ゲーム産業をとりまく現状から考えたとき、ソーシャルゲームがもつ次の3つの特徴は、日本の家庭用ゲーム産業の弱点をすべてカバーしている。
1)2Dのイラストに非常に高い付加価値がつく。
2)プレイヤーを熱中させる、きめ細やかな作り込みがとても重要である。
3)据置機ほどの高度な技術/システム設計能力を必要としない。
実際に、ソーシャルゲームへの進出が成功した会社では、2012年3月の決算が大きく改善している。バンダイナムコホールディングスのように、過去最高益となりそうな企業まで現れている。これまでの議論から明確なように、ソーシャルゲームの最大の特徴は非常に高い利益率にある。 グリーの利益率は50%と、既存の常識では考えられない水準だ。
この高い利益率と社会問題になるほどの話題性、二匹目のドジョウを狙うがごとく類似ゲームが登場してくるさまは、30年以上前に起こった「スペースインベーダー(タイトー)」の一大ブームを彷彿とさせる。ただし、インベーダーはアーケード(ゲームセンター向け)ゲームであり、ゲーム会社はゲーム機を売る形でしか利益を得られず、ユーザーが遊んだ売上はゲーム機を買って稼働させたゲームセンターや喫茶店が手にしていた。今回のソーシャルゲームブームでは、ユーザーからの売上が伸びるにつれてゲーム会社の収入も増えていくため、インベーダーブームよりさらに儲かっている。
いつまでも儲かると
いちばん思っていないのは当事者たち?
現在こそ非常に高い利益率であるグリーだが、ゲーム企業に転身する前のグリーはSNSとしては後発のミクシィに追い抜かれ、存亡の危機にあったこともある。グリー開設当初は現在の田中社長はまだ楽天の社員で、グリーを楽しいネットコミュニティとして一人で運営していた。その姿は、フェイスブックのマーク・ザッカーバーグにも重なる。もっとも、ザッカーバーグはその昔ゲームを「つまらないもの」と嫌っていたが。