北朝鮮・朝鮮労働党の金正恩(キム・ジョンウン)第1書記は、故・金日成(キム・イルソン)主席の100回目の誕生日に当たる15日、金日成広場で執り行われた軍事パレードに姿を現し、大衆の前で初めて演説を行った。金正恩氏は10万人以上の群衆を前に、およそ20分間にわたり演説文を読み上げた。これについて、韓国政府の関係者は「大衆演説を嫌った故・金正日(キム・ジョンイル)総書記よりも、毎年新年の辞を読み上げた金日成主席を思い起こさせるものだった」とコメントしている。
しかし、金正恩時代の幕開けを告げるこの演説の内容は、徹底して「金正日式先軍政治の継承」に重点が置かれていた。金正恩氏は演説で国家発展へのビジョンには一切触れず「敵が原子爆弾でわれわれを脅迫・恐喝してきた時代は過ぎ去った。第1にも第2にも第に3も、朝鮮人民軍隊をあらゆる方面で強化していかなければならない」と述べた。さらに、平和よりも「国の自主権の方が重要」と明言。演説に使われた主な語彙(ごい)も「人民軍(25回)」「軍隊(10回)」「先軍(9回)」「軍事(7回)」「銃隊(5回)」など好戦的な表現が多く「人民生活(4回)」「経済(3回)」「産業(2回)」など国民生活と関連する表現をはるかに上回っていた。かつて北朝鮮政府高官だった脱北者C氏は「金日成主席の真似をしながら、演説の内容は金正日時代を継承するものだった」と評した。
金正恩式の「銃隊重視」精神は、今回の軍事パレードで最初に登場した大陸間弾道ミサイル(ICBM)クラスの新型長距離弾道ミサイルに最もよく表われていた。また金正恩氏は演説を開始する際「英勇な朝鮮人民軍陸海空軍と戦略ロケット軍の将兵たち」という表現を使ったが、「戦略ロケット軍の将兵」という言葉は、今回初めて登場したものだ。
韓国政府の安全保障担当部処の当局者は「(今回の閲兵式で)北朝鮮は陸海空軍とは別に、核とミサイルを専門に取り扱う戦略ロケット軍という第4の軍を最近になって新たに立ち上げたことを示唆している」「金正恩氏は核とミサイル開発に、金総書記以上に一層力を入れる可能性が高い」などと述べた。