赤方偏移について
H15.12.21日 記
H17.05.05日 一部改廃
H19.03.03日 近似式追加
H19.11.03日 図2修正
H21.05.05日 図2修正
Written by Masatoshi Mihara
遥か彼方にある銀河のスペクトル線を調べると、実験室で調べた波長よりも長い波長、即ち赤い方向にずれた波長が観測される。天文学ではこの現象をスペクトル線の赤方偏移Zとして(a)式で定義している。更に、赤方偏移が光のドップラー効果によるものとみなし(1)式を設定した。この(1)式が20世紀に流行った相対論と矛盾するため、後に(2)式が設けられたが、その理由は後述する。便宜上、ここでは(2)式を”相対論的赤方偏移Z´”と呼ぶことにするが、Z´が赤方変移Zの関数になっていることに注意する。
Z=(λ′−λ)/λ=刄ノ/λ
・・・・ (a)
Z=(λ′−λ)/λ=υ/c
・・・・ (1) 1)
Z′= (2Z+Z2)/(2+2Z+Z2)=υ/c ・・・・ (2)2)
λ : 実験室内で測定した輝線スペクトルの波長
λ′ : 恒星からの同上輝線スペクトルの波長
υ : 恒星の後退速度(視線速度)
c : 光速度
次に、光の速度 で記述した(5)式についても赤方偏移Z″として求めてみる。。
(5)式は λ′=cλ/(c−υ) からこれを変形して
Z″=(λ′−λ)/λ′=υ/c
・・・・ (b)
(a)(b)式からλ、λ′を消去してZ″をZの関数として求めると
Z″=Z/(Z+1)=υ/c
・・・・ (3)
(1)式2項目と(b)式2項目は分母の値が異なる。
図1に、これら(1)(2)(3)式の赤方偏移Z=1.1までの後退速度υを示す。
図 1
(1)式は赤方偏移が1を超えると、後退速度υが光速度Cを超えて相対論と矛盾する。このため、後退速度υが光速度cを超えないように、相対論的な細工がされた(2)式が設けられているのである。又(1)式は赤方偏移Zが0.1以下で使用することとしているが、図1からその理由が分かる。
次に、図2に、赤方偏移Z=8までの後退速度υを示す。
図 2
この結果、(1)式は恒星の後退速度υが直線的に光速度cを超えて行き、相対論と矛盾するため訳の判らぬ(2)式を考え出していることがより鮮明となる。(2)式は(3)式に近似し、共に恒星の後退速度が光速度cを超えないものとなっている。赤方偏移が光のドップラー効果によるものと考えるならば、(1)(2)式を使わず、(3)式で十分なのである。
現在赤方変移Zが5を超える銀河も観測されているが、これでは後退速度が光速近くになり思考上の無理がある。以下に赤方偏移が光のドップラー効果だけでなく、光(光子)のエネルギー減衰によっても起こり得ることを述べる。
熱湯が冷めて水になり、電波は遠のくにつれ減衰するように、光もまた宇宙空間を渡航中にエネルギーを失い、減衰すると考えても不思議なことではない。むしろ、巨大な銀河が光速近くで後退するなどと考える方が余程可笑しな話である。
プランク定数 h、波長λ、振動数 ν、光速度 c=λν
光子のエネルギーは、光量子論3)から E=mc2=hν=hc/λ ・・・・(4)
恒星からの光速度cは変わらないとし、光子の質量mが減少(拡散)して光のエネルギーが減衰したとすると、(4)式から振動数(ν)が減少(ν′)、波長λが長く(
λ′)なる。
∴ ν>ν′
λ<λ′
即ち、光子のエネルギーが減衰し振動数が減少すると、波長が長くなり光のスペクトルが赤方にずれることが理解出来る。
赤方偏移という現象は、近距離ではドップラー効果、遠距離ではドップラー効果の影響は少なく、光(光子)のエネルギー減衰効果が主因である。従って、遠距離の赤方偏移とは光(光子)のエネルギー減衰量を測定しているようなものである。
注1); 周知のように(1)式は近似式。
(5)式 λ′=cλ/(c−υ)を変形して λ′−λ=υλ′/c およびλ=(c−υ)λ′/c
∴ (λ′−λ)/λ=(υλ′/c )/((c−υ)λ′/c)
=υ/(c−υ)
υ≪cのとき (λ′−λ)/λ=υ/c
注2);(2)式の導入方法
付図1で、速度υの光源のに対する観測者の視線速度はυcosθ
非相対論のZを用いて、 相対論的な赤方偏移は一般に
1+Z≡λ/λ′=ν′/ν={1+(υ/c)cosθ}/√{1-(υ/c)2}
から、 θ=0、cosθ=1のとき、
υ/c= (2Z+Z2)/(2+2Z+Z2)=Z′ ・・・・(2) (再掲)
(1)(3)式のZ、Z″と区別するため、相対論的赤方偏移をZ′とした
付図1
注3);光量子論
以 上