「メタンハイドレートは資源ではない」石井吉徳・元国立環境研究所長

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そこで「資源とは質が全て、量ではない」と述べる私のHP、下記:「資源とは」をまず参照されたい。

www1.kamakuranet.ne.jp/oilpeak/oil_depletion/netenergy.html

一言すれば、エネルギーはEPR=Energy Profit Ratioで判断すべき、入力エネルギーと出力エネルギーの比=エネルギー収支比で考えるべきだ。これがエネルギーの絶対条件だ。簡単なことである。

■在来型ガス田と全く違う

メタンハイドレートは、普通の天然ガス田と違い、掘削しても自然に噴出しない。固体のメタンと水の水和物、メタンを中心に周囲を水分子が囲んだ形に、包接水和物は低温かつ高圧の条件下で、水分子は立体の網状構造を作り、内部の隙間にメタン分子が入り込み氷状の結晶になっている。

固体なので、火をつけるとメタンが分離するので燃える。このために「燃える氷」とも言われる。この水和物1 立方メートルを1気圧の状態で解凍すると164 立方メートルのメタンガスを得る。分子式は CH4•5.75H2O、密度は0.91 g/cm3である。

日本列島の周辺の海底下にも、堆積地層内有機物の分解で生じたと推定されるメタンが固体の水和物メタンハイドレートとして広く分散して存在している。この水和物は低温、高圧で安定する。

シベリア、カナダなどは低温なので、メタンハイドレートは地表近くに存在する。一方、日本などでは水深1キロメートル程度の深海底、地層内に分布している。四国沖、御前崎沖なで存在が確認されている。

メタンハイドレートは日本のみならず、世界の海域で広くその存在が昔から知られているが、それを在来型の天然ガスと同じとは考えてこなかった。その量は膨大であることも分かっていた。

これが資源として価値があるかどうかだが、前にも述べたようにメタンハイドレートは濃集して存在していない。だから資源として価値がない。

その性状をもう少し、説明しよう。メタンハイドレートの堆積層は地中深くなるにつれて地温が高くなるためガス化する。そのため海底斜面内、水深500-1000 m程度でその下数十から数百mにしか存在できない。

そこで固体状メタンハイドレートより、その下の遊離メタンを通常のガス田のように採取できないかが、話題になったこともある。だがその後の掘削事例から、その可能性がないと分かった。

■日本での取り組みの経過

1990年ごろ、元通産省傘下の日本エネルギー総合工学研究所が、様々な非在来型の天然ガスの可能性を、業界、学会からの識者を集めた委員会で調査研究したことがある。私はその委員長を務めた。

その検討の中で取り上げたのがメタンハイドレートだった。資源かどうか判然としないメタンハイドレートを論点整理した。経済大国となった日本が、もう欧米追従だけでなく、国費を費やして資源価値があるか整理することとした。そして研究調査すべきと報告した。

それから20年を経て、何となく資源と決め付けたのか、毎年かなりの額の国費が投じられる公共事業化事業と化したようである。資源かどうかの見極めの総投資額を100億円程度と思っていた。その後の経過は詳しくは知らないが、毎年の規模となったようである。

■いわゆるメタンハイドレートは、濃集されていない

繰り返すが、資源は質が全て、量ではない。濃集されていないものを集めるにはエネルギーが要る。ところが日本ではその意味が理解されない。

例えば、1996年の時点でわかっているだけでも、メタンハイドレートは天然ガス換算で7.35兆立方メートル、日本で消費される天然ガスの約96年分、以上あるというのである。

これは原始埋蔵量であって、経済的に可採な資源量と違う。大事なのは「エネルギーコスト」だ。良く話題になるマネーコストは殆ど無意味である。

海底面下に薄く分布するメタンハイドレートは固体である。通常のガス田のように掘削しても噴出するわけでない。先ず地層中に安定分布する固体からメタンガスを遊離しなければならない。

だが、当然、ガス化にはエネルギーが要る。EPR(エネルギー収支比)は低い。一言すれば問題にならない。

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2011年10月9日(日)20:18

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