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郡山市内で放射線被曝に関する健康相談会、父母が日ごろ声に出せない悩みを吐露

東洋経済オンライン 4月16日(月)18時9分配信

 福島第一原発事故から1年以上が経過した現在も高い放射線量が続く福島県郡山市――。子どもの健康に不安を抱く父母を対象とした医師による健康相談会が4月14日、市内で開催され、23組の親子が相談に訪れた。

 「こども健康相談会in郡山」を主催したのは、市民グループの「安全・安心・アクションin郡山」(スリーエー郡山)。中学3年生の息子を持つ同グループメンバーの根本淑栄さんは、「放射能に関する疑問や誰にも相談できない悩みを持っている方々に参加してもらいたいとの思いから相談会を開催した」と語った。
 
 相談会では「子どもたちを放射能から守る全国小児科医ネットワーク」に加入する医師が健康相談を担当したほか、全国各地で福島県在住の親子の一時避難(保養)を支援しているボランティア団体がブースを構えて子どもの受け入れについて相談に応じた。

 健康相談会に訪れた父母からは、多くの切実な相談が寄せられた。

 取材に応じた郡山市内で小学5年と3年の子どもを持つ母親は、「放射性物質を不用意に体内に取り込まないための注意点について詳しく説明を聞くことができた」と語った。小学2年生の男の子の母親も「参加してよかった。ふだん、かかりつけ医から聞くことのできない放射能のリスクに関する情報を得ることができた」と話した。

 多くの母親が口にしたのが、市内で進められている“安全キャンペーン”への疑念だった。前出の小学校2年生男子の母親はかかりつけ医に他県への避難の必要性について尋ねたところ、「避難すると家族がバラバラになるなどデメリットのほうが大きい。交通事故で亡くなった人もいる。郡山に住み続けたほうがいい」という説明を受けたという。

 別の母親は「放射線量が依然として高いのに、きちんとした説明もないまま小中学校での屋外活動を1日3時間に制限するルールが突然撤廃されたことに憤りを感じる」と語った。

 郡山市ではホールボディカウンターによる内部被曝検査の実施が遅れていることや、子どもを対象とした甲状腺検査の通知も来ていないことも判明。相談会では、「測定もしてもらっていないのに(被曝線量は低いので)安心してくださいと言われても納得できない」(前出の2人の子どもを持つ母親)という声も上がった。

 郡山市では2012年度予算で300億円を上回る除染対策費用が盛り込まれた一方で、小中学校にはエアコン設置の計画すらない。「夏も長そで長ズボンで勉強を強いられる子どもの実情を知ってほしい」と、相談会に訪れた母親の1人は語気を強めた。

 健康相談を担当した柳沢裕子医師(千葉県の民間病院に勤務)は、「郡山では、年間に一般人が許容される追加被曝線量の1ミリシーベルトをはるかに超える放射線が存在続けている。それにもかかわらず、放射能問題に終止符を打とうとしている郡山市の姿勢に疑念を感じた」と東洋経済記者に語った。
 
 別の医師からは、「個別相談では3時間ルールの撤廃や運動会を屋外で行うことへの不安の声が多かった」との報告があった。

(岡田広行 =東洋経済オンライン)

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最終更新:4月16日(月)18時9分

東洋経済オンライン

 

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