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どうも89Rです。
いろいろと掛け持ちしてますが,一ヶ月に一度のペースで書きたいと思います。
どうぞよろしくお願いします。
ご意見ご感想があればよろしくお願いします。
プロローグ
「車両を盾にしろ!!窓や屋上に注意!」


 高機動車から飛び降りながら声の限り叫んだ。乾いた大地をコンバットブーツで踏みつけ、素早く高機動車のエンジン部分を背にする。即応の防御態勢を取りながら、どうして自分は中東の殺風景な市街地で殺されそうになっているのだろうと考えた。

 陸上自衛隊の中央即応集団隷下の、特殊作戦群の小隊長を務めていた。特殊作戦群は陸自における唯一無二の特殊部隊で、最精鋭だ。そんな最強の特殊作戦群の小隊長ともあろう者が、こんな異国の地で民兵の集中砲火を浴びているのには複雑な事情があった。

 世界の警察を主張する天下の米軍様の後塵を拝して、戦火でズタズタに引き裂かれた中東某国にも自衛隊が派遣されることとなった。人道支援だ後方援助だなんだと言っているが、これは実質海外派兵だ。今も民兵による米軍襲撃が絶えないこの国に、自衛隊が派遣されるのは大問題だった。戦車や戦闘機まで動員している米軍に対して、紙のような装甲の車両と軽火器だけで自衛隊が乗り込むなど、自殺行為もいいところだ。

 そう言って上官に愚痴をこぼしたすると、その上官に言われたものだ。ならちょっとお前が警備補佐としていってこいよ、と。耳を疑ったが、それからはあっという間だった。元々保険として特殊作戦群からも、警備の助言を与える人員の派遣が検討されていたのだ。マスコミの目があるので部隊全体で行くことは出来なかったが、ひとりくらいは誤魔化せるだろうということで、見事に貧乏くじを引く羽目になったわけだった。口は災いのもととは、よく言ったものである。

 そういうわけで、警備補佐として中東某国某所の大地を踏んだ。これまでの数週間は何事もなく過ごして来たが、遂に今日災厄が訪れた。市内にある発電所の復旧作業に駆り出されたのだ。市内を軽車両だけで進むことに断固反対したが、命令でごり押しされた。どうも自衛隊が人道支援として活躍しているという、いいアピールになるとどこかの間抜けが考えたらしい。


「弾幕をはれ!」


 89式自動小銃の安全装置を解除、『ア』より『レ』へとひねる。特殊作戦群では89式自動小銃ではなく米軍のM4カービンだが、今回は国産の89式自動小銃を持たされていた。89式小銃も悪くはないが、実戦で鍛えられたM4カービンと比べるとどこか心もとない。だが、今は我慢するしかなかった。

 また民兵が激しく撃ちかけて来た。盾にしている車両にに弾丸が命中し、鋭い金属音が響く。ぼさぼさの黒髪が、舞いあがった砂のせいで、悲惨なことになっている。


「通信員,本部に至急連絡しろ!!救護要請を至急送れと,そう伝えろ!」


 隣にいる無線機を背負った隊員に、大声で命じた。その陸自隊員は顔を青くしていたが、すぐに無線機に向かって命じられたことを喚き始めた。だが,顔をさらに青くしながら顔を向けて言った。


「自力脱出せよ、と。救援は出せないそうです」


「無線機を寄こせ!俺が話す」


 無線の受話器をひったくると、そこへ向かって怒鳴りつけるように話した。


「こちら第一小隊マルヒト,奇襲を受け行動不能!!多数の負傷者あり至急救援を!」


 受話器の向こうから、派遣隊の上官から返答が来る。


「我々から救援は出せない。現在付近の米軍に連絡を取っている。米軍の増援が来るまで自力で・・・」


「どいつもこいつも糞野郎だ!」


 最後まで聞かずに受話器を放り出した。置かれた状況は、まさしく危機的だった。用意周到な待ち伏せを受けているのに、自力でなんとかしろとは大層なご命令だった。

 民兵による待ち伏せは、路肩爆弾(IED)で始まった。先頭を走っていた軽装甲機動車が路上の不審物を発見し、それを避けたが罠だった。回避した先に周到に偽装された本命の仕掛け爆弾があり、それで先頭の軽装甲機動車は吹き飛ばされた。

 おかげで車列は停止、後退しようとしたら最後尾のトラックをRPG-7で撃破された。RPG-7は、構造単純、取扱簡便、低製造単価、M72 LAWやAT4などの使い捨ての物を除けば対戦車兵器では比較的軽量(それでも発射器と弾頭で10kg.と、やはり重いものであるが)、しかもそのわりに高い威力を発揮するため、アサルトライフルと同じく発展途上国の軍隊やゲリラなどにより幅広く使用されている。少なくとも40か国が正規に採用しており、様々なモデルが9か国以上で生産されている。特にこの兵器によってゲリラやテロリストが容易に戦車をも破壊しうる火力を持つ様になった事が、いわゆる低強度紛争 (LIC) の活性化の要因の一つとなっている。紛争地帯ではよく見かけられる代物だ。

 前も後ろも塞がれたところで、周囲の建物から民兵の猛烈な銃撃が開始された。四方八方から銃火を浴びて、陸自隊員はその場に釘づけになった。上から撃ちおろされた銃弾が土煙を立てて着弾し、車両の装甲板に当たった銃弾が甲高い音を立てて跳ねまわる。

「牽制しろ!とにかく銃火が見える場所に撃ちまくれ!」

 命じながら、銃口を建物の窓に向けた。AKの銃火はまるで花火のようで、昼間の今でもよく見える。銃火が瞬いた瞬間、その窓に対して短連射で五発か六発ほど銃弾を叩き込んでやった。薄暗い窓の奥で、民兵の血しぶきがはじけ飛ぶのがかすかに見えたが、気にする様子も無く次の敵へと銃口を移動させていた。

 実戦はこれがはじめてではない。
基本的に平和的な日本国民の前では口が裂けても言えないが、特殊作戦群は米軍とともに何度か非合法の作戦を行っている。そこで何度も敵を殺している、叩き上げのプロの兵士だ。米軍からうちに来ないかとスカウトされたこともあるぐらいだ。

 屋上でAKを乱射していた民兵の頭を5.56mm×45弾でぶち抜きながら、それでもこんなひどい状況ははじめてだと思った。特殊作戦群の優秀な装備と潤沢な支援の下で、緻密に練られた作戦を遂行していたときとは大違いだ。強大な米軍のサポートだってあった。あれが近所の裏山へのピクニックなら、これはエベレストへの登山だ。

 ――それでも俺はプロだ。昨日,今日銃を手にした素人の民兵どもに,その差をたっぷりと教えてやる。

 近くの路地裏から飛び出して来た民兵に89式自動小銃の連射を浴びせかけ、蜂の巣にしてやりながら強く思った。耳をつんざく銃声と民兵の断末魔の叫び声が重なる。空になった弾倉を外し、素早く再装填リロードして射撃を再開する。


「おい、お前何をやってるんだ!さっさと撃て馬鹿野郎,死にたいのか!」


「し、死ぬ・・・本当に死んじまう。・・・・・・あんまりだ……誰か助け……」


 車両に隠れて震えている隊員を見つけると、胸倉を掴んで引き起こして怒鳴りつけた。が、その隊員は震えて泣きごとを言うばかだ。実戦経験の無い自衛官の見せる弱さだ。日頃いかに訓練されていようと、実戦は訓練と違う。
戦争に行きたいなんて思う奴は戦争に行ったことがない奴だ。一度戦争に行けばいやというほどわかる。


「黙れこの野郎,撃たなきゃ殺されるぞ!戦友を死なせるな応戦しろ!!」


「ハッ……はい!」


 平手打ちを喰らわせ、自分自身それにこれまで寝食を共にしてきた仲間がいま危険にさらされている現実を突きつけてやる事で、ようやくその隊員は恐慌状態から離脱した。鍛えられた軍人の眼には独特の迫力がある。そんな奴に殺意を込めて睨まれれば、誰しも言うことに従いたくなるというものだ。

 半ば脅迫めいた叱咤激励を受けたその隊員は、手にした89式自動小銃を構えると、銃火が見える場所へと手当たり次第に撃ち込みはじめる。撃っている間は恐怖を忘れることができる。


 それにひとまず満足すると、現状の把握に努めた。車列は前後の炎上した車両のせいで移動不可能。下車した隊員はようやく組織だった応戦をはじめ、反撃の銃弾が次々と敵の民兵を撃ち倒している。所詮民兵は民兵、厳しく訓練された軍人の反撃をまともに浴びれば、ただではすまない。このままここで防戦し続け、米軍の救援を待てば確実に助かるだろう。

 そう思い、ほんの一瞬だけ油断した瞬間だった。今まで誰もいなかった少し離れた建物の屋上に、複数の民兵が姿を現した。そいつらはAKではなく、RPK軽機関銃を持っていた。7.62mm弾が装填された75発入りの弾倉を取りつけたRPKが火を噴き、弾雨を浴びせかけて来た。奥にはRPGの射手も見える。

 ひき肉にされる前に、車両の陰に転がり込んだ。しかし、激しい弾幕を前に身動きを封じられる。目と右手の89式自動小銃だけを出して、フルオートで屋上の民兵に銃弾を放つが、有効弾をなかなか与えられない。相手の銃撃が激しく、しっかりとした照準をつけられないせいだ。

 そうこうしているうちに、恐ろしい事実に気がついた。車列の中には、発電所への燃料補給のための小型のタンク車がいた。7.62mm.の鉄鋼弾にも耐えられる程度の装甲板で囲まれてはいたが、RPG-7で狙われてはひとたまりもない。あれが爆発したら辺り一面火の海で、間違いなく全滅だ。


「援護しろ!3時から5時方向の屋上に射撃を集中しろ,スリーカウント!!」


「ワン!」


「ツー!」


隊員たちが89式自動小銃を車両に身を隠しながら構える。


「スリー!!」


 新しい弾倉を89式自動小銃に叩き込みながら、そう叫び飛び出した。燃料補給車目掛けて全力疾走しながら、屋上を狙って小銃を連射する。硝煙で真喩色しんちゅうしょくの空薬莢を地面にまき散らしながら、撃ち続け走り抜ける。その結果として、RPKを撃ちまくっていたひとりの民兵が5.56mm弾を浴びてひっくり返った。

 一瞬だけ銃火が弱まった隙に、燃料補給車の運転席に乗り込んだ。エンジンはかかったままだったので、急いでバックをする。その瞬間だった。RPGが発射されたのは。


「がっ……!」


 白煙を引きながら迫ったRPGの弾頭は、急速でバックをしたために間一髪で燃料補給車には直撃せず、運転席のすぐ前の地面をえぐった。しかし、高速で飛び散った破片のひとつがフロントガラスを突き破り胸を急襲した。ガラスの割れる音が響いた直後、胸に耐え難い痛みを感じて息が詰まった。
熱い鉄棒をつき刺されたような痛みだ。

 かすむ視界の中、それでも必死で燃料補給車を動かした。ハンドルを横にまわして、近くの建物の一階へと燃料補給車を突っ込ませた。扉と壁を破壊しながら燃料補給車は建物の一階に入り込み、RPGの範囲から逃れる。これでひとまずは大丈夫のはずだった。


「畜生……」


 シートを濡らしているのは自分の胸から流れ出ている大量の血液、左手は胸に突き刺さった熱い大きな破片を握っている。防弾衣は胸を襲ったRPGの鋭い破片を防ぎ切れなかったらしい。それでも右手は89式自動小銃のグリップをきつく握り締めていた。銃を手放すのは、死ぬときだけ。

 ――ああ、俺死ぬんだろうな。なんでこんなところで、俺死ぬんだろう。政治家のくだらない点数稼ぎにつきあって死ぬなんて、馬鹿みたいだ……。

 痛みはもう感じ無かった。ただゆっくりと視界が黒い霧に包まれていくかのようにかすんでいくだけ。何もかもが馬鹿らしかった。代々軍人を輩出している家に生まれ、自分も国民を守るのだと何も疑わずに信じて入隊し、そこで兵士としての才能が開花して特殊作戦群にまで入った。治安を守る兵士たれ、といわれ続けてきた。

 なのに、自分は嘘だらけの海外派遣で飛ばされ、どことも知れない場所で死ぬ羽目になっている。死ぬのは覚悟していたが、それは国民を守るために、あるいは国民のために死ぬ覚悟だった。こんな政治屋どもの茶番劇につきあって死ぬなど、認められなかった。まるで悪夢を見ているようだ。

 自分の死を認められなかったが、もちろん出血はとまらなかった。錯綜する銃声と悲鳴も、もう耳には入らない。かすんでいく視界だけが、その時のすべてだった。



 最期に見たのは右手で握りしめていたはずの89式自動小銃が足元に落下していく光景だった――銃を手放すのは、死ぬときだけ。







「ん・・・・・・夢か・・・」


藍坂あいざか(すばるは昔から見る夢に悩まされていた。

どこか遠い中東の土地で銃撃戦の末,胸に重傷をおい息絶える。そんな,演技でもない夢を昔から見続けている。その夢はとてもリアルだ。それに,昴は知らないはずの事もどうしてなのか記憶にあるのだ。例えば,銃火器の使い方,どの様に体を動かし相手を無力かするなど。

なぜ自分の知らないはずの記憶があるのか,初めは不思議に思う時期があったが現在ではその記憶,いや『知識』に救われた事があるので感謝はしている。

中学2年の時に,道を歩いていて知らない少女が高校生の集団にからまれていた。少女2人に高校生5人だ。誰が見ても中学生が止めに入ってかなうはずはない。周りの通行人も高校生に,ひと睨みされ目をそらす。


「あのーすいません」

突然声を掛けられ高校生がいっせいに振り返る。

「その子たちも困っていますし,そろそろ諦めたらどうですか?」


「あぁぁ! 何だてめー」


どうやら俺の言葉で不機嫌になってしまったようだ。めんどくさいな。


「てめー,中坊のくせに生意気だな」


「俺たちがお前をたたきなおしてやるよ。ちょっとこっちにこい」


昴は路地裏に連れ込まれた。先ほどからまれていた少女たちも一緒にだ。 高校生の方々は,どうやらいたい思いをしなければわからないらしい。早く終わらせるか。

自分の中でスイッチを切り替える。


路地裏には高校生が5人転がる結果になった。少女たちからは感謝されたが,俺は感謝されたくて助けたわけではない,ただ高校生が気にくわなかっただけだ。
そんな事もありこの『知識』は一応役にたっている。

高校に上がり,いよいよ高校生活が始まるんだと思っていた矢先に両親が事故にあい死んだ。残されたのは俺と妹だけだ。俺はどんな事をしても妹を守ると誓った。高校にかよいながらアルバイトをして生活費を稼いだ。幸い両親が残してくれたお金が残っていたが妹と2人で生活していくには足りない。

お金はいつかはなくなる。



目が覚める。だが,目の前にはいつもの天井ではない天井が広がっていた。
いかがでしたか?
主人公は前の記憶をいかしゲームに生き残れるか・・・・
お楽しみください。


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