現在位置:
  1. 朝日新聞デジタル
  2. 社説

社説

朝日新聞社説をもっと読む

朝日新聞社説のバックナンバー

 大学入試問題に非常に多くつかわれる朝日新聞の社説。読んだり書きうつしたりすることで、国語や小論文に必要な論理性を身につけることが出来ます。

有料版のご購読で
朝刊で声やオピニオンも読める!社説など過去1年分の新聞記事が検索できる!
社説だけまとめて読むなら
3カ月分まとめて読める!WEBマガジン「朝日新聞 天声人語・社説」

2012年4月18日(水)付

印刷用画面を開く

このエントリをはてなブックマークに追加 Yahoo!ブックマークに登録 このエントリをdel.icio.usに登録 このエントリをlivedoorクリップに登録 このエントリをBuzzurlに登録

尖閣買い上げ―石原発言は無責任だ

石原慎太郎・東京都知事がきのう、米・ワシントンで、沖縄県の尖閣諸島を都が購入する計画だと明らかにした。日本の領土なのに、中国が領有権を主張している島々だ。知事は「東京が[記事全文]

北朝鮮―安保理声明にこたえよ

北朝鮮が「人工衛星の打ち上げ」と称して、事実上の長距離弾道ミサイル発射実験に踏み切ったことに対し、国連安全保障理事会が「強く非難する」という議長声明を出した。声明は、発[記事全文]

尖閣買い上げ―石原発言は無責任だ

 石原慎太郎・東京都知事がきのう、米・ワシントンで、沖縄県の尖閣諸島を都が購入する計画だと明らかにした。日本の領土なのに、中国が領有権を主張している島々だ。

 知事は「東京が尖閣諸島を守る」と語った。中国に四の五の文句など言わせるものか、という態度である。

 こんな知事発言に、インターネット上では拍手を送る書き込みがあふれている。

 確かに、知事の発言には本人をはじめ、中国の対応を不快に思ってきた人々の留飲を下げる効果はあるだろう。だが本来、政治家の仕事は複雑に絡み合った懸案を、一つひとつ丁寧に解決していくことだ。

 それに、そもそもこれは東京都の仕事ではないはずだ。

 知事は「島々を舞台にしてさまざまな施策を展開する」という。けれど、日本人が上陸しただけで反発してくる中国のことだ。問題はいっそうこじれるだろう。

 そうなった時、首都とはいえ自治体の長の石原氏に、領土が絡む問題を解決する手だてはない。政府の外交に悪影響を与えることを承知で大風呂敷を広げるのは、無責任としかいいようがない。

 尖閣諸島といえば、一昨年9月、中国の漁船が日本の巡視船に衝突してきた事件があった。

 この3月に、双方の政府が周辺海域の無人島に新たな名前をつけてからは、中国の監視船などが領海侵入といった挑発的な活動を続けている。

 さらに、石原発言を受けて、中国国内では、政府に強硬な対応を求めるネット世論が噴出している。

 私たちは、こうした中国側の対応にも自制を求める。日中両国民がお互いに批判しあって、何か得るものがあるのか。

 体制が変わったばかりの北朝鮮への対応でも、日本と中国との連携は欠かせない。国交正常化40年を迎える隣国同士でもある。こうした両国の関係を、石原氏はどう考えているのか。

 そもそも、都民の税金を使って島を買うことの説明がつくかも疑問だ。都議会に予算案を提出するというが、そう簡単に理解が得られるとは思えない。

 石原氏には、新党構想が取りざたされている。その折から、税金を使って選挙向けのパフォーマンスをしているようにも見える。

 藤村官房長官はきのうの記者会見で、国が購入する可能性を否定しなかった。東京都よりも外交を担当する政府が所有する方が、まだ理にかなっている。

検索フォーム

北朝鮮―安保理声明にこたえよ

 北朝鮮が「人工衛星の打ち上げ」と称して、事実上の長距離弾道ミサイル発射実験に踏み切ったことに対し、国連安全保障理事会が「強く非難する」という議長声明を出した。

 声明は、発射を過去の安保理決議に違反すると認定した。

 北朝鮮がさらに発射や核実験をした場合には、安保理として相応の行動をとると予告し、北朝鮮に圧力をかけた。

 発射から間を置かずに、北朝鮮の後ろ盾になってきた中国の賛成も得て、中身のある声明をまとめたことを評価する。

 国際社会の一致した声を、北朝鮮は重く受け止めるべきだ。

 日本には、より重みのある決議にすべきだとの声もあった。

 だが北朝鮮を追いつめたくない中国が決議に慎重で、議長国の米国は、形式で譲るかわりに強い内容にすることを選んだ。

 これまでの安保理決議で、北朝鮮はすでに、武器やぜいたく品の禁輸など広い制裁を科されている。新たに決議をしても、実際の効果は限られるという事情もあった。

 米政府は一方で、2月に米朝間で合意した食糧支援の中止を決めた。オバマ大統領は「悪行にほうびは与えない」と語っており、予想された対応だ。

 オバマ氏は「挑発や脅しを受けて譲歩する、という過去のやり方を変える」との方針で、北朝鮮に向き合ってきた。

 2月の合意で米朝関係の改善が進むかと思われたが、北朝鮮は自らその機会を手放した。

 北朝鮮は声明を米国の敵対的行動と非難し、合意に「これ以上、拘束されない」とした。だが声明は自身の振る舞いがもたらした結果であり、筋違いだ。

 北朝鮮が、また核実験をして揺さぶりをかける、との見方もある。瀬戸際外交は通用しないという教訓を学び、無用な挑発を控えるよう強く求める。

 米国は11月に大統領選を控える。北朝鮮に譲歩すると「弱腰だ」と批判されるため、オバマ氏は動きにくくなった。

 北朝鮮は、ウラン濃縮による核開発にひそかに取り組んでいたが、米朝合意にはこの活動の中止も含まれていた。まずは北朝鮮が濃縮をやめ、国際社会との共存に向けた姿勢を示すべきだ。合意通りに国際原子力機関(IAEA)の監視要員を受け入れることも必要だ。

 中国にも改めて注文したい。

 中国が一番恐れるのは地域の不安定化だが、不安定にしているのは北朝鮮だ。これ以上の混迷を招かぬように、中国はあらゆる手段を使って北朝鮮に働きかけるべきだ。

検索フォーム

PR情報

朝日新聞購読のご案内
新聞購読のご案内事業・サービス紹介
朝日新聞デジタル端末セットコースのご案内