焦点:信頼不在の大飯原発再稼働、政権の官僚依存が露呈
電力危機を契機に、ピークカットに対応するニュービジネスが生まれる機運も高まっている。東京電力(9501.T: 株価, ニュース, レポート)がこのほどピーク需要抑制に向けたビジネスプランを募集したところ、6件が採用された。その中に、エナリス(東京都足立区)という見慣れない企業が顔を出す。同社は多数の需要家のピーク抑制を行う、2004年設立のベンチャー企業だが、日立製作所(6501.T: 株価, ニュース, レポート)、ダイキン工業(6367.T: 株価, ニュース, レポート)の大手2社と組んだ提案が東電に採用された。
こうした事業環境の整備に動いてきたエネルギーコンサル会社、クリーングリーンパートナーズ代表の福井エドワード氏は、節電分を集める事業者(デマンド・レスポンス・アグリゲーター)という業種の役割について、「50キロワット―500キロワット(小口高圧)の需要家が東京電力管内で20万件くらいあるが、そこの節電が手付かずだ。オフィスなどのこれら需要家が全てエアコンの出力を2割程度下げるだけで、東電管内のピーク需要(昨年夏で5000万キロワット弱)のうち1000万キロワット程度を抑制できると試算している」と解説する。
<官僚の考えに染まった>
福井氏は「危機や制約のあるところに創意工夫やイノベーションが生まれて新しい産業が育つ」と指摘するが、野田政権にはこうした声が届かなかったようだ。枝野経産相は「節電すれば需給ギャップは解消されるという声にも耳を傾けたが、細部まで確信できる議論には出会ってない」と語った。エネルギー分野で構造変革に踏み出すには長いリードタイムが必要となるが、新しい試みに否定的な態度こそ、再生可能エネルギーの本格拡大や、国際パイプラインの敷設を通じた安価な天然ガス調達など現在の危機に対応する上で必要な環境を整える芽を摘み取ってきた。
ISEPの飯田所長は、再稼働が必要との野田政権の判断について、「(政府や国会の)事故調査委員会の結果も出ていない、(原子力)規制庁が立ち上がっていないし、どんな規制庁になるか分かっていないし、地元の安全対策も出来ていない。安全性以前に政治的な手続きがあまりに破廉恥だ」と批判。こうした状況に陥ったことについて飯田氏は「民主党は政治主導といいながら政治主導のやり方を全くしなかった。原子力村や経産省の古い考えを持った人に取り囲まれ、官僚の全体の枠組み、考え方に染まってしまう」と分析する。
菅直人前首相のもとで内閣官房参与として原発事故の対応に当たった田坂広志氏は原発の再稼働の条件について「政府が国民に信頼されていること」(2月の講演)を挙げた。今の政府が国民から信頼を得ているかどうかについて枝野経産相は、「昨年3月11日にそれまで起こらないと言われていた事故が起こったのだから、国民の皆さんが簡単に政府を信頼してくれるとは思っていない。理解をいただけるかどうか最大限努力したい」と語った。
(ロイターニュース、浜田健太郎)
© Thomson Reuters 2012 All rights reserved.
この記事に対する皆さんのコメントをお寄せください
漂流の漁船、米沿岸警備隊が撃沈
米沿岸警備隊は東日本大震災の津波で流され漂流していた日本漁船に対し、機関砲による撃沈処理を行った。
スライドショー | ビデオ