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	椎名桂子

“努力の人”高橋の優勝　新体操新時代の足音
第４回全日本ユースチャンピオンシップ

2006年05月23日

左から２位の庄司七瀬、１位の高橋麻理子、３位の山本千尋【榊原嘉徳】

　新体操のユース世代（中３～高３）の頂点を競う「第４回全日本ユースチャンピオンシップ」が５月１９～２１日、代々木第一体育館で行われた。年々レベルアップしているこの大会から、将来の日本を代表する選手が輩出されることは間違いない。

　今大会を制したのは、高校３年生で最後のチャンスをものにした高橋麻理子（飛行船新体操クラブ）だった。高橋は、昨年の世界選手権で日本チームの一員として健闘、団体種目別のリボンで６位という好成績に貢献した選手である。しかし、ジュニア時代から個人としての「優勝」には縁遠かった高橋だけに、今回の優勝には自分でも「びっくりしました」と言う。世界選手権という大舞台を経験したことで付けた自信、さらにその経験を通して自分の目指す新体操がはっきりと見えてきたことが、高橋をひと回り成長させ優勝に導いたようだ。

やや不調だった今大会の庄司。しかし、得意のピボットでは会場から「おおー」とどよめきがあがった【榊原嘉徳】

　昨年度優勝者で今回２位の庄司七瀬（山形ＲＧ）も、「納得のいく演技ができなかった」と悔しそうな表情を見せたが、この苦杯をさらに上のレベルへ到達するための「産みの苦しみ」としてくれるに違いない。昨年の優勝に満足せず、さらなる高みを目指す姿勢の見えた今回の演技には今後への期待が感じられた。

　３位には山本千尋（イオン）が入った。イオンには日本を代表する横地愛、中村八千代という選手がいるため、なかなか大舞台に出ていくチャンスが巡ってこなかったが、その間に着々と付けてきた力があふれ出てきたような鮮やかさが今回の山本にはあった。
　「去年まで、私にとって試合は緊張するものでしかなかった。でも、今はもっと見てほしい、観客にどう見せたいかを考えるようになりました」
　山本の気持ちの変化は確実に見るものに伝わっていた。

高橋の優勝が意味するもの

「１つの演技にテーマがあり、作品になっている。そんな演技ができるようになりたい」と語った高橋【榊原嘉徳】

　高橋、山本をはじめとして、今回のユースチャンピオンシップは、ジュニア時代には「スター」というには少しおとなしい印象のあった選手たちが脚光を浴びた大会だった。「素質」だけでなく、人一倍の「努力」を続けてきた者が勝つという極めてスポーツらしい結果が出た試合だったとも言える。特に優勝した高橋は昨年は個人の試合には一切出場せず団体に懸けてきた選手。
　「世界では団体のメンバーを経験してから個人でもトップになる選手が多い。日本でもそうなってほしいと思っているので、高橋選手の優勝はとてもうれしいし、意味がある」と山崎浩子強化本部長は晴れやかな表情で語った。

■逸材そろう日本のユース層

１５歳とは思えぬ大人びた雰囲気をもつ穴久保だが、素顔はシャイでおとなしい。そのギャップが魅力でもある【榊原嘉徳】

　ほかにも、未完成ながら「将来は世界をうかがえるのでは」と期待される逸材も多い。５位の田中琴乃（松永Ｒ．Ｇ）はまだ中３ながらも素晴らしいスタイルと抜群のスター性で急上昇中の選手。１０位の穴久保璃子（イオン）は、日本人離れした雰囲気があり、気品が感じられる。１１位の中津裕美（エンジェルＲＧカガワ日中）は、独特な世界観のある演技を見せる個性的な選手。１３位の寺澤由真（町田ＲＧ）は、身体能力、演技構成とも十分に世界に通用するレベルと海外の審判たちの間でも評価が高い。

　努力を重ね、才能を花開かせた高橋や山本、実力にさらに磨きをかける庄司、そして将来を嘱望されるほかのユース選手たちの存在。
　低迷が続いていた日本の新体操だが、確実に新しい時代は近づいている。

＜了＞

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