おかしな医師たち(2) 未婚の男は精神疾患!

 3月23日のヨミドクターに「高2の2割『抑うつ傾向』」との記事が載った。北海道教委の調査だが、釈然としない思いを抱いた人もいるのではないか。


 調査は2011年7~8月、札幌市を除く道内の公立学校から80校を無作為に抽出、小学3、5年生、中学2年生、高校2年生の児童・生徒計3735人を対象に(抑うつ状態などの簡易判定を)実施した。「抑うつ傾向にある」と判定された割合は全体で12・4%で、小学生の2学年は約4%だったが、中学生では13・3%、高校2年生では19・4%に上り、年齢とともに高くなる傾向があった。高校2年生で「抑うつ傾向」と判定されたうち、4・2%が「重度うつ」とされた。


 思春期に発症する精神疾患は少なくない。学校での対人関係の悩みが、引きこもりのきっかけになるケースも目立つ。子どもの心に目を向けて、適切な支援を行うことは大切だ。だが、思春期は様々なことに悩む時期でもある。将来の夢を描きにくい昨今、高校2年生の2割が鬱々としているのはむしろ当然で、多くは、より成長するための一時的な落ち込みだろう。それをあたかも、病気の予備軍であるかのように扱うのはいかがなものか。現代の若者は、悩むことさえ許されないのか。

 人間であれば、あって当然の悩みや不安、落ち込みまでも、病的、あるいは病気の前兆と捕らえて投薬する風潮が強まっている。その先に、薬漬け社会が見え隠れする。

 「社会不安障害(社交不安障害)は完治します! 薬で完治します!」

 社交不安障害の治療をテーマに、製薬会社が主催したマスコミ向けセミナーで、講師を務めたクリニック院長はそう連呼した。この「薬」とは、SSRI(抗うつ薬)を指す。2009年10月、SSRIのパキシルが社交不安障害の治療にも使えるようになったことを受けて、院長が臨床での使用経験をマスコミに披露したのだ。

 社交不安障害は、人前で話をしたり、人と食事をしたりする時に、強い不安や恐怖に駆られる病気だ。「恥をかくのではないか」という不安が大きくなり、手足の震え、動悸、赤面、尿意などの症状が現れる。このような状況を避けようとして、日常生活に支障を来たすこともある。だが、過度の緊張で失敗することは誰にでもあるため、過剰な診断や投薬の恐れが懸念されている。

 SSRIが社交不安障害に効く仕組みは解明されていないが、脳の扁桃体などに作用して、不安感の暴走を抑える働きがあると考えられている。ただ、薬はあくまで対症療法で、完治のためには人前で場数を踏み、自信をつけることが欠かせない。その過程で、認知行動療法や森田療法などの精神療法が効果を上げることも多い。

 セミナーでは、この院長の暴走が続いた。

「なかなか結婚できない男性は、社交不安障害の可能性が高い」

「受験で緊張する学生は、試験前にぜひ薬を飲んで欲しい」

 一体、何百万人を患者にするつもりなのだろうか。集まった記者たちは唖然とし、厳しい質問を浴びせた。

「精神科医が薬を使い過ぎることに批判が高まっている。どう思うか」

「この薬の効果は、偽薬とあまり差がないように見える」(偽薬とは、小麦粉などでできた薬効のないニセ薬のこと。薬を飲むという行為だけで安心する人もいるため、偽薬でも本物の薬並みの効果が現れることがある)

 それでも院長は「薬が効きます。完治します」と繰り返すばかりだった。

 SSRIは様々な副作用が報告されている。若い人が服用すると、感情の高ぶりや自殺企図などの恐れもあることは以前ふれた。試験前に安易に飲むような薬では、決してない。

 「試験は緊張してあたり前」「周りもみんな緊張している」「失敗は成功のもと」。受験生に必要なのは、薬よりもまず、そうした当たり前の助言だろう。

 突然、病気の疑いをかけられた「結婚できない男たち」のことも忘れてはならない。彼らの気持ちを、ここで代弁させていただこう。

「大きなお世話だ!」


 統合失調症の誤診やうつ病の過剰診断、尋常ではない多剤大量投薬、セカンドオピニオンを求めると怒り出す医師、患者の突然死や自殺の多発……。様々な問題が噴出する精神医療に、社会の厳しい目が向けられている。このコラムでは、紙面で取り上げ切れなかった話題により深く切り込み、精神医療の改善の道を探る。

 「精神医療ルネサンス」は、医療情報部の佐藤光展記者が担当しています。
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2012年3月27日 読売新聞)

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