福島 警戒区域の富岡町で桜満開4月19日 21時24分
東京電力福島第一原発の事故の影響で、町の全域が警戒区域に指定されている福島県富岡町の夜の森地区で、桜並木がほぼ満開となりました。「桜のトンネル」として親しまれ、例年10万人以上の観光客でにぎわっていましたが、ことしは訪れる人の姿はなく、花々が静かに風に揺れています。
福島県富岡町の夜の森地区では、道の両側に長さ2.5キロに渡っておよそ500本のソメイヨシノが立ち並んでいます。
この時期は、道路を上から覆うように一斉に桜の花がついて「桜のトンネル」として親しまれ、例年10万人以上の観光客でにぎわっていました。
しかし、富岡町は、原発事故の影響で全域が警戒区域に指定され、立ち入りが制限されていて、ことしは桜を見に訪れる人の姿はありません。桜の花々はひっそり咲いているようで、時折、吹く風が枝を揺らしていました。
桜並木沿いの家々は屋根が壊れたままで放置され、近くの公園には除染作業で出た土がシートをかぶせられて積み上げられていました。19日の取材は、富岡町の許可を得て行ないました。町では、桜を多くの人々に見てほしいと町のホームページでも写真や動画で公開しています。
避難住民の目にうつる桜
富岡町から西におよそ60キロ離れた郡山市で避難生活を続けている小林和枝さんは、自宅が夜の森地区の桜並木のそばにあります。
小林さんは「夜の森の桜」を毎年楽しみにしていて、「桜まつり」にはボランティアとして参加していました。
小林さんは現在、避難している住民が気軽に集まれる場所として町が開設した「ふくしま絆カフェ富岡」で働いています。
集まってくる住民たちの間でも桜の話題で持ちきりです。19日、施設を訪れた61歳の女性は、今週月曜日、町の許可を受けて一時帰宅した際、わずかな時間、桜並木を見たということです。女性は住民たちに桜の写真を見せながら「防護服を来て写真を映してきましたが悲しい気持ちでした。だれにも見てもらえない桜がかわいそうに思いました」と話していました。
小林さんたちは、町のホームページで公開されている職員が撮影してきた桜の写真や動画を眺めています。咲き乱れる桜にふるさとへの思いは募るばかりです。小林さんは「桜は富岡のシンボルです。郡山で桜を見ると、夜の森の桜を思い出してつらい気持ちにもなります。夜の森の桜が満開と聞くと、見に行きたいです」と話しています。
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