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パチンコ業界が「ガチャ」を敵視!!? 高まる「ソーシャルゲーム」規制論

日本の数少ない成長産業として躍進を続けるソーシャルゲーム業界。ゲーム専門誌を刊行するエンターブレインによると、2009年には255億円だった市場は、2010年には1120億円と約4.4倍に拡大している。

だが、最近このソーシャルゲームに当局からの規制が入るとの噂がまことしやかに流れている。

ソーシャルゲームの収入源は、ユーザーによる課金が大半を占めている。ゲームを有利に進めるための強力なアイテムを現実のお金で購入する仕組みだ。実際はデータでしかないのだから原価はほとんど掛からず、ソーシャル大手のグリーとDeNA(モバゲー運営)は、約50%という驚異的な営業利益率を叩きだしている。

この「アイテム課金」に拍車を掛けたのが「ガチャ」と呼ばれるアイテムくじの導入。約3年前から始まった「ガチャ」は、100~500円ほどで1回くじを引くことができ、運が良ければ強力なアイテムが当たるというもの。当然、レアなアイテムほど当たりづらくなっており、獲得するためには金を注ぎ込むしかない。射幸心を煽る言葉やシステムも仕組まれており、思わず大金を使ってしまうユーザーは少なからずいる。

最近、「ガチャ」を収益システムの根幹としたソーシャルゲーム業界に、当局の摘発や行政指導が入るのではとの情報が流れている。3月26日、経済誌「週刊ダイヤモンド」(ダイヤモンド社)の電子版が「当局がグリーに重大な関心 正念場迎えるソーシャルゲーム」と題した記事で「ある政府関係者によれば最大手グリーの摘発に向けた検討が始まった模様で、 『4~5月が山場だ』というのだ」と記した。この記事以前にも、グリーやモバゲーに規制が掛かるという情報は流れていた。

未成年も利用するソーシャルゲームで、傍目から見ればアコギに映るやり方で収益を上げていれば、確かに問題があるようにも思える。だが、実際のところ、何が問題なのか見えづらいのも事実だ。

規制の根拠として挙げられる意見として、「ガチャ」が賭博に当たるのではないかという見方がある。ユーザー同士が「ガチャ」で得たレアアイテムを現金で売買するRMT(リアルマネートレード)が横行しており、実質的にアイテムは「財物」となっている。財物をゲームでやり取りすれば、それは立派な賭博だ。しかし、アイテムはあくまでゲーム内でのみ利用できるものであり、世間一般で価値が認められている財物ではない。そのため賭博罪で取り締まるのは難しく、原価はないに等しいため、高額景品を規制する景品表示法で縛ることも考えにくい。

また、「ガチャ」が直接の規制理由になるわけではなく、ゲームセンターと同じようにソーシャルゲームが風営法の管轄下に置かれるのではないかとの見方もある。同じく風営法の管轄下の性風俗店が、かつては規制対象外だった無店舗型にまで適用範囲を広げられた事実があり、これがゲームにおいても実施されるのではないかという予測だ。グレーゾーンではあるものの、当局が乗り出せば反論しようがない部分はある。

海外に目を向けると、日本ほど「ガチャ」が浸透している国は無く、ネットゲーム大国といわれる韓国ですら課金による「ガチャ」を規制している。やはり青少年への影響が甚大であり、ソーシャル各社は年齢によって課金上限を設けるなどの取り組みを進めているが、年齢を偽って登録するユーザーも多いため効果は薄いと言わざるを得ない。

いずれにせよ、「ガチャ」で荒稼ぎするソーシャルゲーム業界に対する風当たりは確実に強まっていくだろう。人気ブロガーの山本一郎氏は、「パチンコ・パチスロ系の業界の重鎮がソーシャルゲーム業界の発展に対して強い懸念を示し、問題視している」と指摘しており、娯楽産業の中でも急成長するソーシャルゲームを警戒する関係者は多いようだ。

規制導入は推測の域を出ないが、3月にグリーやDeNAなど大手が中心となって連絡協議会を発足させ、さらに今月グリーが外部有識者を招いた自主規制組織を設置するなど、規制をかわそうとする動きがあるのも事実。ソーシャルゲーム各社がこのまま儲けの牙城を守り切るか、規制によって業界の縮小を招くか、まさに正念場といえるだろう。(佐藤勇馬)

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佐藤 勇馬

フリーライター。個人ニュースサイト運営中の2004年ごろに商業誌にライターとしてスカウトされて以来、WEBや雑誌などでネット、携帯電話、芸能、事件、サブカル、マンガ、宗教問題などに関する記事を執筆している。媒体によっては、PN「ローリングクレイドル」で執筆することも。今年1月に著書『ケータイ廃人』(データハウス)を上梓。 Twitterアカウントは @rollingcradle

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