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浪江町 復興ビジョン正式決定
4月19日 18時2分

浪江町 復興ビジョン正式決定
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原発事故の影響で町の全域が避難区域に指定されている福島県浪江町は、19日の臨時議会で、全国各地に避難している住民が集まって暮らす拠点、いわゆる「仮の町」を県内の別の自治体に整備することを盛り込んだ「復興ビジョン」を正式に決めました。

原発事故の影響で町の全域が避難区域に指定されている浪江町は、現在、政府が進めている避難区域の見直しで長期間居住を制限する「帰還困難区域」など3つの区域に分かれる見通しです。
こうしたなか、住民や有識者でつくる町の検討委員会は、復興に向けた道筋を示す「浪江町復興ビジョン」をまとめ、19日、避難先の福島県二本松市で開かれた臨時議会で全会一致で可決され、正式に決定しました。
復興ビジョンでは、全国各地に分散して避難している2万人余りの住民が一堂に集まって暮らす拠点、いわゆる「仮の町」を「リトル浪江」として、県内の別の自治体に整備するとしています。
候補地には同じ沿岸部にある南相馬市やいわき市などが挙げられ、2年後の平成26年3月をめどに住民が長期間生活できる「復興公営住宅」を建設し、商業施設や医療機関も整備するとしています。
また、町内の放射線量が比較的低い地域の除染やインフラの復旧を先行して実施し、住民が町に戻るための環境づくりも進めるとしています。
浪江町の馬場有町長は「このビジョンに基づいて実効性があり、町民に喜ばれる具体的な計画をできるだけ早く作りたい。避難先でも行政サービスや医療・福祉・教育を変わらずに受けられるよう避難先の自治体や国と連携して取り組んでいきたい」と話していました。
町では復興ビジョンを基に、ことし8月をめどに、より具体的な復興計画を作ることにしています。

“仮の町”建設への動き

いわゆる「仮の町」は、高い放射線量のためにすぐに地元に戻ることができない住民のために、別の自治体に役場や住宅などの施設を集約させ、一定期間、その場所で自治体を運営していくというものです。福島県内では、浪江町をはじめ、双葉町と大熊町、それに富岡町の4つの町が検討しています。
このうち双葉町は全域が警戒区域に指定され、およそ6700人のすべての住民が避難を余儀なくされていて、町内の広い範囲が長期間居住を制限される「帰還困難区域」に指定される見込みです。
双葉町は、埼玉県加須市に置いている役場機能や住宅を県内外の別の自治体に集約させる構想を進めています。町は、先月の議会で「仮の町」の用地取得に向けた調査費用を含め、復興計画の策定のための予算案として1億円を計上し、今後3年以内をめどに実現したいとしています。
また、町の全域が警戒区域に指定され、およそ1万1000人の住民すべてが、避難を余儀なくされている大熊町は、町の大半が「帰還困難区域」に指定される可能性があります。町の計画案では「仮の町」に住宅の整備を進め、役場や町にあった3つの小中学校などの移転を進め、平成32年ごろまでには完了させたいとしています。
そして、富岡町は町全域が警戒区域に指定され、14000人余りのすべての住民が町の外に避難しています。富岡町は、帰還困難区域を含めて3つの区域に見直される見通しです。このため町は、いわゆる「仮の町」を放射線量が低い町内をはじめ、周辺の自治体に分散して設置するとした計画案を示し、国や県に、用地の確保や医療機関や教育環境などの整備を求めるとしています。
4つの町のうち、双葉町を除く3つの町では、町から比較的近く、気候の条件が似ているなどとして、住民の希望も多い同じ沿岸部のいわき市を候補地の1つとして挙げています。
一方、いわき市の渡辺市長は、9日、平野復興大臣との会談で、「要請があれば協力したいが、受け入れる側としては、期間などが分からなければ対応が難しい」と述べ、仮の町を受け入れた場合の具体的な工程表を示すよう求めています。
国では、受け入れ側の自治体が避難元の自治体に代わって避難住民への行政サービスを行うため、財政的支援を行うとしていますが、受け入れが長期化した場合、自治体側にとっては業務が増加するうえ、財政的な負担も出てくるのではないかと心配する声も出ています。国は、今後、「仮の町」の在り方について県や関係自治体と協議を進めていくことにしていますが、いつごろから具体的な協議に入るかは決まっていません。
いわゆる「仮の町」の構想について、地方自治に詳しい福島大学の今井照教授は「ふるさとを離れて心理的に追い詰められながら避難を続ける人たちに対して、『ふるさとに戻るのか戻らないのか』という二者択一を迫るのは大きな負担になる。『仮の町』のような中間的な拠点を設けて、住民どうしのつながりを維持することは意義があると思う。様々な行政サービスを受けるために、元いた自治体の住民でもあるし、避難先の住民でもあるということを認めることが仮の町の制度としてはいちばん重要で、財政的な面などで新たな法律を準備しなければならない」と話しています。

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