トップページ社会ニュース一覧南相馬 警戒区域解除で住民戻る
ニュース詳細

南相馬 警戒区域解除で住民戻る
4月16日 18時30分

南相馬 警戒区域解除で住民戻る
K10044738711_1204161218_1204161220

原発事故の警戒区域が16日に解除された福島県南相馬市では、住民が相次いで自宅に戻り、家の片づけなどをしています。

南相馬市の警戒区域は16日午前0時に解除され、新たに「帰還困難区域」に指定された地区以外は、宿泊はできないものの立ち入りは自由になり、朝早くから自宅などを訪れる住民が相次いでいます。
このうち、建築資材の販売店を経営していた竹内喜和さん(46)は、母親と妻と3人で、「避難指示解除準備区域」にある自宅に戻りました。
この区域では放射線量が低いため、防護服を着る必要はありませんが、家の冷蔵庫は1年以上そのままだったため、竹内さんはマスクなどをして、中にあった食材を片づけました。
警戒区域だった地区のゴミは、国が処理することになっていて、持ち出さずに敷地内で保管するよう求められています。
竹内さんは、「どこに持っていって処分するか、早く決めてほしい」と話していました。
竹内さんは現在、市内の別の場所に店を借りて、仕事を再開していますが、今後、元の場所に戻りたいと考えていて、「若い人で地元に戻る人は少ないかもしれませんが、隣近所と協力して頑張っていきたいです」と話していました。
警戒区域が解除された地域は、がれきの撤去や除染、それに水道などインフラの復旧がほとんど手つかずで、住民にとっては、津波と原発事故の二重の被害を抱えての生活再建となります。
警戒区域の解除について、南相馬市の桜井勝延市長は、「待ち望んでいたので、指定の解除は勇気づけになる。南相馬市の復興のためには前進したと思う」としたうえで、「インフラの復旧や原発事故の損害賠償など、住民の不安は依然として払拭(ふっしょく)されていない。住めないという不満があるので、住民からの不安をしっかりと聞いて対応していきたい。原発を推進してきた国や東京電力に対して、責任を持って取り組むよう申し入れていきたい」と話しました。

南相馬市は、津波の被害を受けた沿岸部の自治体としては初めて警戒区域が解除され、山沿いにある「帰還困難区域」を除く2つの区域では、住民の立ち入りが自由になりましたが、がれきの撤去や除染、それにインフラの復旧など住民が元の生活を取り戻すには多くの課題が残されています。

住宅全半壊浸水続く地域も

南相馬市の警戒区域は、沿岸部を中心に震災による津波でおよそ500棟の住宅などが全半壊する大きな被害を受けました。
また、堤防が決壊して海水が入り込むなどして、依然として浸水が続いている地域が、およそ180ヘクタールにも及んでいます。

がれき処理めど立たず

警戒区域は立ち入りが制限されていたため、津波によるがれきや壊れた住宅などの撤去はほとんど手つかずとなっています。
環境省によりますと、南相馬市の警戒区域内のがれきは、警戒区域に指定された自治体の中では最も多い18万3000トンに上るとみられています。
がれきを一時的に保管する仮置き場は区域内の4つの地区で設置を検討していますが、今のところ2つの地区で住民の同意を得られておらず、可燃物を処理する仮設の焼却炉の設置場所も決まっていないということです。
このため、具体的な処理計画の策定も遅れていて、警戒区域が解除されても、がれきや壊れた住宅の撤去がいつから始まるのか見通しは立っていません。

除染作業にも課題

除染は市役所の出先機関や消防署など一部の公共施設で早ければ今月下旬から作業が始まる予定で、住宅や農地などの本格的な除染については、今週中にも環境省の実施計画が示される見通しです。
作業を進めるにあたっては、はじめに各世帯ごとの放射線量や建物の被害状況を調べたうえで、どのように除染を進めるか所有者と話し合い、同意を得ることが求められています。
しかし、対象となるおよそ4000世帯のうちおよそ3分の1の世帯が県外に避難しているため、住民の同意を得る作業が難航することも予想されます。
また、除染作業で出る大量の土などを一時的に保管する仮置き場の設置場所もまだ決まっていません。

上下水道などインフラの復旧は

地震の激しい揺れで、インフラにも相当の被害が出ているとみられていますが、被害状況の把握は進んでいません。
市では今後、上下水道の被害の調査を本格的に進めますが、警戒区域内は、地盤が沈下したり地割れしたりした場所が多いことから、地下の水道管の被害も大きいことが予想され、市は復旧のめどを今年度中としています。
また、津波の被害を受けた下水処理施設の復旧にも数か月かかるということで、市では自宅に戻る住民に対して、掃除の際にはできるだけ水の使用を控えることや、住宅のトイレではなく、市役所の出先機関や学校などに設置した仮設トイレを利用することなどを呼びかけています。

[関連ニュース]
このページの先頭へ