第1話:妹のかわり
それは中原勇樹の男の子として過ごすさいごの日曜日だった。
双子の妹、中原由紀のある頼み事だった。
「お兄ちゃん、わたしのかわりに女の子になって」
妹の頼み事ははっきりいってムリな頼みだ。
「由紀のかわりなんてできないよ。いくら双子だからといっても、ボクは男で由紀は女なんだから、すぐに正体がバレるよ」
「そんな心配ないよ、お兄ちゃん。わたし達双子だから顔は似ているから、ぜったいバレっこないって」
そういって、勇樹の手をとると、由紀の部屋にはいった。はじめてはいった由紀の部屋は、女の子の部屋にしては殺風景で、男の子みたいな部屋だった。
「はやく、この鏡のまえにたってお兄ちゃん」
由紀はそういって、勇樹を鏡のまえにたたせて、由紀の服にムリヤリ着替えさせられた。
「ほら見てお兄ちゃん。わたしとそっくりでしょう」
たしかに鏡のまえにうつっているのは妹の由紀だ。勇樹は、鏡にうつる姿をみて、ショックをうけた。
「ね。わたしとそっくりでしょう、お兄ちゃん。やっぱりお兄ちゃんは性格が女の子っぽいから、わたしよりもその服似合うわ」
「でも、どうしてボクが由紀の服を着なきゃいけないの」
「それは、女子サッカーの試合にでるからよ。ママは女の子がサッカーなんて危険なスポーツなんかしてはダメ。なんていってわたしにいうのよ。ジョウダンじゃないわ。だからお兄ちゃんが、わたしのかわりになってちょうだい」
そういって、由紀は部屋からでてサッカーの試合へでかけた。
「夕方ぐらいにもどるからおねがいね。お兄ちゃん」
由紀が試合にいくと、ひとりになった勇樹はあらためて鏡にうつった自分の姿をみた。鏡の中の勇樹はホントに女の子だった。
これが勇樹が女の子になるはじまりだった。
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