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【第30回】 2012年4月19日
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石島照代 [ジャーナリスト],小山友介 [芝浦工業大学システム理工学部准教授]

“依存症”ならば自己責任論は成立しない
規制なきまま社会と共存していけるのか
――ソーシャルゲームの何が問題か【後編】

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 そして、(射幸心をあおってお金を使わせる)ギャンブル性が多少でも絡んでくると、ソーシャルゲームにおける過消費は自己責任とは言えない。止めたくても止められなかったカヨコさんも、『ソーシャルゲーム依存症』だったかもしれないからです。もし仮に、依存症ということになっているのであれば、それは前頭葉の機能が低下しているということであり、適切な処置が必要になります。

 それに、入り口は誰でもカンタンに入れるけど、ユーザーが依存症になるくらいハマるかもしれない、ということをきちんと明示できないのは問題ではないのか。業界が自主規制できないなら、政府が規制すべきといわれても仕方がないでしょう。正直、パチンコの方がソーシャルゲームよりも、規制されている分だけまともなような気がします。パチンコは子どもは入れないし、確率は明示されていますしね」

 下記の10項目は、「精神障害の診断と統計の手引き 第4版修正用」(DSM-IV-TR)に掲載されているギャンブル依存症の診断基準項目を、ギャンブルという文字をソーシャルゲーム(もしくはガチャ)に置換したものである。内容を一部ソーシャルゲームに合うように筆者が改編した上で、堀教授に監修をお願いした。ソーシャルゲームで1年に100万円以上使っている、もしくは月に10万円以上使っている人は、ぜひ試してみて欲しい。

1. いつも頭のなかでソーシャルゲームのことばかり考えている。
2. 興奮を求めてソーシャルゲームに使う金額が次第に増えている。
3. ソーシャルゲームをやめようとしてもやめられない。
4. ソーシャルゲームをやめているとイライラして落ちつかない。
5. いやな感情や問題から逃げようとしてソーシャルゲームをする。
6. (コンプ)ガチャで欲しいカードが出ないと、使ったお金をムダにしたくなくて、
   いつまでも(コンプ)ガチャをやり続ける。
7. ソーシャルゲームの問題を隠そうとして、家族やその他の人々に嘘をつく。
8. ソーシャルゲームの元手を得るために、詐欺、盗み、
   親のクレジットカード番号を盗み見する、横領、着服などの不正行為をする。
9. ソーシャルゲームのために、人間関係や仕事、学業などがそこなわれている。
10.ソーシャルゲームでつくった借金を他人に肩代わりしてもらっている。

 ギャンブル依存症の場合、5項目該当すると、ギャンブル依存症と診断される。ちなみにカヨコさんは、1、3、4、6、9が該当すると答えた。

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ニュースリリース

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石島照代 [ジャーナリスト]

1972年生まれ。早大教育学部教育心理学専修を経て、東京大学大学院教育学研究科修士課程在籍中。1999年から業界ウォッチャーとしての活動を始める。著書に『ゲーム業界の歩き方』(ダイヤモンド社刊)。関心があるのは動機づけで、学習現場における双方向メディアとしてのテレビゲームの効果も検討している。
Photo by 岡村夏林

 

小山友介 [芝浦工業大学システム理工学部准教授]

1973年生まれ。芝浦工業大学システム理工学部准教授。2002年京都大学大学院博士課程修了。博士(経済学)。東京工業大学助教等を経て現職。東工大時代に経済シミュレーション研究に従事、そこで学んだコンピュータサイエンスの知識を生かしてゲーム産業研究を行なう。著書に『デジタルゲームの教科書 知っておくべきゲーム業界最新トレンド』(共著、ソフトバンククリエイティブ社刊)

 


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ゲームソフトをゲーム専用機だけで遊ぶ時代は終わった。ゲーム機を飛び出し、“コンテンツ”のひとつとしてゲームソフトがあらゆる端末で活躍する時代の、デジタルエンターテインメントコンテンツビジネスの行方を追う。

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