gyoのSF界、島の土壌流亡
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南太平洋の小国ツバル。珊瑚礁の島で細長い環礁の両側は海です。国土の平均標高は1.5mです。温暖化で南極の氷などが解けて海面が上昇すれば水没の恐れがあると指摘されています。この国の人々が最も恐れるのは、高潮です。昨年3月の高潮は、過去最高の3.3mに達しました。島内は水浸しになりました。土壌の塩害も深刻になり、井戸水は辛くて飲めなくなり、タンクに雨水を蓄えて飲用にしています。また、畑も塩害でほとんど全滅し、食料は輸入と援助に頼っています。昔は白い砂浜が続く美しい島でした。それが次々と波に削られ、堤防で固められ、すっかり景色が変わってしまった。島民は島が沈むと恐れています。ツバル政府は昨年、水没の恐れが現実になったら、国ごと移住させてくれるよう、オーストラリア政府に頼みました。しかし、ツバルが沈むなら、シドニーの大部分も海の底だと苦笑し、取り合ってくれなかった。国連の気候変動に関する政府間パネル(IPCC)は、19世紀後半から現在までに海水面が10〜20cm上昇した。今世紀中には最大でさらに88cm上昇すると予測しています。ツバルで頻発する高潮も、海面上昇と関わりがあると思われます。しかし海面上昇のデーターは周期的な気候の変動を受けやすく、専門計器を使っても明確な変動数値が観測できません。温暖化は世界の合意と協力なしには食い止められません。そのために大国は義務を果たすべきです。満潮の時、海は家の5m先まで迫り、波が堤防にドシンと響きます。遠い南の島で危機は静かに進んでいると感じました。毎日新聞2002年1月7日より

毎年3月頃の高潮が、砂浜の砂を削り取ってしまう。昔はきれいな砂浜が広がっていた。砂浜になる前は、この砂浜はきっと植物が覆っていたのだろう。この植物たちが土をしっかり捕まえていたのだろう。しかし植物たちは高波による塩害で枯れてしまった。そして裸地になった地面の土は軽いので、波にさらわれた。比較的重い砂が残り、砂浜になった。この砂も3月頃の高潮により削られていった。今は高潮にさらわれない岩だけが残る海岸になっている。高潮は島の内部も襲い、植物に塩害を与え、枯らします。そして植物の保護がなくなった土は、波によって削られていきます。

ところで、もっと昔は、高潮もなく、波で砂浜が削られることもなかったのだろう。波は、ほとんどなかったのだろう。そして植物が全島を覆っていたのだろう。こんな状況を可能にした地球気象は、きっと、陸も海も植物群が覆っていたのだろう。

陸も海も植物が覆い、盛んに水蒸気を葉の表面などから空中へ放出していた。そして地球は厚い水蒸気の層で覆われていた。このため太陽光線は地球を厚く覆う雲により、遮られていた。そして地球表面の気温は、一年中、そして昼も夜も、数度に安定していた。湿度が高く、風がないため、すべての植物は順調に育っていた。高山地帯や極地は、氷点下の気温を維持していた。ここには莫大な量の氷が蓄積されていた。このため海面の水位は今より遙かに低かった。水蒸気はある高度以上には上れないため、氷の堆積量は一定していた。高山地帯や極地でも水蒸気量が高くて風もないため、生命活動の維持はたいていの動植物は十分にできた。海面でも、気温変化や風がないため、海流が全くなかった。このため、海水中の塩分は沈み、表層は真水に近かった。そして海の表面は浮き草が覆っていた。

地球に気温変化が現れたのは、人間という動物が火を使い、盛んに植物を焼き払い始めてからであった。当時の植物たちは、多量の水蒸気によって植物体がふやけるのを防ぐため、ヤニという油分を含んでいる物が多かった。このヤニは燃えやすく、人間という動物は次々に火をつけ、焼き払っていった。火を付けることの面白さと、火の消し方を知らない、人間という動物は、ついにサハラ砂漠という巨大な砂漠を作り上げた。人間という動物は、他の地方へ移動しても、植物を焼き払っていき、新たな砂漠を作っていった。

植物がない砂漠からは、空中へ水蒸気が供給されなくなり、雲がなくなった。雲がなくなった砂漠地帯は晴れ上がった。そして砂漠に太陽光線が直射し、地温を異常に上げ、上昇気流を発生させるようになった。上昇気流は、地球の自転による遠心力で赤道方向へ集められ、地表から上昇し地球の中心から離れることで東から西へ移動する。この上昇気流の流れが地表に風を起こした。

風は弱い植物をなぎ倒した。大きな気温変動は、生存できる動植物を制限した。風は気温差のある気団同士を衝突させて雨を降らせることで、空中の水蒸気を減少させた。雲がなくなり、直射日光が地温を上げて、これが気温を上げた。そして地球の気温は上昇し、極地や高地の氷は解け始めた。解けた水は海に流れ込み、海面は上昇を始めた。風は海面を吹き渡り、海水を引きずって海流を発生し、上下の海水を混合して下方にある塩分を海面に上昇させ、海面の淡水の塩分濃度を上昇させた。海面の浮き草は、高い塩分濃度に耐えられず全滅した。

人間という動物は今も、経済開発と称して、砂漠を拡大している。そして高潮はツバル諸島の植物群を完全に絶滅するだろう。人間という動物は、森林を切り倒し、農地や牧場、道路や工場、家屋などにしているが、地球環境の行き着く先を考えているのだろうか。砂漠を植林する面積は、森林破壊より遙かに少ないことを知っているのだろうか。砂漠化が進むとどうなるか知っているのだろうか。経済開発を求めるあまり、足下の環境破壊に気づかない振りをしているのでしょうか。

付録、化石
化石になるためには、地面に埋められなければなりません。地面に埋められる前に風化や腐敗などで分解されたら、化石にはなりません。大きな植物が完全に埋められるためには、かなり大きな土砂崩れがなければなりません。人間という動物が火を使い始めた頃は、もう大きな土砂崩れは起きなくなっていた。小さな土砂崩れに完全に埋まる小さな動植物しか化石として残らなくなっていた。土砂崩れで半分しか埋まらない大きな動植物は、腐敗して、化石にならなかった。だから人間という動物が生まれてからも、化石として残っていない巨大な恐竜やシダ植物がしばらく共存していた。

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