【原発崩壊】知られざる原発事故の実態…東北新幹線内で線量跳ね上がる

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2012.03.13


福島原発事故の真実とは=2012年2月26日【拡大】

 福島に通い続けている。今年に入ってからは、すでに12回、郡山、福島、二本松、いわき、相馬、会津と県内各地を飛び回っている。

 3・11以降、福島は、世界でもっとも注目される地域の1つになった。東京電力福島第1原発事故への対応の失敗と放射能に関する住民への不誠実な情報提供は、日本政府のみならず、日本社会自体への不信感を生んでいる。

 とりわけ放射能問題は、福島と日本だけに留まらない。大気や海洋を通じて、世界中に拡散されることから全人類共通の課題とみなされている。

 実際にこの2月、私は、欧州・ルクセンブルクで開かれた欧州委員会とフランス原子力規制局共催の「オーフス会議」に日本代表として呼ばれ、「フクシマ」の現実について語ってきたばかりだ。

 四半世紀前、チェルノブイリの悲劇を経験した欧州の人々は、総じて放射能による環境汚染への危険意識が高い。

 その彼らの口を借りれば、「実は、日本の国民こそがもっともフクシマの情報を持っていないのではないか」(フランスMustadis代表、ジル・エリアール・デュブルイユ氏)ということになる。

 実際、そうした「情報隠蔽」は、福島に通い続けている私自身も実感している。

 東北新幹線に乗って、放射能測定器(ゲルマニウム検出器)のスイッチを入れると、宇都宮駅まで低かった数値が那須塩原駅に近づく頃から急激にはね上がる。

 福島県内では、走行中の新幹線車内ですら、毎時0・5マイクロシーベルトを超え、郡山駅前に降り立てば、空間線量は軽く毎時1マイクロシーベルトを超えてしまう。

 だが、こうした実態を知る者はそう多くはない。あるいは気づいていて気づかないふりをしている者も少なくない。

 政府の除染支援対象地区は毎時0・23マイクロシーベルトと定められている。県内の多くの場所はその数値を超えている。

 私が、福島に通い続ける最大の理由はこれだ。世界でも最もフクシマの真実を知らない福島の人々に、内外との情報格差を埋めてもらい、行動に移してもらいたい。

 なにより、真実を知る以外に福島の復興の道もないのである。

 ■上杉隆(うえすぎ・たかし) メディアカンパニー「NO BORDER」代表、元ジャーナリスト。1968年、福岡県生まれ。テレビ局、衆院議員秘書、米紙東京支局記者などを経て、フリージャーナリストに。政治やメディア、震災・原発事故、ゴルフなどをテーマに活躍。著書に「官邸崩壊」(新潮社)、共著に「報道災害【原発編】事実を伝えないメディアの大罪」(幻冬舎新書)など。社団法人自由報道協会代表。

 

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