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北朝鮮のミサイル実験失敗は何を引き起こすのか? (3/3)

[堀内彰宏,Business Media 誠]
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次に何の業績を示そうとするかが問題

――国連の決議には効果があるのですか?

重村 長い時間で見ると、非常に効果的なんです。安保理での国連決議というのは北朝鮮のメンツを非常に傷つけるので、北朝鮮は非常に嫌いなんです。ですから、長い目で見ると、決議がじわじわと効いてくるのは間違いありません

 しかし、短期的には国連の決議を全部の国が守るわけではありません。中国やブラックマーケットもあるので、短期的にはなかなか成果をあげない状況が見えるかと思います。ただ、10〜20年の単位で見ると、北朝鮮が相当こたえているのは間違いないです。

――軍事関係者は今回の実験が成功すると思っていましたか。

重村 情報機関の人たちの多くは「簡単に上がるだろう」と思っていたでしょう。ロケットの技術が本来難しいものではなく、発射台から飛び出せばだいたいそのまま飛んでいく、1段目の切り離しが難しいのですが、それも大した技術ではないので、技術的には飛ぶだろうと思っていたでしょう。

 ただ、人工衛星が打ちあがるかどうかについては、疑問は持たれていました。つまり、前回の実験では出せなかった推力が今回は出せるのか、という懸念は多く持たれていました。

――実験前に平壌に多くのジャーナリストを呼んだのはなぜですか。

重村 モノの考え方についてですが、私たちの考え方と北朝鮮の考え方はまったく違うんですね。北朝鮮では指導者に良い話を持っていかないと出世できません。悪い話を持っていくと、クビを切られてしまいます。ですから4月13日の最高人民会議の開催、4月15日の金日成生誕100周年に際して、「人工衛星を打ち上げましょう。絶対成功します。間違いないです」と言っていたはずなんです。もしそこで「じゃあ失敗したらどうしますか。まだちょっと問題がありますよ」と言ったら、「お前は米国帝国主義のスパイか」と言われる。

 ですから、平壌の幹部も「人工衛星の発射は成功する」とみんな思って対応していました。そして、もっとごますりが来て、「それではそれをもっと宣伝しよう。世界中に宣伝しないといけません。外国の記者も入れて、特にテレビだけ入れて映像だけ流させましょう」と言って、一生懸命ごますりした人たちがいるわけですね。そういうゴマすりの世界が失敗して、こういうことになりました。外の世界の私たちの考え方と、彼らの考え方は大分違います。

 「北朝鮮は計算して、日本や米国、欧州のメディアを利用したんだ」と言う人はいますが、それは北朝鮮の事情をよく知らない人なんです。日本メディアの平壌入りの競争が始まって、北朝鮮に厳しいことを言わなくなったということがありますが、それは結果的なことであって、北朝鮮が最初から意図していたことではありません。

 実は金正日さんの時に、外国の記者は取材では入れなかったんです。金正日さんが米国と日本の記者が嫌いで、「絶対に入れるな」と言っていたからです。入る時は、観光や打ち合わせという理由で入りました。

 そして金正日さんが死んだので、大勢入れました。本来なら金正日さんの言葉は変えないものですが、少し変えたという点がなきにしもあらずという気がします。

――金正恩氏に対する評価はどうなりますか。

重村 多分、平壌では今日から「いやあ新しい指導者に期待してみたけど、何もできねえな」という噂が流れると思います。

 そこで、金正恩氏や指導部はそれを挽回するための手を打たないといけません。食料を配るとか、住宅をたくさん与えるとか、何らかの業績を示さざるを得なくなります。次に何をするかが非常に大きな問題だと思います。

 今、北朝鮮政府が一番やらないといけないのは失望感をいかに止めるかで、失望をいかに信頼に変えるかという非常に難しい問題に直面しています。そうなると、指導者は誰も批判できないので、その下にいる人たちを批判する、つまり下にいる人たちの足の引っ張り合いが始まるわけです。

 政権のスタート時につまづいたというのは、非常に不幸なことです。儒教の国家では何か天災が起きたり、悪いことが起こると、「指導者が悪いんだ」と考える傾向があります。そういう風に考えられると新しい指導者としては非常に困ったことになります。

――核問題の解決にはどのくらいの年月がかかりますか。

重村 北朝鮮の国際社会との接触や6カ国協議について考える時、核問題の解決には相当長い時間がかかるということを忘れてはいけません。

 なぜなら核兵器の開発には、研究と施設を作ることがあり、実験をすることがあり、実験をして成功すると今度は配備することになるのですが、配備のためにミサイルが必要で、ミサイル開発をしないといけない。ミサイル開発が成功すれば、今度は輸出ということになる。この数段階があるのですが、そのすべての段階を一緒に解決しないと、核兵器の解決にはなりません。

 しかし、北朝鮮はこれを絶対に一緒に取引しません。施設を廃止するとか、ミサイルの実験をしないとか、輸出はしないとか、一つ一つ切り離して売っているわけです。北朝鮮が部分売りしている間は解決しないのですが、その解決しないのを解決したように見せたウソつきがクリストファー・ヒルでしたね。

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