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2012年4月16日(月)付

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日英武器開発―平和主義の理念を守れ

野田首相と英国のキャメロン首相が先週、日英両国で武器などの防衛装備品の共同開発・生産を始めることで合意した。戦後日本の防衛政策の柱だった武器輸出三原則が、ずるずると骨抜[記事全文]

米大統領選―内向きの争いでは困る

米大統領選の野党・共和党の候補者が、ミット・ロムニー前マサチューセッツ州知事に固まった。民主党のバラク・オバマ大統領と争う11月の本選では、景気回復と雇用の改善が最大の争点だが、米国に内向き[記事全文]

日英武器開発―平和主義の理念を守れ

 野田首相と英国のキャメロン首相が先週、日英両国で武器などの防衛装備品の共同開発・生産を始めることで合意した。

 戦後日本の防衛政策の柱だった武器輸出三原則が、ずるずると骨抜きになっていく現状に強い危機感を抱く。

 私たちは昨年末に野田政権が米国以外との共同開発もできるように三原則をなし崩し的に緩和したときから、こうした事態を懸念してきた。

 ここで改めて、日英両政府に対し、最低限、次の二つの項目の順守を求める。

 一つめは、第三国への移転に明確な歯止めをかけることだ。これは三原則緩和の前提であり、ゆるがせにはできない。

 英国は米、ロ、独、仏とともに五大武器輸出国の一角だ。スウェーデンのストックホルム国際平和研究所によると、この五カ国で世界の武器輸出の75%を占める。

 キャメロン首相は、今回のアジア歴訪に軍需企業の幹部を同行させている。英メディアによれば、日本の次に訪れたインドネシアへの武器売り込みにも意欲を示している。

 一緒に来日した企業の中には、かつて外国の王族や政府高官に法外な賄賂を渡し、その国には不必要な武器を売ったという疑惑が持たれたところも含まれている。

 英国のNGO「反武器取引キャンペーン」は、「インドネシアはすでに、国民の福祉に使うべきカネを使ってかなりの兵器を英国から購入している。これ以上増やすべきではない」と批判している。

 日本がいよいよ踏み込もうとしている武器の世界には、闇に包まれた部分も多い。だからこそ、日本政府が同意しない第三国への移転を確実に止められる手立てが要る。

 二つめは、殺傷力のある武器の共同開発にはかかわってはならないという点だ。

 日本は当面、化学防護服といった装備品から共同開発に入ることを検討しているという。

 その後も、地雷除去や不発弾の処理など、紛争後の平和構築に資する分野に最先端の技術を生かすべきだ。

 それこそが、平和主義の理念にかなう。

 武器のハイテク化、高額化に伴い、共同開発は世界の潮流になりつつある。日本の防衛産業も提携の幅を広げたいという事情もあろう。

 だが、コスト削減といった目先の利益にとらわれ、武器輸出三原則の精神をなおざりにする対応は絶対に許されない。

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米大統領選―内向きの争いでは困る

 米大統領選の野党・共和党の候補者が、ミット・ロムニー前マサチューセッツ州知事に固まった。民主党のバラク・オバマ大統領と争う11月の本選では、景気回復と雇用の改善が最大の争点だが、米国に内向き傾向が強いのは気がかりだ。

 共和党の候補者選びで目についたのが、財政面での「小さな政府」の主張や、宗教的な価値観を強め、穏健派との亀裂を深めた保守派の姿だ。

 イラクとアフガニスタンの二つの戦争を戦う一方、景気低迷が生活を直撃する。

 その息苦しさが、政府のお金で経済の立て直しを目指す「大きな政府」路線のオバマ氏への反発となり、2年前の中間選挙では、財政削減や減税を求める保守草の根運動「ティーパーティー(茶会)」が大きな影響力をふるった。

 今回、保守の訴えは大きな流れにはならなかった。

 ロムニー氏は、茶会や宗教的価値を重んじるキリスト教福音派といった保守派に嫌われた。

 州知事時代の医療保険制度改革が、オバマ政権の手本になったと批判を浴びた。妊娠中絶や同性婚を容認した過去や、保守派から異端視されるモルモン教徒であることも響いた。

 保守派の受け皿になったのが、候補者選びが始まる前は支持率が低かったリック・サントラム元上院議員だ。

 「家族の価値」を前面に出したサントラム氏は、宗教的な保守に支持されて善戦し、2位につけた。だが、財政的にはロムニー氏も「小さな政府」を主張しており、茶会などには温度差があった。支持の広がりには限界があり、撤退を決めた。

 ロムニー氏は今後、保守派との亀裂を修復し、その支持を束ねられるかが、かぎになる。だが、保守派に配慮して主張を先鋭化させれば、穏健派や無党派層が離れる恐れもある。

 オバマ氏も盤石ではない。財政赤字に苦しみ、失業率は依然高い。ガソリン代の値上がりも不安材料だ。

 米国では昨秋、貧富の格差を批判する「ウォール街占拠運動」が盛り上がった。オバマ氏は富裕層増税を訴えて争点を明確にしようとしているが、もう一度、未来への可能性を感じさせることができるか。

 ともに弱みを抱えた2人の争いだが、目を向けるべきは国内だけではない。

 欧州危機や中東民主化など、世界は激動している。国際社会に大きな影響を与える国としての責任を示せる資質が、米国の指導者には求められる。

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