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政治
【主張】ぶれる原発発言 経産相としては不適切だ
日本のエネルギーと産業が深刻な危機に瀕(ひん)している。この2つの課題に責任を持つべき枝野幸男経済産業相の原発再稼働に対する発言がぶれ続け、一向に収まる気配が見えないからである。
枝野氏は関西電力大飯原子力発電所3、4号機を再稼働させるため地元の福井県を訪問し、西川一誠知事らに強く理解と協力を要請した。にもかかわらず、翌15日に徳島市内で講演し、国内の原発稼働が「5月6日から一瞬ゼロになる」「一直線に原発を減らしていく」などと語った。
福井県に隣接する滋賀県や京都府などは原発再稼働に慎重な姿勢だ。現状では、残る1基の北海道電力泊3号機が定期検査で止まる5月5日までに大飯原発の再稼働は間に合わないかもしれない。
現状認識を示したにせよ、経産相として思慮と適切さを欠いた問題発言だ。枝野氏は14日、福井県で記者団に「脱原発依存の方針は変わらない」とも宣言した。
直前の西川知事との会談では、「引き続き重要な電源として活用することが必要」と原子力発電を高く位置づけているのだから、極めて不可解な対応だ。
これでは再稼働へ同意を求められる立地自治体のおおい町や福井県は不信の念を深めるだけだ。昨年、国の要請に応じて九州電力玄海原発の再稼働に同意直後、はしごを外されて苦境に立たされた地元・佐賀県などの前例がある。
今夏の電力不足回避の重要な鍵を握る福井県などの判断に、より多くの時間がかかる流れとなってしまったのは遺憾である。国民にとっても重要な国のエネルギー政策が五里霧中の状態だ。
枝野氏は経産相として電力の安定供給に責任がある。燃料費が兆円単位でかさみ、CO2を排出する火力発電に依存して、脱原発を称揚する立場にはないはずだ。
枝野氏の言動は「二股膏薬(こうやく)」と言わざるを得ない。民主党内にも原発利用に慎重・賛成の両論があるが、党内議論を収拾のつかない形で国のエネルギー政策に持ち込むのは不適切だ。その道理をわきまえられないなら、野田佳彦首相は更迭を視野に入れるべきだ。
東日本大震災の国難からの立ち直りを図るのはこれからだ。このままでは、日本経済の弱体化に拍車がかかる。復興に力を入れるべき大事な時期に、必要不可欠な原発で国論を割る愚は避けたい。
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