現行法に触れなければ何をやってもいい?
社会と共存するために自主規制は必要
筆者らが憂慮しているのは、ただでさえ存在が認められにくいゲーム産業が、未成年や大人の過消費、ソーシャルゲーム依存症などで社会の存続を損ねているのであれば、ゲーム脳騒動どころの騒ぎではなくなるだろう、ということである。
ソーシャルゲーム業界が自主規制をしない根拠のひとつに、「現行法に触れないから」という話がある。消費者問題に詳しい、一般社団法人ECネットワーク理事の沢田登志子氏は「グレーの部分は残るし、完全に現行法に触れないとは言い切れない。産業を健全に発達させるためにも、早く自主規制をする段階に来ている」と警告する。
「ネトゲ廃人」という言葉で世間を騒がせた経験もあるオンラインゲーム業界も、ソーシャルゲームの現在の状況を憂慮している。日本オンラインゲーム協会川口洋司事務局長は、日本では規制されていないガチャについて「但し書きつきで韓国は禁止。他も賭博だと思われてしまうので、外国ではやりにくい。日本で続けたいなら何らかの自主規制が必要でしょう」と解説する。
そこで、日本オンラインゲーム協会ではガイドラインの改定を行うという。
「新たなガイドラインは、JOGA会員各社が、未成年者に対する分かりやすい説明や、ゲーム利用金額を設定して、利用料金の使いすぎ抑制に努めます。さらに、RMT(リアルマネートレード)を目的とした不正アクセス行為対策をさらに講じ、その原因となるRMT行為の禁止を明記しています。
オンラインゲームもソーシャルゲームも同じように考えている人が多いでしょうが、オンラインゲームは10年も続いているものもあります。事業は細く長く続けなければいけないから、焼畑農業のような無茶はできない。逆に暗黙の了解で、無茶をしないように企業が自ら規制している。そういう我々の経験がソーシャルゲームの健全な発展に役立つといいと願っています」
堀正士(ほり・まさし)/1958年生まれ。早稲田大学教育*総合科学学術院教授。筑波大学医学専門学群卒業。博士(医学)。著書は「スポーツ精神医学」(診断と治療社)他。
●引用文献
田中智志・今井康雄(編)「キーワード 現代の教育学」(東京大学出版会)、「2章 知識-何のために求めるのか」(田中智志)より。