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■特命調査班 〜マル調〜「『震災がれき』広域処理は必要か?」 2012/04/18 放送

 前回の「マル調」で放送しました「震災がれきの受け入れ問題、放送直後から続々と反響が寄せられ、これまでにメールやFAXなど、合わせて90件いただきました。

 ありがとうございます。

 そのうちのいくつかをご紹介します。

 【賛成派の意見】

 こちらは京都市の30代の男性。

 「がれきをどけないと、東北の復興はあり得ません。除染もしかりです、色々な段階で数値を出し、危険であれば止められるのです。嫌というなら現地で生活されている方はどうなるのでしょうか」

 【反対派の意見】

 そしてこちらは、福島から関西に避難された女性からです。

 「幼い子供を連れて関西に自主避難してきました。危険性がはっきりしない以上、全国に放射能をばらまくべきではないと思います」

 そして、もうおひと方、賛成とも反対ともいえないと悩んでらっしゃる神戸の40代の女性は・・

 「安全が絶対に大丈夫なら被災地の方のことを思い、ぜひとも受け入れるべきだと思います。しかし安全なのかそうでないのか、はっきりわかりません。今の時点で受入れにイエス、ノーはどちらがいいのか断言できません」

 非常に迷いがあるというか、難しいテーマなんですけど、専門家の間でもこのテーマ、意見が完全に割れていて、簡単に1つの結論が導き出せるものではありません。

 しかし、被災地の復興や、関西に住む私たちの生活、そして子供たちの未来にも大きく関係してきます。

 「マル調」では、この大事なテーマを様々な角度から調べ、賛否を簡単に出すのではなく、皆さんとひとつひとつ調べながら考えていきたいと思っております。

 さて、第2回目のテーマは、「がれきの広域処理は必要か?」です。

 実はみなさんから賛成、そして反対ではないご意見でメールをたくさん頂いてます。

 例えば・・・

 「広域処理にかける予算は莫大と言われる。被災地の自治体もがれきを現地で処理すれば、雇用の面でも助かると言われている。無駄にお金を使わず、現地に処理場をつくる支援が必要では…」ですとか、「被災地では多くの人が先の見えない生活をしています。町づくりや経済活性化のためにがれき処理は被災地で行い、補助金が回るようにすることが最も効率的」

 といったように・・

 安全性の問題ではなく、被災地で処理する方がメリットが大きいのではといったご意見を多数いただきました。

 そこで今回「マル調」は、岩手、宮城の「震災がれき」を近畿などで受け入れ処理する、この「広域処理」が必要なのかどうかについて、被災地の実態を取材しました。




 宮城県仙台市。

 震災発生から1年が経過したが、その爪痕は生々しく残っている。

 空港から車を走らせること、およそ1時間。

 海岸近くの道路で渋滞が発生していた。

 <マル調>
 「すごい列やな」

 がれきを積んだトラックの行き先は、蒲生搬入場。

 被災後、市内に3か所設けられた集積場の一つだ。

 かつては松林だった広大な敷地には、がれきがうずたかく積まれていた。

 この場所で、材質ごとに分別処理されている。

 さらに、去年10月から仮設焼却炉が稼働し、木くずなどの可燃物は焼却処分されるようになった。

 <仙台市環境局 小和田圭作主査>
 「こちらの仮設焼却炉は、仙台市が発注して建設したもの。1日90トン処理できる」

 実は、仙台市は広域処理には頼っていない。

 90億円以上の予算をかけて集積場や焼却炉を整備し、仙台市自ら、がれきの処理を進めている。

 地元の運搬業者や処理業者を使うことで、雇用の創出にもつながっているという。

 <元製鉄会社勤務・60歳男性)
 「定年前に会社無くなったんでこれからどうするか路頭に迷いました。うれしいというより、やっと仕事にありつけるという気持ちがあった」
 <元リサイクルショップ勤務・27歳女性>
 「震災をきっかけにお店が閉店し、そのまま退職となった。仕事が決まって安心した」

 仙台市内で出たがれきは、およそ135万トン。

 そのうち、21万トンを先月末までに処理し、将来は県内の他の自治体からも受け入れる予定だ。

 がれきを独自に処理する、この「仙台方式」。
 
 実は、あの震災の経験が生かされていた。


 17年前に発生した阪神淡路大震災。

 兵庫県内では、1,430万トンのがれきが発生し、解体・処理費用は2,655億円に上った。

 当時、全体の1割にあたる144万トンを周辺の自治体に処理を委託した。

 だが、神戸市だけは、西区にある広大な最終処分場に仮設焼却炉を作り、市内で出た800万トンのがれきをほぼ独自で処理したという。

 <神戸市環境局 笠原敏夫さん>
 「(震災当時)あの辺に焼却炉とか重い構造物を全部置いた」

 当時、最前線でがれき処理にあっていた笠原敏夫さん。

 東日本大震災直後に仙台市を訪れ、がれきを処理するノウハウを教えたという。
   、
 仙台と神戸。

 広域処理に頼らないこの2つの自治体には、ある共通点が見つかった。

 <神戸市環境局 笠原敏夫さん>
 「私ども有利なのは、大きな処分場を自前で持っている。仙台市も神戸をコンパクトにした形」

 集積場に集められたがれきは、まず木くずなどの可燃物とコンクリートなどの不燃物に分別される。

 その後、木くずなどは焼却炉で燃やされる。

 その際に出る大量の焼却灰は、最終処分場に埋め立てなければならない。

 仙台市と神戸市は、焼却灰を埋め立てできる広大な最終処分場を持っていたため、独自処理に踏み切れたのだ。

 <神戸市環境局 笠原敏夫さん>
 「最終処分をするところがなければ、仕事が完結しない。東北については数量把握してないが、最終処分するべきポケット(場所)が少ない」

 神戸市のノウハウを生かし、がれき処理を進める仙台市。

 一方で独自に、がれき処理を進められないという自治体もある。

 <石巻市災害廃棄物対策課 鎌田清一さん>
 「600万トン、100年分のゴミなんで」


 水産加工業が盛んな、宮城県石巻市。

 宮城県全体のおよそ3分の1に当たる、616万トンという膨大な量のがれきを抱えている。

 海岸から5キロ以上離れ、かつては空き地だった場所に設けられた仮置き場。

 長期間放置されたがれきが発酵し、至る所で煙が立ち込めている。

 <仮設住宅の住民>
 「こんな感じです」

 その仮置き場の目と鼻の先にある、南境仮設住宅。

 風が強い日には粉じんが飛び散るため、晴れた日でも外で洗濯物を干すことはできないという。

 <仮設住宅の住民>
 「洗濯物なんか外に干せない。臭いが全部つくので」

 この仮置き場の周りは住宅街。

 すぐそばには高校もある。

 日常的にゴミが舞い散り、特に夏場は悪臭も漂うということで、地元の人々は一刻も早い、がれき処理を望んでいる。

 <石巻市災害廃棄物対策課 鎌田清一さん>
 「これから夏場は虫とか灰とか臭いとか、いろんな問題出てくる。エアコンが学校にないので窓を開けたいけど、ゴミや粉じんが入ってくるので開けられない」

 石巻市では、海岸沿いにあった焼却施設が津波の被害を受けた。

 現在、5つの仮設焼却炉を建設中だが、すべてが稼働し始めるのは今年8月以降ということで、がれきの処理は遅々として進んでいない。

 <石巻市災害廃棄物対策課 鎌田清一さん>
 「発酵して火災とか粉じんとかハエや臭いの生活が、これから5年10年続くと、そこに張り付く気がしない」

 市内23か所のがれきの仮置き場はパンク寸前の状態で、宮城県内の他の自治体の協力を得ても、処理には10年近くかかるという。

 市は広域処理を強く求めているが、「放射能への不安」が問題をより一層難しくしている。

 <住民>
 「がれきも他の県で受け入れてくれない。現に私たちはがれきの前に住んでいるんですよ。復興だ支援だといっても、結局は何にも変わっていない部分もあるのかなと」
 <住民>
 「お願いしたい気持ちはあります。でも逆の立場だったら、悩む気持ちもわからないではない」

 被災自治体によって、その処理能力に差があることが浮かび上がったがれき問題。

 国は、全国の自治体の協力が得られなければ、がれきの処理は当初の目標の3年以内から2年以上遅れるという。

 安全性と復興の時間を巡って意見が分かれる中、被災地はがれきの行方を見守っている。




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