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【第29回】 2012年4月18日
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石島照代 [ジャーナリスト]

親のカードで400万円使った子ども、
ヘソクリ全額150万円をつぎ込んだ主婦……
過消費する“フツー”の人々
――ソーシャルゲームの何が問題か【中編】

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ゲームの刺激慣れしていない人は過消費しやすい?
あなたも「1年で150万円を使うカヨコさん」になるかも

 「いままでゲームで遊んだことがない主婦が、暇つぶしに無料だといわれているゲームで遊んだら、150万円使っていた」というカヨコさんの話から思ったのは、もしかしたら予想以上にゲーム未経験者がソーシャルゲームの収益を支えているのかもしれないという仮説だ。

 もちろん、ソーシャルゲームユーザーの中に、家庭用ゲーム経験者やパチンコユーザーもいることは論を待たないが、3ヵ月の課金総額が900億円を越えてくるとなると、また別の種類のユーザーもいると考える方が妥当だろう。

 もちろん、これはただの仮説に過ぎない。だが、前出のecネットワーク代表の沢田氏も「子どもや普通の主婦らが、ソーシャルゲームのアイテムを買いすぎるケース、つまり過消費をすることは見受けられる」と話す。

 「サイバーエージェントが運営する『アメーバピグ』で15歳以下の利用を制限したら、年齢を偽って利用していた大人から、『購入済みのゲーム内通貨の使い道がなくなった』、『今までのように遊べなくなるなら退会したいが、そうするとお金が返ってこない』と消費者センターにクレームが殺到したそうです。その中には、子どものIDを使って遊んでいた母親の話もありました。

 また、本当は親が利用していたのに未成年者取消を悪用するケースも多いようですね。企業側は通常、未成年者取引に応じる際にその利用者には退会してもらうのですが、その時に、親が退会を渋るケースもあるそうです。これらの話だけでも、普通の大人がどれだけ遊んでいるかが分かります」(沢田氏)

 このような、暇つぶしで遊んでいる主婦や子どもなどの姿から見えてくるのは、「刺激慣れしていない」ユーザー属性である。

 筆者らの周りの家庭用ゲーム業界関係者は異口同音に「ソーシャルゲームは儲かるのは分かるが、正直何がおもしろいのか分からない」と言う。筆者も同感で、遊んだ5つのソーシャルゲームのどれも2日以上続かなかった。

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ニュースリリース

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石島照代 [ジャーナリスト]

1972年生まれ。早大教育学部教育心理学専修を経て、東京大学大学院教育学研究科修士課程在籍中。1999年から業界ウォッチャーとしての活動を始める。著書に『ゲーム業界の歩き方』(ダイヤモンド社刊)。関心があるのは動機づけで、学習現場における双方向メディアとしてのテレビゲームの効果も検討している。
Photo by 岡村夏林

 


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ゲームソフトをゲーム専用機だけで遊ぶ時代は終わった。ゲーム機を飛び出し、“コンテンツ”のひとつとしてゲームソフトがあらゆる端末で活躍する時代の、デジタルエンターテインメントコンテンツビジネスの行方を追う。

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