余録:明治初め、欧米人がやっているカードゲームを…
毎日新聞 2012年04月19日 00時49分
明治初め、欧米人がやっているカードゲームをはたで見ていた日本人が気づく。プレーヤーが「トランプ」という言葉をしきりに使うのだ。きっとカードかゲームの名に違いない、そう思った日本人はそれらをトランプと呼ぶようになった▲見てきたような情景はむろん推測だが、英語でいうプレーイングカードがトランプと呼ばれるのは日本だけという。実はトランプとは勝負を決める「切り札」を指す言葉だった。ついでながら日本語のカルタは、カードを示すポルトガル語に由来するからややこしい▲さて日本のねじれ国会を見ている外国人は、繰り返される「モンセキ」を聞いて国会を指す言葉と思うだろう−−とはむろん冗談である。だが、またまた資質の問われる閣僚の失態と、それを追及する野党によって切られる参院の問責カードというおなじみの光景だ▲国会答弁の迷走で失笑をかってきた田中直紀防衛相は、北朝鮮ミサイル発射をめぐる対応遅れでも袋だたき状態である。また公選法違反の事前運動や閣僚の地位利用を疑われる前田武志国土交通相は、旧態依然たる建設業界への利益誘導を思い起こさせて腹立たしい▲こんな閣僚だから、野党も切り慣れた問責カードを持ち出す。ただ両者が可決されれば、07年以降のねじれ国会での問責決議は政権交代をはさんで実に8件となる。消費増税法案をはじめ懸案山積の中、閣僚の去就を国会審議にからめる政局ゲームはもううんざりだ▲国民の信を失った閣僚の進退は政権自らがけりをつければいい。良識の府である参院の「モンセキ」はもともと党派間の勝負を決着させる切り札ではない。