道路交通法改正について

 以下の記事は、日本てんかん協会が発行する月間「波」2003年6月号よりの抜粋です。
診断書の書き方などより詳しい情報を知りたい方は、月間「波」を購読していただくか(月400円)、又は会員になって下さる様おすすめします。入会についてはここ

<特集>
「道路交通法改正から一年」〜免許を取ろう〜

月間「波」(日本てんかん協会発行)2003.6月号より抜粋

はじめに
 みなさんすでにご存知だとは思いますが、昨年(2002年)6月1日付けで、「道路交通法」が改正になりました。
 これに伴い、大きく三つの規定の整備が行われました。
T、免許証の更新を受ける方の負担を軽減するための規定の整備
U、運転者対策の推進を図るための規定の整備
V、その他交通の安全と円滑を進めるための規定の整備 です。
 その中には、免許証の有効期限の延長や、免許証の更新期間の延長(誕生日前後1ヶ月間に)、悪質・危険な運転者 に対する対策を強化するための規定の整備(違反行為に対する罰則の強化)、高齢者の保護等に関する規定の整備、身 体障害者標識の表示(クローバーマーク)などがあります。
 ここで、一番注目したいのは、Uの中に、障害者に係る免許の欠格事由の廃止等という項目が、入っていることです。

障害者に係る免許の欠格事由の廃止等とは
 これまでは、「てんかん」という診断名がついていると、すべての人が一律に免許を取得できないという、絶対的 欠格事由だったものが、免許を受けようとする人一人ひとりについて、自動車等の安全な運転に支障があるかどうか を個別に判断する、相対的欠格事由へと変わったことです。
 つまりは、条件がそろえば、てんかんがあっても、運転免許が取得できるようになったのです。
 ただ、権利が発生すれば、それに伴う義務も生じます。この改正規定をキチンと把握し、正当な手続きを踏んで、 免許を取得し、安全運転を心がけてほしいものです。
 ここにいたるまでは、長い道のりがありました。これは、「波」の中でも何度も取り上げていますが、てんかん協 会としててんかん学会とも連携し、さまざまな働きかけをしてきた成果です。この成果を無にしないよう、心がけた いものです。

どんな人が免許を取れるの?
てんかんと一言でいっても、その症状は一人ひとりさまざまです。ではどのような人が今回の改正で免許取得可能 になったのでしょうか?
1.過去5年以内に発作がなく、今後発作が起こるおそれがない人
2.過去2年以内に発作がなく、今後○年程度であれば、発作が起こるおそれがない人
3.医師が2年間経過観察をし、発作が睡眠中に限っておこり、今後症状の悪化のおそれがない人
などです。(詳しくは表1参照)
どの場合においても、医師の診断書が必要になりますので、自分が条件に合い、免許を取得したいと考える場合に は、主治医にその旨申し出てください。

●改正後この一年、協会本部にも、当事者、家族、医師、関係者などから、このことで多くの質問が寄せられました 。そこでいっそう理解を深めてもらおうということで、再度「特集」を組みました。
全国的にはさまざまな事例が発生していることと思いますが、ひとつひとつ丁寧に解決していくことが大切になり ます。そうした積み重ねがさらにこの法律を改善させていくことにつながっていくのです。

免許取得に関する相談窓口
 免許を取得しようとした場合、すべての人が、試験を受けることはできますが、自動車等の安全な運転に支障を及ぼすおそれがある人の場合、免許が取得できないこともあります。免許を取得できるか否か等の詳しいご相談は、
各都道府県警察本部、運転免許センター
にお問い合わせください。

表1 一定の病気に係る免許の可否等の運用基準(てんかん関係抜粋)
2. てんかん (令第33条の2の3第2項第1号関係)
(1) 以下のいずれかの場合には拒否等は行わない。
ア 発作が過去5年以内に起こったことがなく、医師が「今後、発作が起こるおそれがない」旨の診断を行った場合
イ 発作が過去2年以内に起こったことがなく、医師が「今後、x年程度であれば、発作が起こるおそれがない」旨の診断を行った場合
ウ 医師が、1年間の経過観察の後「発作が意識障害及び運動障害を伴わない単純部分発作に限られ、今後、症状の悪化のおそれがない」旨の診断を行った場合
エ 医師が、2年間の経過観察の後「発作が睡眠中に限って起こり、今後、症状の悪化のおそれがない」旨の診断を行った場合
(2) 医師が、「6月以内に上記(1)に該当すると診断できることが見込まれる」旨の診断を行った場合には、6月の保留又は停止とする。(医師の診断を踏まえて、6月より短期間の保留・停止期間で足りると認められる場合には、 当該期間を保留・停止期間として設定する。)
保留・停止期間中に適性検査の受検又は診断書の提出の命令を発出し、
<1>適正検査結果又は診断結果が上記(1)の内容である場合には拒否等は行わない。
<2>「結果的にいまだ上記(1)に該当すると診断することはできないが、それは期間中に○○といった特殊な事情があ ったためで、さらに6月以内に上記(1)に該当すると診断できることが見込まれる」旨の内容である場合にはさらに 6月の保留又は停止とする。(医師の診断を踏まえて、6月より短期間の保留・停止期間で足りると認められる場合 には、当該期間を保留・停止期間として設定する。)
<3>その他の場合には拒否又は取り消しとする。
(3)その他の場合には拒否又は取り消しとする。
(4)上記(1)イに該当する場合については、一定期間(x年)後に臨時適性検査を行うこととする。
(5)なお、日本てんかん学会は、現時点では、てんかんに係る発作が、投薬なしで過去5年間なく、今後も再発のお それがない場合を除き、通常は、大型免許及び第二種免許の適性はないとの見解を有しているので、これに該当する 者がこれら免許の申請又は更新の申請を行った場合には、上記(2)及び(3)の処分の対象とならない場合であっても当 該見解を説明の上、当面、免許申請・更新申請に係る再考を勧めるとともに、申請取消しの制度の活用を慫慂するこ ととする。
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