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2012年4月17日(火)付

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原発政策―首相は方向性を示せ

政府の原発政策に対する国民の信頼感が、ますます低下している。野田政権は、脱原発依存という政策の大きな方向性を、明確に打ち出す必要がある。朝日新聞の[記事全文]

100日裁判員―「4年目」へ足元固めを

男性3人の連続不審死をめぐる裁判員裁判で、さいたま地裁は殺人などの罪に問われた女性被告に死刑を言いわたした。裁判員の選任から判決までちょうど100日。審理と評議にこれま[記事全文]

原発政策―首相は方向性を示せ

 政府の原発政策に対する国民の信頼感が、ますます低下している。

 野田政権は、脱原発依存という政策の大きな方向性を、明確に打ち出す必要がある。

 朝日新聞の世論調査では、原発の再稼働にあたって野田政権が示した暫定的な安全基準について、「信頼しない」と答えた人が70%にのぼった。この夏の電力需給見通しでは66%が「信用しない」と答えた。

 担当大臣である枝野経済産業相の発言が、ぶれているとの批判も強まっている。

 国会で「原発依存度を最大限引き下げるのは明確な方針」と答弁していたのに、大飯原発をめぐる福井県知事との会談では「(原発を)今後とも引き続き重要な電源として活用することが必要だ」と説明する。

 再稼働に理解を求める役回りだったとはいえ、これまで枝野氏が示してきた原発への慎重な姿勢にまで疑いの目が向けられている。

 こうした不信の根っこにあるのは、野田政権下で打ち出される政策の多くが原発を動かすためのもので、肝心の減らし方に関する具体策がいっこうに見えてこないという事実だ。

 野田首相は就任当時、老朽化した原発を閉めていく考えを示した。国会審議が遅れているものの、稼働から40年以上たつ原発を廃炉にする新しい規制法案もすでに提出している。

 ならば、まず稼働から40年以上の原発は、過去に運転延長を認めていても再稼働させないと明言する。そのうえで全国の電力需給を精査し、不要な原発の基数や候補を割り出していくことを約束する。それが筋だ。

 ところが、そうした中長期の方針を示さないまま、夏場の対策として大飯原発を動かす必要性を説く。これでは、国民の納得を得られるはずがない。

 原発への依存度を減らすシナリオについては、現在、関係閣僚で構成するエネルギー・環境会議のもとで検討が進められている。野田首相としては、それに予断を与えたくないのかもしれない。

 しかし、これだけ焦点化している国の重要政策について、担当相に任せきりでだんまりを決め込んでいては、国民の不信をかうばかりではないか。

 原発・エネルギー政策の改革は、国民が大きな方向感を共有しながら冷静に議論し、長期的に取り組まないと実現しない。このままでは、議論の土俵さえできない恐れがある。

 野田さん、メッセージを発すべき時だ。

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100日裁判員―「4年目」へ足元固めを

 男性3人の連続不審死をめぐる裁判員裁判で、さいたま地裁は殺人などの罪に問われた女性被告に死刑を言いわたした。

 裁判員の選任から判決までちょうど100日。審理と評議にこれまで最長の期間をあてた。

 究極の刑罰として死刑を定めているこの国の法制度のもと、きびしい務めを果たし、ひとつの結論を導きだした労苦に、改めて敬意を表したい。

 自白はなく、犯行の様子を見た人もいない。検察側は、現場にのこった練炭とコンロの販売ルートや、被害者と被告の交際状況などの事実を積みあげ、犯人はほかに考えられないと主張した。この立証活動が裁判員に受けいれられた。

 起訴内容が多いとき、事件ごとに別々の裁判員が有罪無罪を判断する審理方式もある。だが今回、地裁は事件の性質にてらして一括審理を選んだ。

 裁判員の荷は重くなったが、妥当な判断だった。裁判官、検察官、弁護人が話しあい、最も適したやり方をとることの大切さが再確認されたといえる。

 09年5月の裁判員法の施行以来、ことし1月までに2万5千を超す人が、裁判員あるいは補充裁判員を経験した。

 このうち昨年裁判員になった人を対象に最高裁がおこなったアンケートでは、95%が「よい経験と感じた」と答えている。自由記載欄にも「自分と世の中とのかかわりを考えるいい機会になった」といった前向きな感想が数多く見られる。

 専門家まかせにせず、責任と負担を引きうけ、主権者として司法権の行使にかかわる。この体験は民主主義を深化させ、社会を強くすると期待されたが、人々の意識はそうした方向に進んでいると評価できよう。

 一方で、審理の内容を「理解しやすかった」と答えた人が60%を割りこみ、説明のわかりやすさの点で、弁護人が検察官に依然として水をあけられているなど気になる点もある。

 なぜこうした評価になっているのか。当初の緊張を忘れ、悪い意味で市民参加になれてきてはいないか。検証を進め、改善の道を探ってもらいたい。

 法律に「施行3年後に必要に応じて見直す」とあるのを受けて、様々な立場から法改正を視野に入れた提案が出ている。

 経験を踏まえ、意見をかわすのはむろん大切だ。だが今は、制度論をたたかわせるよりも、運用面の改善と充実にこそ多くの力を傾けるべきだろう。

 ほころびの予兆を見逃さず、足元を固める。それが4年目以降のさらなる進展につながる。

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