愛知県産のウズラから鳥インフルエンザが検出された問題で、ウズラ卵の安全性に関する風評被害によって生産農家が苦しんでいます。風評被害はなぜ起こるのか、そしてその対策は、など調べてみました。
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風評被害はなぜ起きるのか
2009年3月19日
愛知県ウズラ卵の風評被害では
今回のウズラ・鳥インフルエンザに関しては、国の食品安全委員会が「ウズラの卵は安全」との宣言を行いました。それにもかかわらず、学校給食などでウズラの卵を食材に使うのを控える動きが相次ぎ、ウズラ卵は怖いというイメージが広がってしまいました。当初は10分の1まで売り上げが落ち込み、現在でも通常の3分の1程度しか出荷できていないといいます。 学校給食でウズラ卵の使用を中止したのは、現場の学校の判断ではありませんでした。対応は市の教育委員会の決定によるもので、市によって判断が分かれました。このため、ウズラ卵が使用中止になった市では、子どもから親にそのことが伝わり、購買行動や風評となって被害が拡大したのではないかと思われます。使用を中止した市の教育委員会は、「安全なことは理解しながらも、すべての保護者が安心するとは限らない」ということを理由に挙げています。
スーパーの対応も影響
ウズラ卵の販売継続について、スーパーなど流通の対応も分かれました。撤去したスーパーでは、「商品を置いておくとお客さまからクレームが来る。そのクレームに対応するのが大変」というのが本音のようです。 学校給食への使用を中止した一部の市の教育委員会、販売を見合わせた一部のスーパーマーケットなどが、風評被害の拡大に手を貸してしまったカタチですが、当事者には自分たちが風評被害を広めてしまったという自覚は、あまりなかったように思われます。むしろ、自分たちが消費者や父兄からクレームを受けた時、どうするかということで頭がいっぱいで、その決定が及ぼす影響など考える余裕がなかったのではないでしょうか。
クレーム社会の恐ろしさ
モンスターペアレント、クレーマー、などという言葉が一般化しているように、現代は"クレームをつけた者勝ち"のような風潮が見受けられます。その中で企業や役所の対応者が面倒を怖れ、そのまま要求に従ってしまう、またはクレームの発生を予測し、問題が起きないように先回りしてしまうというような対応をとると、今回のような事態が起こります。ウズラ生産農家は「学校給食のせいで安全なものまで安全ではないように思われてしまった」と憤っています。 何かことあるごとに繰り返される風評被害ですが、面白がってあおり立てる人たちは別にして、責任ある立場にいる人は、自分の決定がどのような結果を引き起こすのか考え、クレームに立ち向かう勇気を持つ必要があるのではないでしょうか。
ネットで風評被害対策を行う会社
インターネットの掲示板では、何かことあるごとに事件をあおり立ててことを大きくしようとする傾向(祭りと呼ばれる)があります。企業としてはこの"祭り"に巻き込まれないことが重要なのですが、そのための対策を行う会社も現れています。現状では人力によるチェックが主体で、コストも相当かかりそうですが、ネット上の書き込みをチェックする技術が発展すればかなりの効率アップが見込めるでしょう。 風評被害に発展しそうな書き込みを検知して、素速く対応するための技術開発も進んでいます。インターネットに書き込まれるブログは1日60万件以上といわれており、これまでは、そのスピードに対応できるチェックはできませんでした。ネット上のチェックは、これまではウェブ上の記事を収集→インデックスを生成→風評パターンを検知→風評記事かどうかを判定、というもので、時間のかかるものだったからです。新しい技術では、インデックス生成などは行わずにテキストをすぐにスキャンして風評パターンにマッチしているかどうか判断し、マッチしたものに対してアラート(警告)を出すというもので、分析のためのアルゴリズム(ある特定の問題を解いたり、課題を解決したりするための計算手順や処理手順)も高度になっているといいます。この技術が発展すれば企業や自治体などが風評被害に備える対応力も、さらに向上することになるでしょう。