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100円赤バス、存廃の分岐点…大阪市きょう公開討論

地域の商店街や病院を巡る赤バス。高齢者らの足になっているが、利用が低迷する路線が大半だ(大阪市内で)

 生活道路を走るコミュニティーバスで全国最大級の29路線を持つ大阪市の「赤バス」が存廃の分岐点にさしかかっている。市の一般会計からバス会計への年間15億1300万円に上る運営補助金の7割削減が、市の住民サービスカット試案に盛り込まれ、18日、橋下徹市長の立ち会いで、改革プロジェクトチームと市交通局などが見直しの是非について公開討論する。車いすでも乗降できる低床車両で病院や商店街を結ぶ赤バスは、過剰サービスなのか、それとも、生活に不可欠な住民の足なのか。(福田公則)

利用低迷

 旭区の団地前にある停留所から、30停留所を約50分で巡回する路線「旭ループ」(9・1キロ)の赤バスに乗り込んだ。定員33人の車内に、乗客は2人。「誰も乗っていないことが多いよ」と、男性客(71)が苦笑した。

 区役所、病院、公園、商店街、ファストフード店……。まる1周で乗り降りした客は13人だった。

 赤バスがスタートしたのは2000年。交通局が直営し、一律100円の割安運賃のうえ、市バスが入りにくい狭い道まで走るきめ細かさで、需要の掘り起こしが期待された。

経費21億円

 しかし、赤バス運営は赤字続きだ。10年度決算は、収入約4億円に対し、かかった経費は21億3000万円。運賃100円を稼ぐのに、500円以上かかった。補助金で穴埋めしても、約6億円が不足し、累積赤字は47億円に膨らんだ。

 交通局は目標乗客数を1営業キロあたり2・2人と掲げたが、11年に達成したのはわずか3路線。全路線平均は1・8人にとどまる。

 交通局は「路線が市バスや地下鉄と重なり、赤バスでしか移動できないエリアが少ない」と分析する。

 前市長時代にも廃止案がまとまったが、市議会の反発で結論が先送りされた。

 改革プロジェクトチームは、横浜、名古屋、神戸、京都の4政令市がバス路線維持に支出している補助金の平均水準を参考に、来年度から補助金を4億4000万円に減らす案を示した。補助金カットが決まれば、多くは廃止対象となる見通しだ。

高齢者の足

 「赤バスがなくなったら、どうやって病院に通えばいいのか……」

 浪速区の女性客(86)は困惑する。両足関節のリウマチと高血圧の診察のため、1日おきに区内の病院に通院するため、赤バスを利用しているという。

 大正区の老人福祉施設に入所する夫(84)を見舞う女性(78)も「市バスは表通りしか走ってない。施設前まで走ってくれる赤バスは便利」と話す。

 赤バスの停留所は病院や福祉施設付近に配置され、廃止は利用者の足を奪う。

 「市は年寄りのことを考えてへん」

 コミュニティーバス 路線バスが走らない公共交通の空白エリアで、自治体や、自治体から委託を受けたバス会社が運行する。停留所は病院や福祉施設、商店街など、市民ニーズの高い場所に置かれ、車両はノンステップの小型バスが多い。2009年現在、導入している自治体数は1130。多くは福祉施策として、一般会計から運営費を穴埋めしている。

2012年4月18日  読売新聞)
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