を性別で見ると、男性の34.5%に対し、女性は17.8%だった。
中でもエリクソン氏がショックを受けた例として挙げたのは、1994年にバルト海で沈没し、982人中852人が死亡した客船エストニア(Estonia)号の事故で、男性の生存率が22%だったのに対し、女性ではわずか5.4%だった。
18件の事故全体で男女の生存率が同程度だったのは数件。うち女性が多く生き残った例となると、わずか2件だけだった。
例外とも言えるその2件のうちのひとつが、タイタニック号だ。タイタニック号では女性の70%が生き残ったのに対し、男性の生存率は20%だった。
もうひとつの例は、1852年に南アフリカのケープタウン(Cape Town)近くの港から出港し、直後に沈没した英軍輸送艦バーケンヘッド(Birkenhead)号で、この事故では女性は全員助かったが、男性の生存率は33.5%にとどまった。エリクソン氏によると「海の騎士道」幻想はこのバーケンヘッド号に由来しているという。
タイタニック号の場合もバーケンヘッド号の場合も、まず船長が女性と子供を先に救命ボートに乗せるように命令していた。さらに注目すべきはどちらの事故でも船員たちが武装し、男性たちを脅して救命ボートに近寄らせなかったという点だ。
またエリクソン氏は、英国船の事故ほど騎士道が発揮されるという俗説についても、「(実際は)英国の船のほうが他国の船よりも女性の生存率は低い」と述べ、退けた。
大惨事の際に英雄的な行動をとる人々の例はたくさんあるが、大半の場合は生存本能が働き、「誰もがわれ先に」と逃げることが今回の研究で示されたとエリクソン氏は語った。(c)AFP