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石原氏の尖閣購入発言 挑発合戦は外交にあらず
(2012年4月19日午前7時10分)
石原慎太郎東京都知事が民間人の所有する沖縄県・尖閣諸島を都が購入すると発言し、波紋を広げている。野田佳彦首相も衆院予算委で「あらゆる検討をしたい」と述べ、国有化も選択肢とする考えを示した。今年は日中国交正常化40周年。北朝鮮対応や経済交流で中国とのより良好な関係構築に意を注ぐべきときだ。日本政府は過去にも国有化を検討したが、中国側に配慮し見送ってきた経緯もある。慎重な対応が必要である。
石原氏は米ワシントンでの講演で「東京が尖閣諸島を守る」と発言した。地権者とは基本合意、年内取得を目指すという。中国の強硬姿勢について、記者団には「何で日本政府や日本人は反発しないのか。半分宣戦布告みたいなものだ」と発言をエスカレートさせている。
尖閣諸島は明治政府が1895年に日本領土に編入。第2次大戦後は米国の施政権下に入ったが、沖縄とともに返還された。石原氏が買い上げの対象に挙げた一番大きな魚釣島と北小島、南小島は民有地で、政府が2002年から「平穏で安定的な維持・管理を図る必要がある」として年間約2500万円の賃料を払って借り上げている。
一方の中国や台湾は領有権を主張、周辺海域でトラブルも多発している。だが「歴史的にも国際法上も日本固有の領土」との日本政府の立場は明確で実効支配もしている。領土・領海・領空を守る姿勢はもちろんだが、いま都有化や国有化であえて刺激する必要があるのか。
石原氏は「どこの国が嫌がろうと、日本人が日本の領土を守るために島を取得することに何か文句がありますか」と述べ、「豊かな漁場で海底資源もある」とも強調する。
領土問題に強いこだわりを持ち、中国には強硬な姿勢をとってきた石原氏だ。民主党政権の外交姿勢が「弱腰」にみえるのだろう。政府を批判、揺さぶりを掛け、自らは国を守る信念の政治家だとアピールする狙いがあると思われる。米国での発言は、国際的な注目を集めることを計算したようにみえる。
しかし、なぜ東京都が都民の税金を使って遠く離れた島を買わなければならないのか。知事の個人的信条というのでは理由にはならない。中国を刺激するだけで、無責任ではないか。
尖閣諸島周辺では10年9月に、中国漁船が海上保安庁の巡視船に衝突する事件が発生。今年3月には日中双方が周辺海域の無人島に新たな名称を付け、その後、中国の漁業監視船が周辺を航行するなど挑発的な活動を繰り返している。
こうした問題は外交ルートで解決していくべきものだ。外交は政府の専権事項である。日中両国は東シナ海の危機管理のために「高級事務レベル海洋協議」を設置、5月に中国で初会合を開く。複雑な利害が絡む外交課題には毅然(きぜん)とした姿勢を崩さず、かつ丁寧な対話の積み重ねが必要だ。