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【第30回】 2012年4月19日
著者・コラム紹介バックナンバー
石島照代 [ジャーナリスト],小山友介 [芝浦工業大学システム理工学部准教授]

“依存症”ならば自己責任論は成立しない
規制なきまま社会と共存していけるのか
――ソーシャルゲームの何が問題か【後編】

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 ゲーム産業をとりまく現状から考えたとき、ソーシャルゲームがもつ次の3つの特徴は、日本の家庭用ゲーム産業の弱点をすべてカバーしている。

1)2Dのイラストに非常に高い付加価値がつく。
2)プレイヤーを熱中させる、きめ細やかな作り込みがとても重要である。
3)据置機ほどの高度な技術/システム設計能力を必要としない。

 実際に、ソーシャルゲームへの進出が成功した会社では、2012年3月の決算が大きく改善している。バンダイナムコホールディングスのように、過去最高益となりそうな企業まで現れている。これまでの議論から明確なように、ソーシャルゲームの最大の特徴は非常に高い利益率にある。 グリーの利益率は50%と、既存の常識では考えられない水準だ。

 この高い利益率と社会問題になるほどの話題性、二匹目のドジョウを狙うがごとく類似ゲームが登場してくるさまは、30年以上前に起こった「スペースインベーダー(タイトー)」の一大ブームを彷彿とさせる。ただし、インベーダーはアーケード(ゲームセンター向け)ゲームであり、ゲーム会社はゲーム機を売る形でしか利益を得られず、ユーザーが遊んだ売上はゲーム機を買って稼働させたゲームセンターや喫茶店が手にしていた。今回のソーシャルゲームブームでは、ユーザーからの売上が伸びるにつれてゲーム会社の収入も増えていくため、インベーダーブームよりさらに儲かっている。

いつまでも儲かると
いちばん思っていないのは当事者たち?

 現在こそ非常に高い利益率であるグリーだが、ゲーム企業に転身する前のグリーはSNSとしては後発のミクシィに追い抜かれ、存亡の危機にあったこともある。グリー開設当初は現在の田中社長はまだ楽天の社員で、グリーを楽しいネットコミュニティとして一人で運営していた。その姿は、フェイスブックのマーク・ザッカーバーグにも重なる。もっとも、ザッカーバーグはその昔ゲームを「つまらないもの」と嫌っていたが。

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ニュースリリース

SAS ビーエム長野 UCOM ETスクウェア シーメンス マカフィー

石島照代 [ジャーナリスト]

1972年生まれ。早大教育学部教育心理学専修を経て、東京大学大学院教育学研究科修士課程在籍中。1999年から業界ウォッチャーとしての活動を始める。著書に『ゲーム業界の歩き方』(ダイヤモンド社刊)。関心があるのは動機づけで、学習現場における双方向メディアとしてのテレビゲームの効果も検討している。
Photo by 岡村夏林

 

小山友介 [芝浦工業大学システム理工学部准教授]

1973年生まれ。芝浦工業大学システム理工学部准教授。2002年京都大学大学院博士課程修了。博士(経済学)。東京工業大学助教等を経て現職。東工大時代に経済シミュレーション研究に従事、そこで学んだコンピュータサイエンスの知識を生かしてゲーム産業研究を行なう。著書に『デジタルゲームの教科書 知っておくべきゲーム業界最新トレンド』(共著、ソフトバンククリエイティブ社刊)

 


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ゲームソフトをゲーム専用機だけで遊ぶ時代は終わった。ゲーム機を飛び出し、“コンテンツ”のひとつとしてゲームソフトがあらゆる端末で活躍する時代の、デジタルエンターテインメントコンテンツビジネスの行方を追う。

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