(4)特殊相対性理論

 マイケルソン・モーレーの実験で絶対空間に対する地球の速度が見いだせなかった結果に対して、 ローレンツは、地球の運動方向に物差しが縮むという仮説(ローレンツ短縮)を唱えました。つまり、 物差しが縮めば速度の差は見いだせない訳です。
 一方アインシュタインは、

"(3)電磁気学"で述べたようにコイルに磁石を近づけても磁石にコイルを近づけてもコイルに同じ電圧発生が現れる現象が マクスウェルの電磁論ではそれぞれ別々の理由で説明されるが、その本質はコイルと磁石の互いの相対速度にあるのではないか。

"(1)光と波動"で述べたように マイケルソン・モーレーの実験が示すように絶対空間に対する地球の運動によって生じるべき光の速度の差は見いだせない。

 これらはいずれも宇宙空間の絶対的な基準は見いだせない事を意味する。 つまり、宇宙に絶対空間(エーテル)というものはないのだ。そして "(2)ニュートン力学"の法則と同様、電磁気の法則や光学の法則など全ての物理法則は慣性系に対して常に同じ形で成立する。  と考えました。
 これがアインシュタインの特殊相対性原理です。 そして更に光については真空中の光の速さは光源の運動とは関係なく一定という光速不変の原理と呼ぶ仮説を設けたのです。

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(5)ローレンツ変換

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 ニュートン力学では2つの慣性系xyとx'y'の間にはガリレイ変換と呼ばれる

x'=x−Vt   t'=t  (t=t'=0の時、両者の原点は一致)

の関係があります。 この変換ではもちろんxy系で速度cの光は、x'y'ではc−Vまたはc+Vで観測され、光速不変の原理と一致しません。 そこで光速不変の原理が成り立つ新しい変換を、アインシュタインは次のようにして求めました。

 ガリレイ変換は線形変換であり、求める新たな変換も速さに依存する未知の係数kを用いて

x'=k(x−Vt)

で表されるものとする。 これは相対性原理より系が入れ替わった逆の立場てもx=k(x'+Vt)と同様に表わされる。 そしてどちらの系でも光速はであるとする光速不変の原理より x=t、x'=t'を用いることによって、これらの式から

k=1/root(1−(V/c)2)

となる。最終的に新しい変換式

(x−Vt)        (t−xV/c2)         
x'=------------    t'=-------------   
ここで β=V/c
root(1−β2)      root(1−β2)          

を得る。

 これは既にローレンツによって見い出されていた電磁理論の変換式そのもので、これはローレンツ変換呼ばれます。

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(6)時空世界

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 ローレンツ変換は空間座標と時間変数とが混じった変換です。そこで 空間座標と時間座標を一緒にした時空という座標が考え出されました。 通常時間には変数tが、空間には変数x、y、zがそれぞれ用いられますが、 これらをx0、x1、x2、x3のように添え字を付けた形式で統一し、 そしてさらにこの添え字形式は一括してxμのように表わします。

 さて、ニュートン力学では物体に作用する力Fと、その力によって影響を受ける物体の運動の変化は

→    →  
F = △p/△t

で表されます。(但しpは運動量と呼ばれる質量m×速度vで定義される)
 この関係を時空に適用した式

μ = △pμ/△τ

から(τは固有時間)、次の結果が得られます。
 →    →       
 p = mv/root(1−β2)
cp0 = mc2/root(1−β2)

 この式は、相対論における物体の運動量とエネルギーの式であり、特記すべきは v=0のとき、つまり静止状態では物体のエネルギーはmc2となることです。 すなわち質量mそのものはエネルギーmc2と等価であるということです。

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---相対論1---
作成日:1997年6月21日