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卓上四季

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呪いの時代

ネットの世界では、いまこの時も、あからさまに他者を非難し、中傷する言葉が飛び交っている▼相手が傷つくさまや評価が下がることに快感を覚え、その感覚の虜(とりこ)になっている人々の群れ―。思想家内田樹(たつる)さんが近著「呪いの時代」(新潮社)で、<肥大化した自尊感情>を抑えきれずに「呪いの言葉」を吐く社会の病理について説いている▼「ほんとうの自分はこんなところで、こんな連中と、こんな仕事をしているようなレベルの人間ではない」。そんな、妄想的な自己評価を平然と公言する人が増えた。「呪い」の流布は自尊感情の充足を過剰に求め始めたことによるというのが、同書の見立てだ▼おととい一審死刑判決となった「連続不審死事件」。被告は無罪を主張しており、3人の男性殺害事実の有無は上級審で争われることになろう。が、公判で被告自らが語った「虚飾の生活」は、ネット環境のこれほどの発達なしにはあり得なかったのではなかろうか▼40〜80代の男性たちは「婚活サイト」で、30代の被告とつながった。道内から上京した被告のブログにはブランド品が彩る“セレブな日常”がつづられた。「呪い」の源泉と同質の「肥大化した自己」を見る▼では、「呪い」を解除する方法は―。ぱっとしない「正味の自分」を受け入れて、他者にも「祝福」の言葉を贈ろう。内田さんの提言をかみしめる。2012・4・15

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16日

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