目の周りの黒い部分の幅が均一でない「関東型」のヤマネ=2009年10月16日、飯田市上郷野底山(三石邦広さん撮影) |
目の周りが黒く幅が広い「関西型」のヤマネ=2010年8月、飯田市上村(三石邦広さん撮影) |
県内にも生息している国天然記念物のヤマネのうち、飯田市上村、遠山谷にいるのは「関西型」に属するヤマネが多いことが、同市の元教諭、三石邦広さん(60)の調査、研究で分かった。天竜川を挟んで西側の同市上郷野底(のぞこ)山にいるのは「関東型」のヤマネが多いことも分かり、三石さんはこの一帯が「関西型」と「関東型」の境界域となっていると推測。さらに調査範囲を広げ、地球温暖化による生息域の変化などを考察したいとしている。
ヤマネ研究で知られる佐久市の中島福男さん(78)が、2001年12月に上村で見つかった個体について「関西型と思われる」と指摘したのが、三石さんの調査のきっかけ。三石さんは、国などの許可を得た上で09年に飯田市上村と同市上郷野底山にそれぞれ100個、50個の捕獲用巣箱を設置。2年がかりで調査を進めた。
毎月1回の調査で、巣箱で見つかったのは計14匹。特に、型を区別する目の周りの部分を丹念に調べた。その結果、性別や成獣、幼獣の区別なく、上村の8匹のうち7匹は、目の周りの黒い部分が太くて鮮明で幅も広く、三重県や徳島県、九州地方などで確認されている「関西型」の個体と同じ特徴を持っていた。上郷野底山で捕獲した6匹と、上村の残る1匹は、目の周りの縁取りがぎざぎざになっており、不鮮明で幅も狭い「関東型」だった。
さらに、他の研究者らと共同で体毛による遺伝子解析をした結果、上村の7匹は、静岡県北部に生息する関西系の「赤石グループ」に属し、残る1匹と上郷野底山の6匹は「関東グループ」と分かり、目の周りの特徴による分類と一致した。
三石さんは上村の北側の地域に新たな巣箱を35個設置しており、境界域がどのように走っているのかを詳細に調べたいとしている。