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月刊チャージャー10月号
【調査】城内実議員に聞いてみました
「人権救済機関」設置の何が心配? |
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今、民主党が国会提出を目指している人権侵害救済機関を設置する法案。人権を守るための機関を作るのはいいことじゃないかと思いきや、逆に「人権が危うくなる」と反対する意見が根強いという。いったいどういうこと? 自民党時代からこの法案に反対を続ける城内実衆議院議員に聞いてみた。 |
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権力が強力過ぎる人権救済機関への心配
2002年には当時の自公政権が『人権擁護法案』として国会に提出。でも、報道による人権侵害が規制(特別救済の対象)されたことから、大手マスコミが猛反対して翌年廃案に追い込まれた。2005年には、マスコミを特別救済の対象から外した上で自民党が再提出を試みるが、今度は自民党内で反対が噴出、法案提出は見送られた。なお、同年、民主党が対案(内容はほぼ同じ)である『人権侵害救済法案』を国会提出するが、郵政解散で審議未了となり廃案になった。 |
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人権救済機関を設置して、人権侵害を受けた人からの申し立てを受け、捜査令状がなくても、出頭の命令や立ち入り検査ができるとするこの法案。そもそも、当初から賛否両論が渦巻いていた。そして今年5月、当時の江田五月法務大臣が同様の法案の国会提出を示唆。またぞろ、法案成立への動きが活発化しているのだが……。
自民党所属の頃からこの法案に根強く反対していた城内実議員。2005年には、平沼赳夫議員らとともに、自民党内で先頭に立って法案提出阻止に尽力した。郵政解散への造反で離党し落選したが、浪人中も法案への懸念について様々な形で情報発信を継続。無所属として返り咲きを果たしてからは、法務委員会で何度も反対の質問を繰り返している。ネット上でも「この法案が成立すると日本人の人権がヤバい」と主張する意見が目立つのだが、いったい、それはどういうことか。城内氏に聞いてみた。 |
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この法案で作ろうとしている「人権委員会(人権救済機関)」は『三条委員会』(国家行政組織法の第三条に基づいて設置される行政機関)といって、内閣の指揮監督権から独立した機関であり、強大な権限が与えられます。公正取引委員会や公害等調整委員会、運輸安全委員会などと同じ権限を持つといえば、わかりやすいでしょう。人権委員会が設置された場合、たとえば、誰かが「人権を侵害された」と訴えれば、委員会は加害者とされる人を独自に調査することができるようになるのです。
ところが、この「人権侵害」の定義が曖昧です。同じことをAさんに言われたら平気でも、Bさんに言われたら人権侵害と感じることがありますよね。人権侵害の内容を明確に規定するわけではないので、悪意ある人が「人権委員会に訴えるぞ。それがイヤなら慰謝料をよこせ」といったように、合法的な恐喝にさえ使えるようになってしまいかねません。
私は北朝鮮による拉致問題解決にも取り組んでいます。でも、北朝鮮は拉致問題は解決済みだと主張していますから、拉致を問題にすること自体が在日の方々に対する人権侵害だと申し立てられる可能性も否定できません。人権委員会による裁定の結果がどうあれ、摘発されたことがニュースになって、政治家にとっては死活問題になってしまうこともないとはいいきれないのです。
もちろん、人権を守ることは大切です。でも、児童虐待や高齢者への虐待などの人権侵犯事案の99%は現行の法制度で解決できています。たとえば、ネズミを退治するには殺鼠剤、ゴキブリにはゴキブリホイホイを使えばいいでしょ。つまり、個別法をもっと充実させれば十分であるし、より行き届いた対処もできるのではないでしょうか。でも、この法案は全部まとめて火炎放射器で焼き尽くそうとするようなものといえるかもしれません。社会通念上は問題のないことにまで人権侵害の烙印を押して、誰かを社会的に抹殺することが可能な、すさんだ社会になってしまう可能性があるのです。
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城内実●きうちみのる
1965年生まれ。東京大学教養学部卒業後に外務省へ入り、2002年退官。2003年静岡7区から衆議院に初当選。2005年の郵政解散で安倍晋三氏らの説得を振り切って造反。自民党を離党して刺客を送られ惜敗。しかし、2009年には大差の勝利で再当選した「信念」の人。
『城内みのるオフィシャルサイト』(外部リンク) |
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