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社説

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尖閣3島購入 都知事の仕事ではない(4月19日)

 石原慎太郎東京都知事は米ワシントンで沖縄県の尖閣諸島のうち民間人が所有する3島を都として買い取る考えを明らかにした。

 尖閣諸島は日本の固有の領土だが、中国などが領有権を主張している。国同士の問題に都が介入する形になる。

 遠く離れた島を購入して何をしたいのか不明だ。実現できるかも怪しい。以前から中国に批判的な知事の行動に中国国内で反発が出ている。

 日中関係を不必要に悪化させかねない。無責任な行動は慎むべきだ。

 石原知事は「東京が尖閣諸島を守る。日本人が日本の国土を守ることに文句があるか」と訴えた。

 ずいぶん飛躍した議論だ。尖閣諸島を「守る」とは何を意味するのか。国土防衛であれば一義的に国の仕事である。国よりも地方自治体がその任務にふさわしいと言うならその根拠を示すべきだ。

 目立つのは激しい中国批判だ。「日本の実効支配を壊すため過激な運動をしている」と語った。日本政府に対しては「中国が怒るからびくびくしている」と不満をぶちまけた。

 政府は尖閣諸島の安定的な維持管理を目的に2002年から個人所有の土地を賃借している。中国を刺激すべきではないという外交的判断から国で所有するのは避けてきた。知事の発言の背景には国に対中強硬策を促す意図が見て取れる。

 藤村修官房長官は必要なら国有化も検討するという。賃借を続けてきた経緯や日中外交への影響を慎重に考え、知事に自重を促すのが筋だ。

 中国政府は購入手続きの停止を要求した。中国国内で反日感情が高まれば日中政府が冷静に話し合う環境をつくることが難しくなる。日本国内で政府と自治体の意見が割れている印象を与えるのは得策ではない。

 自らの政治的立場をアピールする狙いものぞく。石原氏は民主、自民の二大政党に対抗する新党結成を模索している。政権を攻撃して自らの存在感を高めようとしているのなら、尖閣問題を政治利用していると批判されても仕方ないだろう。

 尖閣諸島購入に税金を投入することには都民の反発も予想される。東京都議会が賛成する見通しも立っていない。どこまで実現性があるのか疑わしいのが実態だ。

 こうした事態の背景には外交の停滞があることを、政府も肝に銘じるべきだ。一昨年の漁船衝突事件以後、中国の尖閣諸島周辺での活動が目立っている。中国や国際社会に対して日本の立場を丁寧に説明することが重要だ。

 今年は日中国交正常化40周年の節目でもある。無用な緊張を生んで友好ムードを損なうべきではない。

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