第3話:新しい名前
由香里は勇樹の顔を見て、大変おどろいた。
勇樹の顔は、妹の由紀よりも女の子らしい顔をしていた。おなじ双子なのに、化粧をしただけでこうも顔がかわると、由香里はおもわなかった。
「ちょっとまっててね、すぐもどるから、勇ちゃん」
由香里はいそいで、奥の部屋へはいっていった。
勇樹は、由香里の興奮した態度と、勇ちゃんとはじめてよぶのに、なにかあるのではと、そんなおもいがした。
両手いっぱいの紙袋をもってきて、由香里はもどってきた。紙袋の中には、女の子の服がたくさんはいっていた。でも、その服はあきらかに由紀のもっている服ではなかった。
「お母さんその服、由紀のもっている服とはちがうけど」
「そうよ。でも、この服は由紀の服よ。由紀のために買った服だけど、由紀は気に入らなかったの。だってこんなに可愛いらしい服なのにね」
それはそうだろうと勇樹はおもった。由紀は、ボーイッシュな服がすきなんだから。
でも、どうしてこんなにたくさんの服があるのか、勇樹はわからなかった。
「ホント。由紀はこういった服はキライなんだから。でも、この服はムダにならないわ。これからは、勇ちゃんの服なのよ」
「この紙袋の中にある服が、全部ぼくの服なの」
「この服はみんな、勇ちゃんの服よ。どれでもいいから、勇ちゃんの好きな服をえらんでね」
勇樹が適当に手にとって選んだのは、フリフリのピンク色のワンピースだった。
「あら、勇ちゃんにはその服はピッタリだわ」
勇樹はしかたなく、その選んだ服を着てみた。
「これでいいのかな。お母さん、おかしくない」
由香里は、服を着替えた勇樹をみた。
そして、由香里はこういった。
「可愛いわ勇ちゃん」
「ホントに。ぼくって可愛いの」勇樹は、半信半疑にいった。
「ホントよ。でもせっかくの可愛い服も、そんなコトバづかいはおかしいわ。もっと女の子らしくしなきゃね」
「うん、わかったよお母さん」
「返事は、はいよ。これからは、勇ちゃんは家の中では女の子よ。名前も女の子らしい名前にしなきゃ、そうだ、優子という名前よ。これから家の中では女の子よ。わかったかしら、優子ちゃん」
そうして、勇樹は家では優子という名の女の子となった。
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