アジレント、63GHzと超広帯域なデジタル・オシロを発売
アジレント・テクノロジーは2012年4月11日、ハイエンド・デジタル・オシロスコープの新製品「Agilent DSOX/DSAX 90000Qシリーズ Infiniium」を発表した(ニュース・リリース)。周波数帯域幅が63GHz(2チャネル使用時)と極めて広いがの最大の特徴である。同年7月に出荷を開始する予定である。同社は、2010年4月に周波数帯域幅が32GHz(後に33GHzに修正)のデジタル・オシロスコープ「Agilent Infiniium 90000Xシリーズ」を発売しており(Tech-On!関連記事)、今回の製品はその上位機種と位置付ける。
同社代表取締役社長の梅島正明氏は、報道機関向け発表会で「90000Qシリーズの開発の背景には、通信やネットワークなどのさらなる高速化が進んでいる。例えば、最先端技術を使った搬送波の基本波周波数は14GHz/16GHzに達しており、その3次高調波である42GHz/48GHzの信号を観測できるオシロスコープが求められるようになってきた」と語った。今回の製品は、28Gビット/秒や32Gビット/秒の高速シリアル・データを扱い、40G/100Gビット/秒のデータ伝送速度に対応する光通信機器や、16Gビット/秒のPCI Express Gen4を組み込むシステムの開発に向ける。
前シリーズを強化
90000Qシリーズの開発では、90000Xシリーズに用いたハードウエアを流用しながら、改良を加えることで周波数帯域幅を約2倍に広げた。アナログ・フロントエンドはInP(インジウムリン)化合物半導体のヘテロ・バイポーラICによるマルチチップ・モジュールで、90000Xシリーズと同じものである。
90000Xシリーズとの違いは、アクイジョン・ボードの枚数だ。90000Xシリーズでは33GHz×1チャネルのアクイジョン・ボードを2個搭載し、2チャネルの33GHz入力に対応していた。今回、90000Qシリーズでは33GHz×1チャネルのアクイジョン・ボードを4個搭載している。さらに、アクイジョン・ボードをインタリーブ動作させ、63GHz×2チャネルのデータ収集サブシステムとして動かすことを可能にした。
10機種を用意
90000Qシリーズは10機種からなる。周波数帯域幅が20GHz、25GHz、33GHz、50GHz、63GHzと異なる5機種のオシロスコープ「DSOX」と、それぞれの機種に解析機能(ジッター解析機能とシリアルデータ解析機能)を追加した「DSAX」5機種である。周波数帯域幅が50GHzと63GHzの機種については、最大帯域幅が得られるのは同時使用チャネル数が2チャネル以下の場合。3〜4チャネル同時使用時は、いずれも33GHzとなる。
主な特性は、周波数帯域幅が63GHzの機種「DSOX96204Q」で以下の通り。サンプリング速度は、同時使用チャネル数が2チャネル以下の場合に最大160Gサンプル/秒、3〜4チャネル同時使用時に最大80Gサンプル/秒。波形メモリの容量は標準20Mポイント。オプションで最大2Gポイントまで拡張可能だ。ジッタフロアは75fs(フェムト秒)未満で「業界最小」(アジレント・テクノロジー)という。価格は5217万8856円である(発表日時点での税抜き参考価格)。