卒論発表会 - Final Project Presentation -
昨年9月からグループで取り組んできた卒論ですが、いよいよ発表の日を迎えました。
この街にある唯一の4つ星ホテルで行われるこのプレゼンテーションは、1グループ30分で行われ、FIFA、IOC、UEFA、大学教授等の参加者から質問を受け、その後の会議で論文の内容とプレゼンの出来を踏まえて成績評価されます。
過去の卒論を通じてFIFAにCSR部門が出来たり、イスラエルとパレスチナの子供達のサッカーキャンプ交流をさせたりと、色々な活動が実現しているので、ただの卒論に留まらず誰しもがチャンスがあれば実現に向けてリサーチを続けたいと思っています。
7組ある中で、私達は6番目でした。
まず、1組目は「African Realities: Moving towards a Football Club Licensing System」
・エイドリアン・トゥーレ(フランス / アメリカ / マリ)
・トゥシャー・ガーク(インド)
・ハーヴィ・ブランチャード(カナダ / スペイン)
・パトリック・オニヤンゴ(ケニア)
現在のアフリカのサッカー界が置かれている状況から、どの様なステップを踏んでゆけば、欧州の様なクラブライセンシングシステムを導入し、水準の高い経営を維持できるかという内容の論文です。アフリカのコンフェデレーションであるCAFのGeneral SecretaryにはFIFA Masterの卒業生がいるため、情報が確実で、とても説得力のあるものでした。
2組目は、「The internationalization of sporting events: The case of the Giro d'Italia」
・ゴードン・テンプルマン(アメリカ)
・ウィリアム・マカリィフ(アイルランド)
・アダム・クロジャーズ(アイルランド / オーストラリア)
・ショード・グリフィン(オランダ)
スポーツイベントをどの様に国際的なイベントに発展させてゆくか。Giro d'Italiaをケーススタディにした論文です。インタビューのために実際にイタリアにも行ったりして、かなり研究熱心なグループでした。
3組目は、「Bidding: How can you win even if you lose? Identifying legacies of lost bids to host a sports mega event」
・タハ・ディアエイ(エジプト)
・アルベルト・ザンボーニ(イタリア)
・ジェロム・ドゥフォーグ(フランス)
・パベルズ・トゥシェヴス(ラトビア)
個人的には、一番面白いと思ったトピックです。ワールドカップやオリンピックでは招致活動に成功する国や都市がある一方、それ以外の負けた国にはスポットライトが当たる事はあまりありません。そこで、例え招致活動で勝てなかったとしても、立候補する事によってどの様に街や国をプロモーションし、その恩恵を受ける事ができるかという論文です。先日の16日には東京が正式に2020年のオリンピック招致に向けて立候補表明しましたが、読む価値がありそうです。
4番目は「Sports Fandom: What do Women Want? A Multi-Sport Analysis of Female Fans」
・クリスティーナ・フリードルフ(ドイツ)
・オニア・パワー(アイルランド)
・サラ・チェカモレ(イタリア)
・ロチャック・ランガー(インド)
女性のスポーツファンを焦点に、どうしたら女性達にスタジアムに来てもらえる様な仕組みを作る事が出来るかと言う論文。このグループは元GMエンジニアのロチャックを要し、かなり精密な分析をしています。
5番目は「The Power of Music - New forms of Sporting Events」
・ニレン・マカジー(マレーシア)
・ロイ・レヴィ(スイス)
・ドミニク・アンダージェン(スイス / ハンガリー)
Adidasが開催したマラソンと音楽を融合したイベントなどを例に音楽がスポーツを盛り上げる事が出来る仕組みを分析した論文です。
そして6番目はいよいよ私たちのグループ「Insurance scheme in international football」
・私(日本)
・ロベルト・ナヴァレテ(エクアドル / アメリカ)
・ブレント・ラヒィーム(トリニダード・トバコ)
・トーマス・パシエチィニィ(ポーランド)
・アディブ・ハッシェム(サウジアラビア / フランス / アメリカ / クゥエート / シリア)
アディブの両親はそれぞれクゥエートとシリア出身でまず2国籍。祖母がフランス出身でもう1国籍ゲット。父親はサウジの王様に仕える医者で、王様から特別にサウジアラビア国籍をゲット。さらにアディブ自身はアメリカで育ったため、アメリカ国籍もゲット。さすがに5つの国籍を持つ男に会ったのは初めてです。
現在、各クラブと各国の協会、FIFAとの間に確執があるのは明らかです。それは代表に呼ばれた選手が怪我したときの保険や、給与の補償に始まり、年間試合数、ドクターの判断…etc。
この論文の為に、FIFA、UEFA、ECA、EPFL、FIFPro、CAS、各国協会、弁護士、クラブ...等々、様々なステークホルダーにインタビューを実施しました。
そこで、まずそれぞれの言い分が違うのが、クラブと代表(協会)の間に労働契約があるかないかという事。例えば、スイスの法律ではこの2者間には労働契約が存在する事になっており、拘束中は給与も支払われますが、スペインの法律では義務。ミリタリーなどと変わらない「国に奉仕する」という認識になっています。
また世界各国のサッカー協会から情報提供をしてもらい、医療補償の有無、給与補償の有無等を分析しました。一番整っているのはThe FA(イングランド・サッカー協会)、The FAは医療費保険も給与保障もしています。しかし、逆にトーゴなどの経済的に厳しい組織では補償等は一切ありません。そのため、数年前にアフリカネーションズカップに参加した際にトーゴ代表がテロの標的にされ、怪我をしたキーパーは引退を余儀なくされましたが、協会やクラブからは補償がありませんでした。
とある欧州の女子のサッカー選手は国の代表のためにプレーして大怪我をし、その後、車いす生活を余儀なくされてしまったそうです。その際、彼女はクラブには所属していなかったため、協会に補償を依頼するも協会は補償を払わず、家族が高額な医療費等を全額出費したそうです。
プレゼンが終了した時には参加していたFIFAの方から、「現状で何にも問題など起きていない。何故、FIFAが補償しなければならないんだ?」といった内容の意見が浴びせられましたが、逆に参加していたECA(ヨーロッパクラブ協会)の方が、私たちを全面的にサポートしてくれました。場内はかなり緊迫した雰囲気になり、この構図を見ただけでも何らかの改善があるべきなのは明らかです。
私たちのグループのブレントはFIFAに就職が決まっていますが、取り消されなければ良いですが…笑
7番目は「Favela Olimpica: A Feasibility Study on the Organization of a Youth Inter-Favela Games」
・ニケル・ムーア(トリニダード・トバゴ / アメリカ)
・ブルーノ・ワァンダレイ(ブラジル / ポルトガル)
・ベネディクト・ナン(スイス)
・アレシャンドレ・アルメイダ(ブラジル)
ブラジルにはFavelaと呼ばれる貧民街の様な物が存在します。今後、ワールドカップにオリンピックとスポーツのメガイベントが立て続けに開催される同国ですが、この様な貧民街の存在がイベントにマイナスイメージを与えると恐れ、国はなるべく彼らにスポットライトが当たらない様にしています。しかし、本来スポーツはみんなのモノ。誰しもに参加する権利があります。
そこでこのグループはリオ開催のオリンピックと連携し、Favela内でも「ファベラ・オリンピック」と称して同時期にスポーツイベントを開催しようというものです。
このグループがプレゼンし終えた時はスタンディングオベーションが鳴り止まず、ゲスト達からは一番ウケが良かったです。
最終的に今年のベスト・プレゼンテーションに選ばれた「ジロ・デ・イタリア」のグループ
この街にある唯一の4つ星ホテルで行われるこのプレゼンテーションは、1グループ30分で行われ、FIFA、IOC、UEFA、大学教授等の参加者から質問を受け、その後の会議で論文の内容とプレゼンの出来を踏まえて成績評価されます。
過去の卒論を通じてFIFAにCSR部門が出来たり、イスラエルとパレスチナの子供達のサッカーキャンプ交流をさせたりと、色々な活動が実現しているので、ただの卒論に留まらず誰しもがチャンスがあれば実現に向けてリサーチを続けたいと思っています。
7組ある中で、私達は6番目でした。
まず、1組目は「African Realities: Moving towards a Football Club Licensing System」
・エイドリアン・トゥーレ(フランス / アメリカ / マリ)
・トゥシャー・ガーク(インド)
・ハーヴィ・ブランチャード(カナダ / スペイン)
・パトリック・オニヤンゴ(ケニア)
現在のアフリカのサッカー界が置かれている状況から、どの様なステップを踏んでゆけば、欧州の様なクラブライセンシングシステムを導入し、水準の高い経営を維持できるかという内容の論文です。アフリカのコンフェデレーションであるCAFのGeneral SecretaryにはFIFA Masterの卒業生がいるため、情報が確実で、とても説得力のあるものでした。
2組目は、「The internationalization of sporting events: The case of the Giro d'Italia」
・ゴードン・テンプルマン(アメリカ)
・ウィリアム・マカリィフ(アイルランド)
・アダム・クロジャーズ(アイルランド / オーストラリア)
・ショード・グリフィン(オランダ)
スポーツイベントをどの様に国際的なイベントに発展させてゆくか。Giro d'Italiaをケーススタディにした論文です。インタビューのために実際にイタリアにも行ったりして、かなり研究熱心なグループでした。
3組目は、「Bidding: How can you win even if you lose? Identifying legacies of lost bids to host a sports mega event」
・タハ・ディアエイ(エジプト)
・アルベルト・ザンボーニ(イタリア)
・ジェロム・ドゥフォーグ(フランス)
・パベルズ・トゥシェヴス(ラトビア)
個人的には、一番面白いと思ったトピックです。ワールドカップやオリンピックでは招致活動に成功する国や都市がある一方、それ以外の負けた国にはスポットライトが当たる事はあまりありません。そこで、例え招致活動で勝てなかったとしても、立候補する事によってどの様に街や国をプロモーションし、その恩恵を受ける事ができるかという論文です。先日の16日には東京が正式に2020年のオリンピック招致に向けて立候補表明しましたが、読む価値がありそうです。
4番目は「Sports Fandom: What do Women Want? A Multi-Sport Analysis of Female Fans」
・クリスティーナ・フリードルフ(ドイツ)
・オニア・パワー(アイルランド)
・サラ・チェカモレ(イタリア)
・ロチャック・ランガー(インド)
女性のスポーツファンを焦点に、どうしたら女性達にスタジアムに来てもらえる様な仕組みを作る事が出来るかと言う論文。このグループは元GMエンジニアのロチャックを要し、かなり精密な分析をしています。
5番目は「The Power of Music - New forms of Sporting Events」
・ニレン・マカジー(マレーシア)
・ロイ・レヴィ(スイス)
・ドミニク・アンダージェン(スイス / ハンガリー)
Adidasが開催したマラソンと音楽を融合したイベントなどを例に音楽がスポーツを盛り上げる事が出来る仕組みを分析した論文です。
そして6番目はいよいよ私たちのグループ「Insurance scheme in international football」
・私(日本)
・ロベルト・ナヴァレテ(エクアドル / アメリカ)
・ブレント・ラヒィーム(トリニダード・トバコ)
・トーマス・パシエチィニィ(ポーランド)
・アディブ・ハッシェム(サウジアラビア / フランス / アメリカ / クゥエート / シリア)
アディブの両親はそれぞれクゥエートとシリア出身でまず2国籍。祖母がフランス出身でもう1国籍ゲット。父親はサウジの王様に仕える医者で、王様から特別にサウジアラビア国籍をゲット。さらにアディブ自身はアメリカで育ったため、アメリカ国籍もゲット。さすがに5つの国籍を持つ男に会ったのは初めてです。
現在、各クラブと各国の協会、FIFAとの間に確執があるのは明らかです。それは代表に呼ばれた選手が怪我したときの保険や、給与の補償に始まり、年間試合数、ドクターの判断…etc。
この論文の為に、FIFA、UEFA、ECA、EPFL、FIFPro、CAS、各国協会、弁護士、クラブ...等々、様々なステークホルダーにインタビューを実施しました。
そこで、まずそれぞれの言い分が違うのが、クラブと代表(協会)の間に労働契約があるかないかという事。例えば、スイスの法律ではこの2者間には労働契約が存在する事になっており、拘束中は給与も支払われますが、スペインの法律では義務。ミリタリーなどと変わらない「国に奉仕する」という認識になっています。
また世界各国のサッカー協会から情報提供をしてもらい、医療補償の有無、給与補償の有無等を分析しました。一番整っているのはThe FA(イングランド・サッカー協会)、The FAは医療費保険も給与保障もしています。しかし、逆にトーゴなどの経済的に厳しい組織では補償等は一切ありません。そのため、数年前にアフリカネーションズカップに参加した際にトーゴ代表がテロの標的にされ、怪我をしたキーパーは引退を余儀なくされましたが、協会やクラブからは補償がありませんでした。
とある欧州の女子のサッカー選手は国の代表のためにプレーして大怪我をし、その後、車いす生活を余儀なくされてしまったそうです。その際、彼女はクラブには所属していなかったため、協会に補償を依頼するも協会は補償を払わず、家族が高額な医療費等を全額出費したそうです。
プレゼンが終了した時には参加していたFIFAの方から、「現状で何にも問題など起きていない。何故、FIFAが補償しなければならないんだ?」といった内容の意見が浴びせられましたが、逆に参加していたECA(ヨーロッパクラブ協会)の方が、私たちを全面的にサポートしてくれました。場内はかなり緊迫した雰囲気になり、この構図を見ただけでも何らかの改善があるべきなのは明らかです。
私たちのグループのブレントはFIFAに就職が決まっていますが、取り消されなければ良いですが…笑
7番目は「Favela Olimpica: A Feasibility Study on the Organization of a Youth Inter-Favela Games」
・ニケル・ムーア(トリニダード・トバゴ / アメリカ)
・ブルーノ・ワァンダレイ(ブラジル / ポルトガル)
・ベネディクト・ナン(スイス)
・アレシャンドレ・アルメイダ(ブラジル)
ブラジルにはFavelaと呼ばれる貧民街の様な物が存在します。今後、ワールドカップにオリンピックとスポーツのメガイベントが立て続けに開催される同国ですが、この様な貧民街の存在がイベントにマイナスイメージを与えると恐れ、国はなるべく彼らにスポットライトが当たらない様にしています。しかし、本来スポーツはみんなのモノ。誰しもに参加する権利があります。
そこでこのグループはリオ開催のオリンピックと連携し、Favela内でも「ファベラ・オリンピック」と称して同時期にスポーツイベントを開催しようというものです。
このグループがプレゼンし終えた時はスタンディングオベーションが鳴り止まず、ゲスト達からは一番ウケが良かったです。
最終的に今年のベスト・プレゼンテーションに選ばれた「ジロ・デ・イタリア」のグループ