社説:大飯原発再稼働 理解に苦しむ政治判断
毎日新聞 2012年04月15日 02時31分(最終更新 04月15日 02時54分)
これで国民に納得してくれというのは到底無理な相談である。再稼働に必要な条件は整っていない。それなのに、なぜ政府は、これほど関西電力大飯原発の再稼働を急ぐのか、理解に苦しむ。
安全性については、再稼働の基準の決め方にも、中身にも、問題がある。本来なら、福島第1原発のような放射能汚染を二度と起こさないという決心のもとに、精査して作らねばならない。にもかかわらず、政府はたった3日間で基準を決め、その後1週間で大飯原発が適合すると判断した。あまりに拙速だ。
しかも、その中身は福島第1原発事故後の緊急対策とストレステスト(安全評価)の1次評価でよしとするものだ。事故の検証が終わっていない以上、これで十分かどうかはわからない。
時間がかかる対策には猶予を与えているが、その間に過酷事故が起きた場合にどう対処するのかも不透明だ。福島第1原発ではかろうじて免震事務棟で事故対応にあたってきた。それを思うと、大飯原発にこれがないのは大きな懸念材料だ。
安全性に懸念がある以上、再稼働にはそれを上回る必要性が示されなくてはならない。ところが、政府が根拠としているのは経済産業省の資源エネルギー庁が示している試算だ。原発推進を担ってきた組織の「言い値」をうのみにはできない。再稼働の必要性は少なくとも第三者の検証を待って判断すべきだ。