首都直下地震 最大震度7を想定4月18日 18時12分
東京都は、首都直下地震が起きた場合の被害の想定を、東日本大震災を受けて6年ぶりに見直しました。従来考えられているよりも浅いところで地震が起き、最大の震度が初めて震度7に引き上げられたほか、建物の倒壊や火災などによる死者は前回の1.5倍に当たる9700人に上るとしています。
東京都の防災会議は、首都直下地震が起きた場合の被害の想定を東日本大震災を受けて6年ぶりに見直し、18日、その内容を公表しました。
今回は、東京湾北部と多摩地域をそれぞれ震源とする2つの首都直下地震のほかに、関東南岸の相模トラフで起きるマグニチュード8クラスの巨大地震、それに地震の危険性が高まっている可能性があると指摘されている立川断層帯地震が新たに被害想定に加わっています。
このうち、東京湾北部を震源とするマグニチュード7.3の地震が起きた場合、最大の震度が都の想定としては初めて震度7に引き上げられ、大田区や江東区など東京23区のうちの7つの区の一部で震度7の激しい揺れになると想定されています。また、23区の70%に当たる広い範囲で震度6強の揺れになると想定しています。これは、地震の揺れの強さに影響する震源の深さが、最新の研究成果を踏まえて前回より10キロほど浅く設定されたためです。
地震によって全壊または半壊する建物は合わせて37万8000棟に上り、冬の午後6時に風速8メートルの風が吹いていたとすると、火災によっておよそ18万8000棟の建物が焼失するとされています。こうした被害によって、死者は前回6年前の1.5倍に当たる9700人に上り、けが人は14万7600人に上ると想定されています。また、住宅が傾くなどの被害が出る液状化現象は、比較的地盤が弱いとされる23区の東側を中心に発生の危険度が高いとされ、建物の全壊は1000棟、半壊は6万3000棟に上ると想定されています。
一方、関東南岸の相模トラフで起きるマグニチュード8クラスの巨大地震では、想定される津波の高さが伊豆諸島の御蔵島村で22.42メートル、三宅村で18.12メートル、八丈町で11.46メートルなどとなっています。この地域では津波の被害については想定は行っていません。
東京湾岸では、最大で2.6メートルの津波が押し寄せると想定されていますが、防潮堤や水門などを越えることはなく、人的被害は出ないとしています。しかし、地震の揺れですべての水門が故障するなどして閉じられない場合では、大田区や中央区など16の区の一部で1メートル程度の浸水が想定され、全壊や半壊する建物が2500棟に上るとしています。
今回、想定に加わった立川断層帯地震では、震度7の激しい揺れが立川市や昭島市武蔵村山市などを中心に広い範囲で想定され、死者の数は2600人とされています。
東京都は今回まとめた被害想定を踏まえて、ことし秋までに具体的な対策を盛り込んだ地域防災計画を見直すことにしています。
「立川断層帯」とは
立川断層帯は埼玉県西部から東京の多摩地域に伸びる活断層で、長さは南北におよそ33キロあります。多摩地域では、立川市、国立市、武蔵村山市、府中市、青梅市、瑞穂町と、東京都心のベッドタウンとして多くの人が住む6つの市と町の直下を貫いています。
立川断層帯について、政府の地震調査委員会は、去年3月の巨大地震の影響で地震の危険性がこれまでより高くなっている可能性があると指摘しています。
“誰が巻き込まれても不思議でない”
被害想定の作成に関わった東京都防災会議地震部会の会長で東京大学の平田直教授は「フィリピン海プレートがこれまでの想定より浅いという最新の研究成果を取り入れた結果、東京23区の西側にも震度6強の激しい揺れに見舞われる地域が広がった。この地域には木造住宅が密集しているので、建物の倒壊や火災で甚大な被害が出るおそれがあり、対策が急がれる」と話しています。
また、同じく被害想定の作成に関わった明治大学大学院の中林一樹特任教授は「どなたが巻き込まれても不思議ではない。極めて厳しい被害状況になるというふうに考えなければならない。自宅や会社の建物が倒れてしまったら、どうしたらいいのかということを一人一人が考えていく、そのきっかけに、この被害想定を使うべきだと思う」と話しています。
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