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応用生命化学専攻 生物化学研究室
研究室入室・受験を希望するかたは必ずラボ訪問をしてください
最近の話題
・研究室保管の初代教授鈴木梅太郎先生縁品サンプルが第三回化学遺産に認定される 2012.3.26
・卒業生の仲川君が帰国凱旋ホームカミングセミナー&飲み会 2012.3.6
・昆虫の嗅覚トランスダクションの論争に決着をつけた論文がPLoS Oneに掲載されました。2011.3.5
・研究室メンバーが執筆貢献した「化学受容の科学ー匂い・味・フェロモン」が発刊 2012.2.17
・吉川君が平成23年度先端生命科学専攻博士論文特別奨励賞および研究科長賞を受賞 2012.2.15
・Piali Sengupta博士, Stephen Liberles博士が来訪 2011.11.7
・Vosshall博士が来日して共同研究論文を仕上げました 2011.8.22-25
・高校生が研究室に来訪して実験体験しました 2011.8.2, 8.4
・匂いと疾病の総説論文がJBに掲載されました。2011.7.20
・昆虫の味覚受容体の機能解析の論文がPNASに掲載されました。2011.6.28
国際会議での学生やポスドクのポスター発表
学生やポスドクの活躍(シンポジウム口頭発表・受賞など)
社会活動(日本科学未来館オープンラボ、五感学校「かおりの道」、サイエンスアゴラ)
ラボが「NHK極める!」で紹介される
ラボが「NHKサイエンスゼロ」で紹介される
「おもしろ研究室」で紹介される
ラボメンバーがサイエンスチャネル「におい」、「フェロモン」にTV出演
ポスドク・テクニシャン・大学院生の募集
研究室沿革
明治26年(1893年)、帝国大学に農科大学が設置され、農芸化学科が創設された。そのときに化学第一講座、化学第二講座、地質学・土壌学講座の三つの講座が発足したが、生物化学研究室の起源は、化学第二講座である。すなわち、植物栄養肥料学研究室(化学第一)と土壌圏科学研室(地質学・土壌学)とともに、農芸化学科の発足当時からある伝統のある研究室である。発足当時は、外国人教師オスカル・ロイブ氏が職務を担当した。ロイブ氏は、農業化学理論の祖ともいわれるリービヒに強く影響をうけた学者であり、生物化学研究室の基礎を築いたと思われる。そして、明治40年(1907年)9月に、鈴木梅太郎先生が初代担当教授として就任し、生理化学とともに、日本で最初と言われている生物化学の講義を担当した。鈴木先生は、リービヒの学問系統に属するエミール・フィッシャーに師事し、後に、オリザニン(ビタミンB1)を発見するなど、酵素、タンパク質、脂肪、ビタミンなど広範囲の革新的研究を展開した。昭和9年(1934年)12月、鈴木梅太郎先生の婿養子である鈴木文助先生が第二代の教授となり、引き続き、油脂、炭水化物、タンパク質などの研究を推進する。昭和19年(1944年)4月、後藤格次教授が引き継ぎ、アルカロイドの研究を推進する。このとき、後藤先生は昭和21年まで化学第四講座(有機化学研究室の前身)の教授を兼任している。昭和24年(1949年)11月、佐橋佳一教授が担当となり、オリザニンの構造決定、ビタミン類の合成研究などをする。佐橋教授も、一部の期間、化学第四講座を兼任分担する。昭和29年(1954年)9月、舟橋三郎教授が担当となり、植物脂質生化学の研究をおこなった。このときに、農芸化学科は、研究教育体制の見直しをおこない、十講座制となり、化学第二講座は、生物化学講座に名称変更となった。(注:大正11年に生物化学講座が発足し、「生物化学」という名称が使われているが、これは現在の食糧化学研究室の前身であり、昭和29年の10講座制のときに、食糧化学講座と名称が変更となっている。)昭和44年(1969年)10月、中村道徳教授が就任し、リン酸関係の分析・定量法などの開発をおこない、酵素化学研究を展開した。昭和53年(1978年)7月に、丸山芳治教授が担当となり、細菌の生育、酵素、硝酸還元系、窒素固定、さらには環境生化学など広範囲の研究をおこなった。平成2年(1990年)6月に、小野寺一清教授が担当となり、ヒト染色体21番上の遺伝子の構造と機能に関する研究をおこなった。平成7年(1995年)3月に、福井泰久教授が担当となり、ホスファチジルイノシトール3−キナーゼを中心とした細胞内リン脂質シグナリングに関する研究を行い、細胞のがん化や形態変化・運動の分子機構の研究へと展開した。平成21年(2009年)12月に、鈴木梅太郎先生が就任して以来102年、東原和成が第十代教授となる。
(参考:東京大学百年史、岡本昭一郎(元農学部事務庶務係長)手記、熊澤喜久雄名誉教授私信)
研究テーマ(担当教員:東原和成)
人間社会では嗅覚は五感のなかでなくてもいい感覚として位置づけられていますが、実は、多くの生物では、匂いやフェロモンといった化学物質の情報を介して、食物の認知、個体の認識、生殖活動の誘発など生存に不可欠な行動や習性が制御されています。私達は、分子生物学、神経科学、細胞生理学、生化学など、領域横断的な考え方と技術を駆使して、匂いやフェロモンの嗅覚感覚の仕組みを、末梢の受容体から高次脳まで、分子レベル、細胞レベル、個体レベルで解明しようとしています。そして、種内あるいは種をこえた生物間におけるコミュニケーションの手段としての化学受容のメカニズムを明らかにし、いかにして、外界からのシグナルを生物が受容・認知し、行動・本能が制御されているかにせまりたいと思っています。
具体的には、7回膜貫通型受容体ファミリーに属する嗅覚受容体の構造的・機能的側面を解析し、匂いや香りの受容機構・脱感作機構・情報伝達機構を解析しています。嗅覚受容体の機能解析に関しては、私達のグループは世界的にも先端をいっているので、その経験を生かして、最近では、構造的にも面白いまた生理的効果のある匂いや香りの受容体にも注目しています。フェロモンに関しては、マウスを対象に、まずはフェロモン分子を見つけて同定することから始めて、その受容体の同定と機能解析をおこなっています。特に、第二の嗅覚とも言われている鋤鼻器官に発現するフェロモン受容体をターゲットとしています。標的とする匂いやフェロモンの受容体がわかれば、様々な遺伝子改変マウスを作製することによって、脳へ情報が伝達される神経ネットワークの可視化を試みます。また精巣に発現する嗅覚受容体の機能解析もおこなっています。ショウジョウバエやカイコにおける匂いやフェロモンの受容体の機能解析をする過程で、新規の情報伝達機構が明らかになってきています。研究室で使われている生物は、マウス、カイコ、ショウジョウバエ、カエル、植物、魚など多岐にわたり、一方で、大腸菌を使った分子生物学、培養細胞を使ったバイオアッセイなどが行われています。
嗅覚基礎研究は、脳神経研究の対象モデルとして注目されているだけでなく、原始から変化していない感覚系として行動、生態、進化との関わり、そして、香りやフェロモンが生体に与える影響として内分泌系との関連を考慮すると、極めて学際的学問領域であるところに魅力があります。また、数十万といった匂い物質の認識といった究極の分子認識として薬理学的にも情報の宝庫です。フェロモンによる個体間コミュニケーションは、パートナーの認識、生殖隔離および種の保存にとって大切な現象で、フェロモンの研究は、性の進化ひいてはヒトへの進化を理解するうえで大変重要な視点です。
私達人間も、食事をして美味しいと感じるのは、味覚だけでなく嗅覚(風味)が重要であることは忘れがちです。五感をバランスよく使えるのは人間だけです。私達の嗅覚基礎研究は、おいしさを追求する食品科学への応用、そして、臨床における嗅診や、社会の安心・安全のための嗅覚センサーの開発にもつながる、実用的な側面をたくさんもっています。我々人間も、健全な生活をおくるためには、バランスのとれた五感を維持することが大切です。社会から失われつつある「におい」の風景を大事にし、厳密に設計された嗅覚空間を構築することはポストゲノム時代の感性科学のひとつであると考えています。コンピューター情報社会のなか、だんだん失われていく人と人とのコミュニケーションの必要性を再認識し、食生活を豊かにすることを目標に、人類の幸せにつながるような新しい嗅覚の利用法を模索していきたいと思っています。
研究の手法
- 生化学:タンパク質の精製・同定・発現、ウエスタンブロッティング、免疫沈降、タンパク質のリン酸化、タンパク質相互作用の解析
- 分子生物学・遺伝子工学:遺伝子ライブラリーの作製、遺伝子クローニング(各種発現クローニング:培養細胞、アフリカツメガエル卵母細胞)、PCR、ノーザン・サザン解析、遺伝子構造及び転写産物の解析、遺伝子発現ベクターの構築、部位特異的変異の導入、in situ hybridization、遺伝子改変マウス(トランスジェニック、ノックイン、ノックアウト)の作製と機能解析
- 細胞生物学:培養細胞での遺伝子発現解析、単一細胞内カルシウムイオン濃度変化測定、蛍光ラベルを用いた細胞内シグナルの可視化、神経細胞などの初代培養、免疫組織染色
- 天然物化学:低分子有機化合物の精製、ペプチド性活性物質の精製、生理活性物質の構造決定
- 電気生理学:アフリカツメガエル卵母細胞、パッチクランプ、嗅電図
メンバー紹介(2012年4月1日現在)
- 教授 東原 和成
- 准教授 舘川 宏之
- 助教 伊原 さよ子
- 特任研究員 白須 未香
- 特任研究員 吉川 敬一
- 学振PD 堀尾 奈央
- 博士4年 阿部 峻之 (先端生命科学専攻)
- 博士4年 高井 佳基 (応用生命化学専攻)
- 博士3年 永嶌 鮎美 (応用生命化学専攻)
- 博士2年 角田 麻衣 (応用生命化学専攻)
- 修士2年 奥村 祐哉 (応用生命化学専攻)
- 修士2年 小坂田拓哉 (応用生命化学専攻)
- 修士2年 安原 雅恵 (応用生命化学専攻)
- 修士1年 上杉 冬美 (応用生命化学専攻)
- 修士1年 金古 昇士 (応用生命化学専攻)
- 修士1年 沼尻 祐未 (応用生命化学専攻)
- 修士1年 森永 敏史 (応用生命化学専攻)
- 修士1年 平澤 佑啓 (応用生命化学専攻)
- 学部4年 賈 一丁 (生命化学・工学専修)
- 学部4年 中村 毅 (生命化学・工学専修)
- 学部4年 弓田 智裕 (生命化学・工学専修)
- 学部4年 笠 智志 (生命化学・工学専修)
- 秘書 多田 利江子
研究室の生活・方針
Q、朝何時ごろから夜何時ごろまで実験をやっていますか?
会社みたいな何時から何時までという時間設定はしていません。各個人個人が研究者としての自覚をもって行動してほしいと願っているからです。ただ、目標として朝10時には来るようにということになっています。それは、ややもすると夜型へ移行していくのが常ですが、一方で大学が独立法人化して安全面でも厳しくなったので、できるだけ周りにひとがいる時間帯に実験をするよう配慮するためです。ちなみに、早い人は朝8時くらいから実験をして、遅い人は終電、あるいは夜中までやっているという感じです。
Q、土曜と日曜は休みですか?
とくに休みにはしていませんが、休みたい人を無理矢理来させることはしません。もちろん土曜日にも日曜日にもラボにきて実験している人もいます。実験科学の世界はどうしても実験量で差がでます。実験をやらないひとで成果がでたのを見たことはありません。そういう意味では、サイエンスをやろうというひとで、土曜や日曜が休みですか?という質問をもつようなひとはあまり歓迎できません。
Q、ラボのセミナーは週何回くらいありますか?
毎週一回朝9時から、研究室セミナーをやっています。ジャーナル論文紹介と研究プログレス報告を午前中いっぱい行います。特徴的なものとして、隔週で全員が最近読んだ論文を数分で説明する「一分ジャーナル紹介」をしています。
Q、研究テーマの決定および指導はどのように行われますか?
原則として一人一人がテーマをもって研究をすすめています。ただし、修士ででるひとと博士までいくひととではテーマ設定が多少違ってくることが多いです。研究室には、ポスドクやドクターの学生など技術的な指導をしてくれる人はたくさんいますし、実験データをつきあわせてディスカッションを積極的にしています。テーマは、こちらのテーマと学生の希望とを照らし合わせた上で決めます。研究室のテーマの方向性を知るためにも、研究室の雰囲気を感じるためにも、入室を希望する学生は必ず受験のまえに研究室見学をするようにしてください。
Q、研究室の設備、お金の回り具合はどうですか?
これから数年間皆さんが思いきって研究を遂行できるだけの予算と環境は整っています。また、そのような状態が続くように、研究費の取得に走り回っています。
Q、イベントはありますか?
年一回の研究室旅行のほか、忘年会、追いコン、新歓は当然のごとくあります。外部の先生方にセミナーをしてもらったときは、夜飲みにでて、いろいろな話を聞ける場を設定しています。また、論文がでればお祝いの食事(飲み)、修士・博士の学位を取得したときもお祝いの食事をして、嗅覚研究の実践(風味礼賛)をしています。農学部のソフトボール大会にも毎季参加していて、試合ごとに夜は飲み会をやります。楽しむときは思いっきり楽しみ、実験するときは思いっきり実験をするといったけじめのある研究生活を目指しています。
Q、外国人留学生はいますか?
現在、留学生はいません。しかし、2007年は、アメリカからの大学院短期留学生を受け入れたり、ロックフェラー大の研究室との合同セミナーをしたり、国際的意識は常にもてるような環境です。また、良い結果がでれば積極的に国際学会にポスター発表などをするように奨励しています。はじめての学会が国内学会ではなくて国際学会(特に、AChemS国際嗅味覚学会)であるということは日常茶飯事です。また、論文作成時の英語教育はもとより、世界で通用する研究者を育てるための努力は惜しんでいません。
Q、学生の就職状況は?
博士を取得して卒業した卒業生の行き先は、ドイツマックスプランク研究所、米国ロックフェラー大学留学(海外学振員)、米国カリフォルニア大学アーバイン校留学、米国カリフォルニア大学サンジエゴ校留学(海外学振員)、スウェーデンカロリンスカ研究所留学、米国Stowers Institute留学、理研博士研究員、第一三共製薬、花王など、海外留学、国内研究員、会社就職と様々です。修士で卒業した学生は、行き先は多種多様です。ただ、研究者になろうという意志があって大学院に入学したのですから、博士を目指してできるところまでがんばってみることを推奨しています。また、修士ででるとしても、修士課程で立派な仕事をして卒業した学生は社会でもみな活躍していますので、是非修士2年間で一仕事するように奨励しています。
Q、学生の金銭的なサポートは?
2008年までは、21世紀COEプログラムで博士課程大学院生のほとんどが毎月の金銭的サポートを受けてました。2009年度からはグローバルCOEプログラムが走り始めたのでサポートは継続されます。また、2008年度から東京大学では、博士課程大学院生に対する授業料免除枠を増やし経済的サポートをはじめましたので、博士課程の多くの学生がサポートされます。詳しくは東京大学のHPをごらんください。また、学術振興会の特別研究員DCは毎年何人か授与されています。
問い合せ・研究室の場所
我々の研究に興味をもって、大学院修士課程・博士課程で我々と一緒に研究をしたいと希望する人は、
以下の連絡先までお問いあわせください。
なお、当研究室を希望して大学院を受験するひとは、必ず、研究室を訪問してください。
<連絡先>
〒113-8657文京区弥生1ー1ー1
東京大学 大学院農学生命科学研究科 応用生命化学専攻
生物化学研究室(農学部2号館203号室) 教授 東原 和成
03-5841-5109 (Tel), 03-5841-8024 (fax)
ktouhara@ mail.ecc.u-tokyo.ac.jp
<連絡先>
〒113-8657文京区弥生1ー1ー1
東京大学 大学院農学生命科学研究科 応用生命化学専攻
生物化学研究室(農学部2号館204号室) 准教授 舘川 宏之
03-5841-5113 (Tel), 03-5841-8024 (fax)
atachi@ mail.ecc.u-tokyo.ac.jp
<交通>
農学部2号館(弥生キャンパス)の地図(A map of campus)
キャンパスへの行き方(How to get?)