きっかけは、少し前に紹介した
日本全国の農地・庭を汚染させるモノ(漫画で考える放射能汚染問題)
http://p.booklog.jp/book/47306
という漫画。
この漫画自体は
「販売店で線量計による肥料の全数検査をやらないと、数万ベクレルと高汚染の肥料が基準値設定後も検査をすり抜けて日本全国に流通し続けてしまう。日本各地の農地の汚染がどんどん進んでしまう。」
という事に警鐘を鳴らす趣旨の内容だったが、漫画の中で気になったのが「飲食店などでも薪や炭を燃やした後の灰を線量計で検査すれば、ある程度汚染が判別できる」という部分。
簡易検査や詳細検査で何ベクレルか計測しなくても、数万円の安い線量計を近づければ、汚染がひどいかどうかは大雑把だがわかると言ってる。
確かに薪や炭などを燃やした後の灰は放射性物質が何十倍にも濃縮されるので、もし薪などが基準値を越えて数百ベクレル/kgとかの場合、灰も数千、数万ベクレル/kgになるだろう。灰の量にもよるが、そういう高汚染の物に線量計を近づけると、余裕で空間線量より高い値を示すだろう事は想像できる。
逆にそれなりの量の灰に線量計を近づけてもほとんど空間線量と変わらない場合は、逆算して薪や炭はほとんど汚染されていない、安心だという事にもなるだろう。
あと、漫画の中でも書かれているが、「汚染された薪や炭を使い続けると、店内の壁や家具に放射性物質がどんどんこびりついていく」という部分も少し気になった。
知り合いに家族経営で小さな店舗で炭火焼肉屋をやってるおばちゃんがいるので、最初は冗談まじりに話を持ちかけ、休業日に店舗内や灰などを手持ちの線量計で検査してみた。
検査に使用したのはRADEX1503。
機器によっては、今回計測した値とは多少数値が変わってくると思う。空間線量より高くなるかどうか、の部分に注目してもらいたい。
数値だけでは捏造と取られかねないので、了承を得て画像も一緒に掲載する。
ただ、「店を特定されると売り上げが落ちて死活問題になる。」という事で、店内の家具や壁などから店を特定できないよう、かなり画像をトリミングしてある点はどうかご理解いただきたい。
一部だけ映ってても、常連さんだと気づく場合があるだろうから、その点には気を使っている。
店は具体的な場所を書けないが、近畿地方にある。
店入り口前の空間線量。
線量計本体が汚れないよう、ビニールをかぶせてあるので見にくいだろうが、値は0.12マイクロシーベルト/h。
何回か計測しなおしてみたが、空間線量は多少上下するが、だいたいこの店の前ではRADEX1503では0.08〜0.14くらいの数値が出る。
自分の家の空間線量とだいたい同じ感じ。
次に、店内に入って店の奥の方のテーブル付近に移動して計測してみた。
位置を変えながら壁に線量計を近づけて計測していくと・・・・
0.19マイクロシーベルト/h。
・・・・明らかに通常の空間線量より高い部分が。
床からの高さは1m50cmくらいの場所を計測したが、この部分は位置的に煙が結構飛んできそうな場所だ。
同じ場所で床下30cmくらいに高さを変えて計測したら、0.11マイクロシーベルトだった。
場所をさらに変えて壁やイスなどを計測していく。
通常の空間線量とほとんど変わらない値(0.09とか0.12とか)が出る場所もあれば、0.17が出たりと、場所場所によって数値は結構変わってくる。
一番高かったのは0.28マイクロシーベルト/h。隅の方の壁部分。元々煙が飛んできやすいのか若干壁がくすんでいる。
おばちゃんによるとここは店舗の構造と空気の流れ的に煙が滞留しやすいらしい。
炭については材料の産地を気にしてなかったとの事だが、これから業者に確認すると。おそらく関東や東北のが原料か?
今回の結果を見ると、汚染された炭を使うと当たり前だが煙が飛散し、店内の家具や壁が汚染されるようだ。
一年ほどで壁の一部がこの数値になるって事は、炭の汚染度にもよるが、汚染された物を10年も使い続けると、店内の壁やイスの一部は0.5マイクロシーベルト/hを越えるんじゃないか?
まぁそれでも客は短時間しか店にいないだろうから、壁やイスからの放射線による被曝量は知れたもんだろう。壁から離れるにつれ線量はどんどん下がっていくし。
煙を吸い込んでの内部被曝はちょっと気になる。肺に吸い込む事になるだろう。これも量によるか?
この店はテーブルに排煙機構が組み込まれた洒落たタイプではなく、煙を普通に店内に飛ばして外に出すタイプ。
テーブルごとに排煙機構がついていて店内に煙を漂わせないタイプの焼肉店では、今回みたいに壁やイス、テーブルなどはあまり汚染されないのではないだろうか。でもその場合は排煙機構内部に放射性物質がこびりついて蓄積していきそう。
ちょっと気になったので、店の裏手に回って、排気口付近も計測してみた。
店内の空気をこっからガーッと出してるところだ。
0.39マイクロシーベルト/h。高いな。
店内のいい匂い(つまり煙)がこの排気口からじゃんじゃか外に垂れ流されるのだが、煙となって飛散した放射性物質をここを経由してどんどん外に垂れ流してるみたい・・・。高めの値が出ているのも納得か。
通りでなく裏手だからあまり人は通らないと思うが・・・・。周辺店舗への汚染が気になる。向かいの店とか汚染したら後でばれたら賠償もんになるのでは・・・。
(念のため向かいの店の壁に近づけてはかったが、距離があるおかげか今は通常の空間線量と変わらなかった。)
最後に炭を燃やした後の灰を固めてあるところに行って、計測してみた。
店で発生した灰はまとめて業者に引き取ってもらってるらしい。こういうのは最終処分場で埋め立ててるのか?それとも灰は再利用してセメントなどになってる?
0.79マイクロシーベルト/h。
店内の汚染から想定してた通りというか、そこそこ高めの値が出るな。
灰の具体的な重量は計測できなかったが、容器を見ると量的にはそこそこある。
灰の表面にぎりぎり近づけて計測してこの値。計測しなおすと多少数値はぶれたが、高い値を示した。
(念のため、この後ビニールは交換した。)
これ一体何ベクレルなのか気になったので灰を検査に出すようおばちゃんに相談してみたが、「色々騒動になると店の売り上げに影響が出てしまう・・・」との事で、今回の件については公表せず処理するという事に・・・。こう言われると強制できない・・・。
今後使用する炭については業者にきっちり確認し、以後は汚染されてないであろう西の原料を使ったものに切り替えるとの事。
家具とか壁は拭き掃除して汚染を落とすとの事だが、落ちるのかこれ・・・?
自分としてはこのまま完全に無かった事にするのはどうかと思った。おばちゃんの店の問題だけでなく、他の飲食店でも店内や店周辺の汚染が進行してる怖れがあるし。
いろいろ話あったが、「店が特定されないなら」という条件つきで、今回ブログで計測データを公表する事に。
他の飲食店などにも是非危機意識を持ってもらいたい。
自分がやらなくても、多分他の人やマスコミが同じように炭や薪を使う飲食店の内部や灰を検査して「汚染薪や炭による店内の汚染」を公表してたと思うが。
沖縄で、汚染された関東の薪が流通してて大きく報道された事があるが、近畿地方の焼肉店でも普通に汚染された炭が流通してるんだな・・・。もう一部地域の物は流通をストップした方がいいのでは?
今回の件で感じたのは
・国はもっと薪や炭の検査を厳格化すべき。飲食業界などからもそう要請するべきだろう。(でないと知らずに店内や店の周辺の汚染が進む)
・数万円のガイガーカウンターでいいので、飲食店は定期的にまとまった灰を線量計を近づけて検査すれば、薪や炭が基準値を大幅に越えて汚染されてるかどうかのある程度の判断はできるんじゃないだろうか?(線量計では何ベクレルとかはわからないだろうが、今回みたいに明らかに空間線量より大幅に高い値が出る場合は、薪や炭は相当汚染されてると思われる。)
という事。
飲食店では今後薪や炭を調理に使う場合は、灰の定期的な線量検査を法律などで義務づけるべきでは?
線量計による検査は機器の導入コストも数万円ですむし、計測もあっという間にできるので手間はかからないだろう。
飲食店だけでなく個人宅でも、暖炉や薪ストーブなどで薪などを使用した場合は、一定量の灰に線量計を近づけて汚染検査するという事を定期的にさせた方が良さそうだ。数百万円の簡易検査機とかで何ベクレルか検査しなくても、こういう安物ガイガーカウンターで空間線量より大幅に高くなるかどうかの検査は簡単にできるだろう。
汚染された薪をずっと使い続けると、煙路部分に放射性物質の一部がこびりついてどんどん汚染が進むし、周辺住宅に放射性物質をばらまき続けて汚染を進ませ、後々トラブルや賠償沙汰になりかねない。
個人宅で発生した灰は庭や畑にまくやつもいるだろうし。
汚染されてない薪などのみ流通するようにしないと、バーベキューや燻製とかで発生した灰をそこらに捨てて自然を汚染する馬鹿も出てくるだろうなぁ・・・。
ところで話が変わるが、炭といえば「活性炭」とかはどうなるんだ?
浄水器の交換カートリッジって活性炭を使ってる物が多いが、その活性炭が放射性物質で汚染されていると、水を濾過するどころか、少しずつ放射性物質が水に溶け出すという事になってしまわないか?
活性炭自体は「汚れを吸着する」みたいなイメージがあるが、実際は活性炭が吸着できる物質は限られており、こと放射性物質については吸着効果はほとんど無いという事が事故後の検査などでわかっている。
もし原料の汚染がひどいと濃縮される活性炭には放射性物質がかなりの量含まれている事になるが、その場合水を通す事によって水溶性の放射性物質が少しずつ溶け出すという事になると思われる。
交換カートリッジに含まれる活性炭の量は知れてるだろうが、kgあたり数万ベクレルとか汚染されている場合は長い目で見たら調理や飲料用の水の濾過に使うのはどうなんだろう?
メーカーは活性炭の汚染対策とかしっかりやってるのだろうか?(原料の産地を限定するとか)