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原発事故調査委、検証作業なお途上 解明前の再稼働に懸念
(2012年4月17日午前7時03分)
東京電力福島第1原発事故をめぐっては、政府、国会、民間がそれぞれ事故調査委員会を設け、検証作業が続いてきた。
「失敗学」研究で知られる畑村洋太郎東京大名誉教授が委員長を務める政府の事故調査・検証委員会は昨年12月、中間報告をまとめ、非常時の原子炉冷却などに関して東電に甘さがあり、事業者として「極めて不適切」と指摘した。
国会は「政府から独立した調査機関が必要」との考えから昨秋、事故調査委員会(委員長・黒川清元日本学術会議会長)を設置。国政調査権に基づく資料提出や証人喚問もできる。
民間の立場で事故を調べた独立検証委員会(委員長・北沢宏一前科学技術振興機構理事長)は、閣僚らのヒアリングも重ね、2月に報告書を出した。
国会の事故調は6月をめどに報告書をまとめる予定。政府の最終報告も7月になる。事故原因の究明はなお途上だ。
14日、関西電力大飯原発3、4号機の再稼働について党の立場で地元協力を要請した仙谷由人政調会長代行に対し、三田村輝士越前市議はこう指摘した。「事故調などの最終的な取りまとめができていない中、拙速の感がぬぐえない」
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政府事故調の中間報告書は500ページ超。首相官邸、経済産業省原子力安全・保安院と東電の間の情報共有や伝達が不十分で、被害拡大につながったと指摘。「想定外」としてきた東電や政府の津波対策、事故対応を厳しく批判した。
ただ、地震による原子炉の損傷があったのかという問題は、現時点で不明として判断を持ち越している。
「家の建築に例えると、まだ住める状態ではない」「うやむやというか、もやもやとしている」。中間報告をまとめた昨年12月の会合で、委員から真相究明は途上との意見が相次いだ。
福島の事故原因をめぐり西川知事は、地震の揺れ、高経年化(老朽化)などの影響がなかったかを明らかにするよう早くから要請してきた。一方で、事故原因の究明には長期間かかるため、停止中の原発の再稼働に向けては現時点での事故知見を反映した「暫定的」な安全基準を求めた。
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3月の県会で知事は、政府や国会の事故調での検証を含め「これまで判明した知見を基に、まずは国自らが責任を持った判断を示すべきだ」と語った。県は、国がまとめた30項目の安全対策で「福島の知見も対策もかなり明らかになっている」(県幹部)との評価だ。
枝野幸男経済産業相は5日の参院予算委員会で「事故の技術的なプロセスは一定の見解がまとめられている」と答弁。事故調の結果が出る前でも技術的な安全確保は可能との認識を示した。
しかし、県会会派の民主・みらいで経産相に慎重判断を要請した野田富久会長はこう語る。「少なくとも政府の事故調が調査している段階で判断するならば、何のための事故調なのかとの思いはある」(原発取材班)