論  文

                         ローレンツ変換                                    
                                                  2002.02.04 記
                                                  2010.07.07 一部改廃
                                                  2010.09.09 一部改廃

                 
ローレンツ変換は理論的に正しい
       Is the Lorentz transformation really correct theoretically?
                
Written  by  Masatoshi  Mihara

はじめに
相対性原理と光速度不変の原理から導出したローレンツ変換が本当に"正しい理論なのか否か"を見極めるため考察を行ってみる。

T. ローレンツ変換の導出過程
1) ガリレイ変換
二つの座標系K(x、y、z、t)、K´(x´、y´、z´、t´)が相対速度υで運動し、時間 t=t´=0のとき図1で示す原点O、O´が一致していたとすると、
                           x´=x−υt             ・・・・(1)
                           y´=y
                           z´=z
                           t´=t
この変換式をガリレイ変換という。

2) ローレンツ変換
相対論の立場からローレンツ変換の導出過程を述べてみる。

ローレンツ変換の導出手順
相対論の要求する変換は(1)式のようなものではないであろう。
図1で時間t=t´=0のとき原点O、O´が一致していたとする。その後K´はKに対して相対速度υで右側に運動するから、
K´系の原点O´即ち、x´=0に対してx=υt あるいはx−υt=0が対応しなければならない。
従って、x´とx関係式は
                          x´=a´(x−υt)            ・・・・(2)
のようにならなければならない。
同様にしてK系の原点O即ち、x=0に対してx´=−υt´ あるいはx´+υt´=0が対応しなければならない。
従ってその関係式は
                            x =a(x´+υt´)            ・・・・(3)
次に、(2)(3)式のa´、aを求めてみる。
今、長さLの棒をK系上に置いて、これをK´系からその長さを調べる。
K系上のLに対してx1=0、x2=Lとし、この二点をK´上でt´=0のときの長さ1´、x2´を求めると
(3)式から0=a1´、即ち1´=0、L=a2´
                                   ∴ 凾´=L/a
同様にして長さLの棒をK´系上に置いて、これをK系からt=0のときに長さを調べる。
このときはx1´=0、x2´=Lとして(2)式から0=a´1、即ち1=0、L=a´2
                                   ∴ 凾=L/a´
    ・・・・(3´
更に運動は相対的であるから 凾´=凾 でなければならない。
                                   ∴ a       ・・・・(4)
次にaの値を求めてみよう。図2で、t=t´=0座標原点(O、O´)から光を発したとする。
この光の先端AはK系では x =ct、K´系でx´=ct´まで達する(光速度不変の原理によりK系、K´系とも同一のcである)。
(2)(4)及び x´=ct´、x=ctから   ct´=a(cυ=at(c−υ)    ・・・・(5)        
(3)(4)及び x=ct、x´=ct´ から   ct=a(ct´υt´at´(c+υ)  ・・・・(6)        
        t、t´を消去して

                         a=1/√(1-υ
2/c2)          ・・・・(7)
(2)(4)(7)式から
                        x´=(x−υt)/√(1-υ
2/c2     ・・・・(8)
(2)(3)(4)式からx´を消去してaを代入すると
                        t´=(t-υx/2)/√(1-υ2/c2  ・・・・(9)

 
(8)(9)式をローレンツ変換という。

              
(図 1、2 はローレンツ変換の理論1)により再現した。図2で光源の位置は明らかでないがK系の原点Oにあるとした)
 
1)出典;『物理学』 吉田卯三郎 竹脇又一郎修訂 三省堂

                                  【ローレンツ変換の導出手順説明終わり


U. ローレンツ変換の導出手順に見られる問題点
 ローレンツ変換の導出手順を考察してみる。
ローレンツ変換の導出手順を見ると、ニュートン力学が成り立つベクトル座標で記述されている事が分かる。このローレンツ変換で問題になるのは、図1、2に光速度不変の原理を使用したことである。

問題点@

図2に示すように、光の先端A点はX軸座標上の(x)、(x´)で一致していることは明らかである。ローレンツ変換では光速度不変の原理を用いてK系、K´系とも同一光速度cを使用したが、K系では光源に対して運動していないから光速度のベクトルはc、一方K´系では光源に対して速度υで運動しているから光速度のベクトルは相対光速度c-υである。
ローレンツ変換では光速度不変の原理からK´系にベクトルではない
見かけの光速度c”を用いて可笑しげな結論を導いたが、ここではベクトルの相対光速度c-υを用いてみる
           K 系では          x =ct                
           K´系では          x´=c-υ)t´             

(2)(4)式から
             (c-υ)t´=a(ct−υt)            ∴  t´=at    
3)(4)式から                 ct =a(ct´-υt´+υt´)         t =at´ 
                         ∴a=1                   
(2)(4)式から                  x´=x−υt  
(2)(3)(4)式から                t´=t
これはガリレイ変換そのものにほかならない。
い。

問題点A

(2)式導入の際(同(3)式)、K´系の原点O´即ち、x´=0に対して、K系の x−υt=0 が対応しなければならない(図1参照)として、(2)式
                  x´=a´(x−υt)      ・・・・(2) (再掲)
を導出したが、x´=0、x−υt=0 から、 (2)式を正確に記すと、
                 0=x´=a´(x−υt)     ・・・・(10)
である。 
 ∴ x´=0、 x=υt であり、単に原点O、O´間の距離がx=υtであること、あるいは
x/t=υとして、K´系の原点O´(x´=0)が速度υK系を運動しているとも解釈出来る関係である。
従って、(2)(3)式から、
 x´=0、 x =υt  及び、             
 x =0、x´=-υt´

の関係である。

一方、(2)式を0の対応ではなく、
                  0≠x´=a´(x−υt)     ・・・・(11)
即ち、x´に対するx−υtの対応と看做すと状況が一変する。

この際、 (2)式の意味はK、K´系間の座標系の問題ではなく、座標系ごとの、光(光子)の先端A点の位置関係の対応を示すもであり(図2参照)、
ガリレイ変換の変形体そのものとなる。
∴ (2)(3)式のx、x´は、
x =ct 、 x´=ct´の関係であって、 x =υt 、x´=-υt´の関係にない。
従って、(10)(11)式のx、x´に x =υt 、 x´=-υt´ を代入することは出来ない。

V. 結 論
@ ローレンツ変換はニュートン力学の基本法則である座標ベクトルで記しているが、唯一光速度不変の原理からK′系の光速度にベクトルではない”見かけの光速度c”を使用し、間違った結論を導いている。
A 
K′系の光速度は”見かけの光速度c”ではなくベクトルの相対光速度c-υを用いるのが正当派物理学の理論であり、その変換はガリレイ変換そのものである。   
                                            
補足(1);
   x=(x−υt)/√(1-υ2/c2)       ・・・・(12)(再掲)
   t=(t-υx/c2)/√(1-υ2/c2)    ・・・・(13)(再掲)
   で、x=υtとして(13)に代入し、整理すると
        t(1-(υ/c)2)        ・・・・(a)
相対論では(a)式から運動系の時間t´が、静止系の時間tに対して遅れると解釈している。
しかし、前記問題点Aから明らかなように、(13)式のxにはx=υtの関係がないから、(13)式のxにυtとして代入出来ない。(13)式のxはA点のx=ctの関係である。
従って、(a)式は成立せず運動系の時間が遅れるという理論は間違いである。

補足(2);ローレンツ変換を不変とするミンコフスキー時空は
               x=ct 、x′=ct′から        ・・・(b)
             (ct′)2−x′2(ct)2−x2      ・・・(d)
             (ct′)2−x′2(ct)2(1−(x/ct)2  ・・・(e)
 
(e)式の計量値をcτ(=ct′)とすると、その値は、
′=0、x/t=Vとして求めている。
∴cτ=ct=ct√(1-(V/c)2
               ∴τ=t√(1-(V/c)2         
 ・・・(f)
しかし、前記問題点Aから明らかなように、′=0は(12)式のx=ctをx=Vt(v≡υとするから間違いである。
x/t=Vは式(b)より、x/t=cのことであり、これも間違いである。

∴τ=t√(1-(V/c)2は存在しない。

                                       

                                    以上